内定が出て入社したものの、「試用期間中だから」と言われると、どこまでが普通でどこからがおかしいのか分からなくなります。急に本採用を断られることがあるのか、給与や保険はどう扱われるのか。
この記事で分かることは3つです。試用期間の法的な位置づけ(労働契約はすでに成立しています)、解雇に必要な条件と14日・30日という区切り、給与・社会保険・有給休暇の扱いと、本採用されなかったときの動き方。転職の進め方全体は転職プロセス完全ガイドにまとめています。
この記事の結論
- 試用期間は「採用を保留している期間」ではなく、すでに労働契約が成立していて、会社が解約権を留保している期間です。
- 労働基準法に試用期間の長さの定めはなく、3か月とする例が多いとされています。
- 適性を判断するのに必要な合理的な期間を超えた長期の試用期間は、公序良俗に反してその限りで無効と解されています。
- 試用期間中の人を14日を超えて引き続き使用した後に解雇する場合は、30日前の予告か平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です(労働基準法第20条・第21条)。
- 本採用の拒否も解雇にあたるため、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が問われます。
試用期間とは|労働契約はすでに成立している
結論から言うと、試用期間は「採用を保留している期間」ではなく、すでに労働契約が成立していて、会社が解約権を留保している期間です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、通常の試用期間中の契約関係を解約権留保付労働契約と整理しています。留保されているのは解約の権利であって、契約そのものが未成立なわけではありません。
試用期間の長さに法律上の上限はない
労働基準法に試用期間の長さの定めはなく、3か月とする例が多いとされています。ただし、試用期間中の労働者は不安定な地位に置かれるため、適性を判断するのに必要な合理的な期間を超えた長期の試用期間は、公序良俗に反してその限りで無効と解されています。「1年間は試用期間」といった条件を提示された場合は、その長さに理由があるのかを入社前に確認しておきます。
試用期間は労働条件の明示事項に含まれる
労働条件の明示は労働基準法第15条で義務づけられており、契約期間・就業場所・業務内容・労働時間・賃金・退職に関する事項などは書面での明示が必要です。試みの使用期間に関する事項も示す必要があるとされています。入社前に受け取る労働条件通知書に試用期間の記載が無い、あるいは口頭でしか説明されていない場合は、その時点で書面を求めてかまいません。
| 確認しておく項目 | 見るところ |
|---|---|
| 試用期間の有無と長さ | 労働条件通知書・雇用契約書・就業規則 |
| 延長の有無と条件 | 就業規則(延長の規定が無ければ一方的な延長はできない) |
| 試用期間中の賃金 | 本採用後と違う場合は、その額と期間が明示されているか |
| 本採用の判断基準 | 何をもって本採用とするか(評価面談の有無) |
| 社会保険の加入日 | 入社日か、試用期間の満了後か(後者なら要確認) |
「試用期間だけ有期契約」という形もある
試用期間の代わりに、最初の数か月だけ有期の労働契約を結ぶ会社もあります。この場合、契約期間が満了すれば契約は終了するため、試用期間とは終わり方が違います。ただし、有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合は、その期間中の労働条件も明示しなければならないとされています。「最初の3か月は契約社員、その後に正社員登用」と説明された場合は、登用の基準と時期、登用されなかった場合の扱いを、口頭ではなく書面で確認してください。
試用期間中でも解雇できるのか|条件がある
試用期間だから自由に解雇できる、ということはありません。手続きの面と、理由の面の両方に条件があります。
14日を超えると解雇予告が必要になる
労働基準法第20条は、労働者を解雇する場合に30日前の予告か、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払いを求めています。第21条はその例外を定めており、試用期間中の人はこの予告の規定の適用除外です。ただしこの例外には但書があり、試用期間中の人が14日を超えて引き続き使用された場合は、解雇予告または解雇予告手当が必要になります。
つまり、入社から14日以内と15日目以降で、手続きの重さが変わります。14日以内であっても、予告の規定が適用されないだけで、後述のとおり解雇の理由そのものは問われます。
| 入社からの日数 | 解雇の手続き |
|---|---|
| 14日以内 | 解雇予告の規定は適用されない(予告なしの解雇が手続き上は可能) |
| 15日目以降 | 30日前の予告、または平均賃金の30日分以上の解雇予告手当が必要 |
| 本採用後 | 同上(通常の解雇と同じ) |
本採用の拒否も「解雇」にあたる
試用期間の満了時に本採用を断ることは、留保していた解約権の行使であり、解雇にあたります。そのため、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、権利の濫用として無効になり得ます。「なんとなく合わない」「雰囲気が違う」といった理由だけで成立するものではありません。
一方で、採用時には分からなかった事実が後から判明し、引き続き雇用するのが適当でないと判断できる場合には、本採用の拒否が認められることがあります。評価の根拠が具体的に示されているかどうかが、納得できるかどうかの分かれ目になります。
試用期間を延長すると言われたら
試用期間の延長は、就業規則に延長の規定があることが前提です。規定が無いまま一方的に延ばすことはできません。延長を告げられた場合は、延長の理由、延長後の期間、何ができれば本採用になるのかの3点を確認します。
延長が繰り返される場合は、適性を判断するのに必要な合理的な期間を超えていないかという問題になります。前述のとおり、合理的な期間を超えた長期の試用期間は、その限りで無効と解されています。延長の通知は口頭で済まされることが多いので、通知された日付と内容をその日のうちに記録しておいてください。
退職勧奨と解雇は別のもの
試用期間中によくあるのが、「合わないようだから、そろそろ考えてみては」という形の打診です。これは解雇ではなく退職勧奨で、応じるかどうかは本人が決められます。応じて自分から辞めれば、解雇ではなく自己都合の退職として扱われます。解雇予告手当の対象にもならず、雇用保険の離職理由も変わります。
その場で返事をする必要はありません。解雇なのか、退職を勧められているだけなのかを確認し、解雇であれば理由と予告の扱いを、勧奨であれば回答の期限を聞いてから持ち帰ります。会社の同意が無いと辞められないわけではないのと同じで、会社に勧められたからといって辞めなければならないわけでもありません。
試用期間中の給与・社会保険・有給休暇
「試用期間中だから」を理由に、法律上の扱いまで変わるわけではありません。よく誤解される3点を整理します。
給与
試用期間中の賃金を本採用後より低く設定すること自体は可能ですが、その額と期間が労働条件として明示されている必要があります。最低賃金を下回ることはできません。残業代の支払い義務も、試用期間の有無とは関係なく発生します。
社会保険
厚生年金保険・健康保険の被保険者になるかどうかは、適用事業所に「常用的に使用される」かどうかで判断されます。日本年金機構は、この使用関係を「適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受ける関係」と説明しています。試用期間であっても、報酬を受けて働いている以上は加入の対象です。「試用期間が終わってから加入」と言われた場合は、その根拠を確認してください。
年次有給休暇
年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10日付与されます。継続勤務の期間は在籍期間で数えるため、試用期間も含まれます。また、付与日数が10日以上の労働者には、年5日について使用者が時季を指定して取得させる義務があります。
試用期間でも変わらないこと
- 労働契約は成立している(解約権が留保されているだけ)
- 最低賃金・残業代の支払い義務
- 労災保険の適用(業務中・通勤中のけが)
- 社会保険の加入要件(常用的に使用されていれば対象)
- 有給休暇の起算日(雇入れの日から6か月)
試用期間の最初の30日でやること
制度の話とは別に、試用期間を「評価される期間」ではなく「相互に確かめる期間」として使うと、入社後の動きが変わります。会社が適性を見るのと同じように、こちらも条件と実態が合っているかを確かめる期間です。
記録を残す
聞いていた条件と違う点が出てきたときに、後から効くのは記録です。特別な方法は要りません。スマートフォンのメモに、その日のうちに事実だけを書いておけば足ります。
- 始業・終業の時刻と休憩時間(タイムカードが無い職場ほど重要)
- 残業の時間と、その日に何をしていたか
- 任された業務と、聞いていた業務との違い
- 面談・指導で言われたことと、言われた日付・相手
- 試用期間や本採用について会社から説明されたこと
労働条件通知書は、入社後も原本を保管しておきます。条件のずれを相談するとき、最初に見るのがこの書面です。
聞いていた条件と実態がずれている場合の確かめ方と、辞めるかどうかの判断は転職の入社後ギャップにまとめています。
評価の基準を先に聞く
「何ができれば本採用か」を、最初の面談で聞いておきます。基準が言語化されない職場では、試用期間の満了時に評価の根拠も示されにくくなります。聞いておくこと自体が、そのまま職場の見極めにもなります。
入社後の立ち上がりをAIで整理する
最初の1か月で何を優先するかは、生成AIに条件を渡して整理させると早くまとまります。ChatGPTやClaude、Geminiなどに、次のプロンプトを貼り付けて使います。会社名・個人名など、特定につながる情報は入力しないでください。
あなたは中途入社者の立ち上がりを支援するメンターです。
以下の条件で、入社30日間の行動計画を週ごとの表にしてください。
# 条件
- 職種と担当業務: (例:設備管理・ビル1棟の日常点検と月次報告)
- 前職での経験: (年数と担当範囲)
- 今の職場で分かっていないこと: (3つまで箇条書き)
- 試用期間の長さと評価面談の有無: (例:3か月・1か月ごとに面談あり)
# 出力
- 第1週〜第4週の「確認すること・できるようにすること・聞く相手」の表
- 初回の面談で聞くべき質問を5つ(本採用の基準が分かる聞き方にする)
- 聞いていた条件と実態がずれていた場合に、記録しておくべき項目のリスト
- 各週の終わりに自分で確認するチェック項目を3つずつ
出てくるのは一般的な計画なので、実際の担当業務に合わせて書き換えてください。AIは職場の事情を知りません。
本採用されなかったときにできること
本採用を断られた場合、あるいは試用期間中に解雇を告げられた場合にできることは、理由の確認・相談・生活の確保の3つです。
告げられた直後にやること
- 解雇か、退職勧奨(辞めるよう勧められている状態)かを確認する — 自分から辞めると解雇ではなくなる
- 理由を書面で求める — 退職時の証明書は請求できる
- 解雇予告手当の有無を確認する — 15日目以降の解雇で予告が無い場合は対象になり得る
- 離職票の交付を依頼する — 失業給付の手続きに必要
理由を書面で確認する方法は、労働基準法第22条に定められています。解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、解雇の理由について証明書(解雇理由証明書)を請求すると、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。退職後も、使用期間・業務の種類・その事業場における地位・賃金・退職の理由について、証明書の交付を請求できます(請求できる期間は退職時から2年です)。口頭で告げられた理由と、書面に書かれた理由が食い違う場合、その食い違い自体が相談のときの材料になります。
納得できない場合は、各都道府県の労働局と労働基準監督署に置かれている総合労働相談コーナーに相談できます。解雇・労働条件・いじめや嫌がらせなど、あらゆる分野の労働問題を、専門の相談員が電話か面談で受け付けており、相談は無料です。全国に378か所あり、平日の9時から17時が基本の受付時間です。
雇用保険の基本手当を受けられるかどうかは、被保険者期間などの要件で決まります。在職期間が短い場合は要件を満たさないことがあるため、離職票が届いたら早めにハローワークで確認してください。退職後のお金と手続きの期限は転職は辞めてから探すべきかにまとめています。
自分から辞めると決めた場合
期間の定めのない労働契約であれば、いつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間で契約は終了します(民法第627条第1項)。会社の同意が無ければ辞められない、というものではありません。ただし、就業規則で退職の申出の期限や手続きが定められていることが多いため、トラブルを避けるには就業規則を確認したうえで手順を踏みます。退職を伝えるときの言い方は退職理由の伝え方と例文にまとめています。
早期に辞めることになった場合の職務経歴書の書き方は職務経歴書をAIで作る手順、在籍期間が短い経歴の伝え方は転職回数が多いと不利かで整理しています。
まとめ
試用期間は、労働契約が成立したうえで会社が解約権を留保している期間です。長さに法律上の上限はありませんが、合理的な期間を超える長期は無効と解されています。解雇の手続きには14日という区切りがあり、14日を超えて働いた後は30日前の予告か平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です。本採用の拒否も解雇にあたるため、理由が問われます。
入社したら最初に確認すること
- 労働条件通知書に試用期間の長さ・延長の条件・賃金が書かれているか
- 社会保険の加入日が入社日になっているか
- 本採用の判断基準と、評価面談の予定
- 聞いていた条件と実態がずれた場合に備えて、勤務時間と業務内容の記録を残す
ミライ(国家資格キャリアコンサルタント)
試用期間で一番もったいないのは、「試用期間だから言えない」と思い込んで、条件のずれを黙って抱えることです。条件の相違は入社直後ほど正せます。記録を残して、早い段階で確認してください。
参照ソース
制度の記述は、下記の公式ページの記載に基づいています(2026年09月22日時点)。法改正や運用の変更があり得るため、手続きの前にリンク先の最新の記載と、管轄の労働基準監督署・労働局の案内を確認してください。記載の誤りにお気づきの場合は peaksbways@gmail.com までご連絡ください。確認のうえ訂正し、記事に訂正した旨を記載します。
- 試用期間|裁判例(確かめよう労働条件・厚生労働省) — 試用期間が解約権留保付労働契約であること、試用期間の長さに労働基準法上の定めが無く3か月とする例が多いこと、合理的な期間を超える長期の試用期間が公序良俗に反し無効と解されることの根拠
- 解雇の予告(第20条・第21条)(和歌山労働局) — 解雇には30日前の予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要であること、試用期間中の人は14日を超えて引き続き使用された場合に予告の規定が適用されることの根拠
- 労働条件の明示(確かめよう労働条件・厚生労働省) — 労働条件の明示義務と、明示すべき事項の根拠
- 年次有給休暇(確かめよう労働条件・厚生労働省) — 雇入れの日から6か月継続勤務・全労働日の8割以上の出勤で10日付与されること、年5日の時季指定義務の根拠
- 適用事業所と被保険者(日本年金機構) — 厚生年金保険の被保険者が「常用的に使用される」かどうかで判断されることの根拠
- 退職、解雇、雇止めなど(確かめよう労働条件・厚生労働省) — 期間の定めのない労働契約では解約の申入れから2週間で契約が終了すること(民法第627条第1項)、解雇と退職勧奨・辞職が別のものであることの根拠
- 解雇理由・退職時の証明(第22条)(和歌山労働局) — 解雇理由証明書を請求できること、退職時の証明書に記載される事項、請求できる期間の根拠
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省) — 相談窓口の設置場所・相談が無料であること・取り扱う分野の根拠


