職務経歴書を書こうとして、何を書けばいいか分からず手が止まる。AIに頼めば楽になりそうだけれど、そのまま出して大丈夫なのか、嘘っぽくならないか、会社の情報を入力していいのかが分からない。そんな不安を持つ人に向けた記事です。
この記事では、ハローワーク(厚生労働省)の職務経歴書ガイドが求める中身を土台に、ChatGPTやClaudeを使って通る職務経歴書を作る手順を5段階で整理します。各段階でそのまま使えるプロンプトを4本掲載し、AIに書かせてはいけない部分、個人情報の扱い、職種を問わず使える書き方まで扱います。
職務経歴書のAI活用で最初に決める役割分担
結論から言うと、職務経歴書でAIに任せてよいのは「構成・言い換え・抜けの指摘」で、「事実・数字・志望理由」は自分で書く、という分担を最初に決めることがすべてです。ここが曖昧なまま「職務経歴書を書いて」と頼むと、整っているが中身のない、あるいは事実と違う書類ができあがります。
ハローワークの職務経歴書ガイドは、職務経歴書の目的を「自分には実務能力・長所・強みがあり、企業に貢献できることを採用担当者に伝えること」と位置づけています。伝えるべき中身は、あなたが実際に何を担当し、どんな結果を出したかという事実です。AIはその事実を知りません。知らないものを頼まれると、AIはもっともらしく補います。それが「盛り」や「虚偽」の入口になります。
AIが得意なこと・苦手なこと
AIが得意なのは、箇条書きの経験を職務経歴書の形式に並べ替えること、冗長な文を短くすること、読み手の視点で「ここが分からない」と質問することです。苦手なのは、あなたの経歴に無い事実を見分けること、業界固有の評価軸を知っていること、そして応募先ごとの温度感を判断することです。得意な作業だけを渡すと、AIは書類作成の時間を大きく減らしてくれます。
様式は自由だからこそ、AIに形式を指定する
職務経歴書に法律で決まった様式はありません。ハローワークが公開している様式例は、会社ごとに時系列で経歴を並べる編年体が基本で、A4で1〜2枚に収める形です。様式が自由だということは、AIに「職務経歴書を作って」とだけ頼むと、AIが勝手に形式を選ぶということでもあります。項目名(職務要約・職務経歴・活かせる経験・自己PR)と枚数の目安を先に指定しておくと、出力のばらつきが減り、後の添削も楽になります。経歴が長く職種が変わっている人は、職種ごとにまとめる職務別(キャリア式)のほうが読みやすいことがあり、これはAIに「編年体と職務別のどちらが向くか、理由つきで」と相談すると判断材料が得られます。
「書かせる」と「直させる」の違い
同じAIでも、「私の職務経歴書を書いて」と「私が書いた職務経歴書のここを直して」では、出力の信頼性がまったく違います。前者はAIが情報を補う余地が大きく、後者は補う余地がほとんどありません。この記事のプロンプトはすべて後者の形で作ってあります。
職務経歴書をAIで作る5つの手順とプロンプト
結論は、棚卸し→構成→下書き→添削→面接対策の順で進め、AIを使うのは2・4・5の段階ということです。1と3は自分で書きます。手間に見えますが、ここを自分でやるかどうかが、面接で話せる書類になるかどうかを分けます。
| 段階 | 誰がやるか | やること | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 1. 棚卸し | 自分 | 担当業務・期間・数字・工夫を時系列で書き出す | 箇条書きのメモ |
| 2. 構成 | AI | メモを職務経歴書の項目に並べ替え、足りない情報を質問させる | 構成案と質問リスト |
| 3. 下書き | 自分 | 構成案に沿って、質問への答えを埋めながら書く | 職務経歴書の初稿 |
| 4. 添削 | AI | 採用担当の視点で、抽象表現と根拠不足を指摘させる | 修正箇所の一覧 |
| 5. 面接対策 | AI | 書類から深掘り質問を作らせ、答えられるか確認する | 想定問答 |
手順1: 棚卸しは自分で書く(AIを使わない)
まず、これまでの職歴を会社ごとに、担当業務・期間・規模(件数、人数、金額)・工夫したこと・結果を書き出します。ハローワークのガイドが職務経歴書に求めているのは、まさにこの「何を、どの規模で、どうやったか」です。きれいな文章にする必要はありません。思い出せる数字は概算でも書いておき、後で確認できるものだけ残します。
手順2: AIに構成案と「足りない情報の質問」を出させる
棚卸しメモを渡し、職務経歴書の構成と、埋まっていない情報を質問させます。会社名や取引先名は伏せ字にしてから貼ってください。
あなたは転職の応募書類に詳しいキャリアアドバイザーです。
以下は私の職歴の棚卸しメモです。これをもとに、次の2つを出してください。
1. 職務経歴書の構成案。「職務要約」「職務経歴(会社ごと)」「活かせる経験・スキル」「自己PR」の
4つの項目に、メモの内容をどう配置するかを箇条書きで示す。
文章は書かず、どの情報をどこに置くかだけを示すこと。
2. 採用担当者が知りたいのに、メモに書かれていない情報を質問の形で10個挙げる。
特に、担当規模を示す数字、工夫の具体的な内容、結果の裏付けに関する質問を優先すること。
注意: メモに無い事実や数字を補って書かないでください。分からない点はすべて質問にしてください。
【棚卸しメモ】
- 20XX年〜20XX年 A社(従業員約100名・食品卸)営業事務
- 受発注処理、月約300件。見積書作成、納期調整
- 受注入力のミスが多かったので、チェック表を作って共有した
- 20XX年〜現在 B社(従業員約30名・建材商社)営業事務兼総務
- 受発注に加え、請求書発行と入金確認、備品発注
- 請求書の発行を手作業から会計ソフト連携に切り替える作業を担当
出てきた質問に、自分で答えを書き足します。答えられない質問は、その情報が無いという事実なので、無理に埋めません。
出力された構成案は、そのまま採用せず、「読み手が最初に知りたいことが冒頭に来ているか」だけ確認してください。応募先が求める経験が2社目にある場合、時系列では後ろに来てしまうので、職務要約でその経験を先に触れる、という調整が必要になります。
手順3: 下書きは自分で書く
構成案と質問への答えをもとに、職務経歴書の初稿を自分で書きます。文章の巧拙は気にしなくて構いません。この段階で自分が書いた文には、AIが後から補う余地がありません。それが「盛り」を防ぐ最も確実な方法です。
手順4: AIに採用担当の視点で添削させる
初稿を渡し、抽象的な表現と根拠が足りない箇所を指摘させます。書き直しはさせず、指摘だけを受け取ります。
あなたは中途採用の書類選考を担当している人事です。
以下の職務経歴書を読み、次の観点で指摘をしてください。文章の書き直しはせず、指摘と改善の方向だけを書いてください。
1. 「〜に貢献した」「コミュニケーション能力を活かした」のように、具体的な行動や数字が無い表現を引用し、
「どんな数字や場面を足せば具体的になるか」を提案する
2. 担当業務の羅列になっていて、工夫や結果が書かれていない箇所を指摘する
3. 職務要約(冒頭)を読んだだけで、この人が何をしてきた人か3秒で分かるかを判定し、分かりにくければ理由を書く
4. 応募先の求人票(下に貼る)と照らして、求人票で求められているのに書類に触れられていない経験・スキルを挙げる
【求人票の要点】
(募集職種、業務内容、求める経験を貼る。会社名は伏せる)
【職務経歴書】
(自分で書いた初稿を貼る。氏名・会社名・取引先名は伏せ字にする)
指摘された箇所を、自分の事実で書き直します。AIが例として挙げた数字や場面をそのまま採用しないでください。それはAIの創作です。
手順5: 面接の深掘り質問で「話せるか」を確かめる
仕上がった書類から、面接官が聞きそうな質問を作らせ、口頭で答えられるか試します。答えに詰まる項目は、書類から削るか、答えられる事実に書き換えます。
次の職務経歴書を読んだ面接官になったつもりで、内容の裏付けを確かめる質問を8つ作ってください。
「この数字はどう測ったのか」「この工夫はあなた一人で行ったのか、チームで行ったのか」
「この結果にあなたが直接貢献した部分はどこか」のように、事実の範囲を確かめる質問を必ず含めてください。
質問ごとに、良い答えの条件を1行で添えてください。
【職務経歴書】
(仕上がった書類を貼る。氏名・会社名・取引先名は伏せ字にする)
職務経歴書は「面接で話す内容の目次」です。話せないことを書かない、という基準で最終確認をすると、盛った表現は自然に消えます。
AIに書かせてはいけない部分と「盛り」の境界線
結論は、担当していない業務、確認できない数字、チームの成果を自分一人の成果にする表現、この3つはAIに補わせても自分で書いてもいけないということです。AIを使うと、この3つが「自然な文章」の形で紛れ込みやすくなります。境界線を先に決めておくと、添削の出力を見たときに迷いません。
「盛り」と「言い換え」の違い
「盛り」は事実の範囲を広げることで、「言い換え」は事実の範囲を変えずに伝わりやすくすることです。たとえば、チームで行った改善を「改善に参加し、チェック表の作成を担当した」と書くのは言い換え、「改善を主導した」と書くのは盛りです。AIに添削を頼むときは、「事実の範囲を広げる提案はしないでください」と一文加えておくと、境界を守りやすくなります。
経歴詐称と評価されるリスク
在籍期間、役職、資格、学歴の虚偽は、入社後に発覚すると懲戒や解雇の理由になり得ます。AIが年数や役職を「整えて」しまうケースは実際に起こりやすく、特に在籍期間の端数や、正社員か契約社員かの区別は、出力を必ず自分で照合してください。ハローワークのガイドも、応募書類は事実に基づいて書くことを前提にしています。
AIの出力から必ず削る4つのもの
- 自分の棚卸しメモに無い業務・数字・成果(AIが補った可能性が高い)
- 「主導した」「牽引した」など、実際の関与の範囲を超える動詞
- 「〜に貢献」「〜を実現」のような、根拠の無い結果の表現
- 応募先の求人票の言葉をそのまま写しただけで、自分の経験と結びついていない文
AI特有の文章のクセを消す
AIの添削を経た文章には、「〜を通じて」「〜に寄与」「多岐にわたる」「柔軟に対応」のような、どの書類にも出てくる語が増えがちです。採用担当はこうした語の密度で「AI任せかどうか」を感じ取ります。最終稿では、これらの語を自分の職場で実際に使う言葉(「受注入力」「締め作業」「現場調整」など)に置き換えてください。自分の言葉に戻す作業は、面接で同じ言葉で話せるようにする準備でもあります。
自己PR欄も同じ基準で扱う
職務経歴書の末尾に置く自己PRは、AIに書かせたくなる筆頭の欄です。しかし自己PRも、根拠になる事実が無ければ「粘り強さがあります」「調整力に自信があります」という宣言で終わります。手順4の添削プロンプトに自己PRも含めて渡し、「この強みの根拠になる場面が職務経歴の中に書かれているか」を判定させてください。根拠が職務経歴の中に無い強みは、自己PRから外すか、根拠になる事実を職務経歴に足します。自己PRは職務経歴の要約であって、別の話を始める欄ではありません。
応募先に合わせて「削る」のはよい
盛らずに通る書類にする方法は、足すのではなく削ることです。応募先の求人票と関係が薄い経験を短くし、関係の深い経験に行数を割きます。手順4のプロンプトで求人票との照合をさせているのは、足すためではなく、どこを厚く・薄くするかを決めるためです。
個人情報と会社の情報をAIに入力するときのルール
結論は、氏名・住所・会社名・取引先名・社内の実数は伏せ字にして入力し、提出用の書類に戻すときに自分で埋め直す、これを習慣にすることです。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用について注意喚起(2023年)を出しており、入力した情報が応答以外の目的(学習など)で扱われる可能性を指摘しています。IPAの「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(2024年)も、個人情報や未公開の取引情報をそのまま入力すると、サービス側でどう扱われるか把握しにくくなると注意しています。
伏せ字にする情報の一覧
| 種類 | 例 | 入力時の置き換え |
|---|---|---|
| 本人の識別情報 | 氏名、住所、生年月日、連絡先 | 入力しない |
| 勤務先の識別情報 | 会社名、部署の固有名、取引先名 | 「A社」「取引先B」「〇〇部」 |
| 社内の実数 | 売上高、顧客数、原価、未公開の計画 | 桁だけ残す(「月数百件」「年間数千万円規模」) |
| 第三者の情報 | 上司・同僚・顧客の氏名や評価 | 入力しない |
現職の情報は「会社の情報」でもある
自分の経歴であっても、担当した取引先や社内の数字は、あなた個人ではなく現職の会社の情報です。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AI利用者に対して、個人情報や機密情報の入力に注意し、法令と契約に従った取り扱いを求めています。就業規則に秘密保持の定めがある場合、社外のAIサービスに具体的な数字を入力することがそれに抵触する可能性もあります。伏せ字にしても職務経歴書の説得力は落ちません。「月約300件の受発注」は「月数百件」でも規模は伝わります。
面接で「AIを使ったか」と聞かれたら
AIの利用自体を禁止している企業は多くありませんが、面接で聞かれる可能性はあります。隠す必要はなく、「構成の整理と表現の確認に使い、内容は自分で書きました」と事実を答えれば済みます。この答えが本当であるためにも、手順1と3を自分で行う分担が重要です。逆に、内容までAIに書かせていると、この質問に正直に答えたときに書類の信用が落ちます。
学習に使われない設定を確認する
ChatGPTもClaudeも、入力内容をモデルの改善に使わない設定や、法人向けプランが用意されています。無料版を使う場合は、設定画面で学習への利用をオフにできるかを確認してから使ってください。それでも、入力しないのが最も確実な対策です。
職種を問わず通る職務経歴書にする書き方
結論は、職種が違っても採用担当が読む順番は同じで、「職務要約→担当規模の数字→工夫と結果→応募先との接点」の型に沿えば、事務でも営業でも技術職でも伝わるということです。AIはこの型に沿って並べ替えるのが得意です。
職務要約は「3行で何者か」を書く
冒頭の職務要約は、経験年数・職種・担当領域・代表的な成果を3行程度にまとめます。採用担当は最初の数秒でここを読み、続きを読むかを決めます。AIの添削プロンプトで「3秒で分かるか」を判定させているのはこのためです。
担当規模は数字で、工夫は動詞で
「受発注業務」より「月約300件の受発注を2名体制で担当」、「業務改善」より「入力ミスを減らすためチェック表を作成し、部署に展開」のほうが、規模と関与の範囲が伝わります。職種によって数字の種類は変わります。営業なら件数・金額・達成率、事務なら件数・処理時間、技術職なら規模・工期・担当範囲です。数字が取れない業務は、頻度と体制で規模を示します。
職種別の重点の置き方
職種ごとに厚く書く項目
- 事務・経理・人事 — 処理件数と正確性、改善した手順、使えるソフト
- 営業 — 担当顧客数、目標に対する実績、新規と既存の比率
- 技術職・施工管理 — 担当した案件の規模、工期、資格、安全や品質の実績
- ドライバー・製造・設備 — 免許と資格、扱った車両や設備、無事故や稼働の実績
未経験の職種に応募するときの書き方
未経験の職種に応募する場合、職務経歴書に書く事実は前職のものしかありません。ここで有効なのは、前職の業務を「応募先の業務に転用できる行動」として書き直すことです。たとえば販売職から事務へ応募するなら、「接客」ではなく「日次の売上集計と発注データの入力」を前に出します。手順2のプロンプトに「応募先は〇〇職です。私の経験のうち、応募先の業務に転用できるものを優先して構成してください」と一文加えると、AIは転用の観点で並べ替えてくれます。ただし転用の「解釈」はAIに任せても、経験そのものを増やしてはいけない点は変わりません。
施工管理のように業界固有の評価軸がある職種は、その職種向けの書き方を先に押さえてください。施工管理の職務経歴書はAIで作る施工管理の職務経歴書で、評価されるポイントと専用のプロンプトを整理しています。志望動機の書き方は職種別に転職の志望動機、職種別テンプレにまとめています。
まとめ
職務経歴書をAIで作る手順は、棚卸し(自分)→構成(AI)→下書き(自分)→添削(AI)→面接対策(AI)の5段階です。AIに任せるのは構成・言い換え・抜けの指摘・想定質問で、事実・数字・志望理由は自分が書きます。担当していない業務、確認できない数字、関与の範囲を超える動詞の3つは、AIが補っても自分で書いてもいけません。
個人情報と会社の情報は、個人情報保護委員会とIPAの指針に従い、伏せ字にしてから入力します。職種が違っても型は同じで、職務要約・担当規模の数字・工夫と結果・応募先との接点の順に書けば伝わります。書類は面接で話す内容の目次だと考え、話せないことは書かない、を最後の基準にしてください。
シゴトのホント編集部
AIで書類が楽になったぶん、採用側は「面接で確かめる」方向に動いています。書類で盛った分は面接で回収されると考えて、AIには整理を任せ、事実は自分で持つ。それが、AI時代に通る職務経歴書の条件だと考えています。
参照ソース
- 職務経歴書の書き方 パンフレット(ハローワークインターネットサービス・厚生労働省) — 職務経歴書の目的(実務能力・強みと企業への貢献を伝える)、記入例とチェックポイント
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会) — 生成AIに個人情報を入力する際の注意(2023年)
- テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(IPA 独立行政法人情報処理推進機構) — 個人情報・未公開の取引情報を入力する際のリスクと対策(2024年)
- AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省) — AI利用者に求められる個人情報・機密情報の適切な取り扱い


