履歴書の自己PRと志望動機を前にして、何時間も書けずに止まっている。ChatGPTに書かせればいいと聞くけれど、そのまま出してばれないか、個人情報を入れて大丈夫か、が引っかかっているのではないでしょうか。
結論から言うと、AIに任せるのは「構成と言い回し」、自分で書くのは「事実とエピソード」です。この記事では、その線引きと、実際に使えるプロンプト、虚偽記載と個人情報のリスク、厚生労働省の履歴書様式例の使い方を、公的資料をもとに手順で解説します。
履歴書をAIで作るときに任せて良い部分と自分で書くべき部分
AIに任せて良いのは、文章の構成・言い回し・字数調整・誤字脱字の確認です。自分で書くべきなのは、学歴・職歴・資格の事実と、自己PRの根拠になる具体的なエピソードです。この線を越えてAIに事実を作らせると、次のセクションで扱う虚偽記載のリスクに直結します。
| 履歴書の項目 | AIに任せて良いこと | 自分で書くこと |
|---|---|---|
| 学歴・職歴 | 表記の統一(西暦・和暦、正式名称の確認) | 事実そのもの。入社・退社の年月、会社名、部署名 |
| 資格・免許 | 正式名称への言い換え | 取得年月と、実際に持っている資格だけ |
| 自己PR | 構成案、冗長な部分の削除、字数調整 | 根拠になるエピソード、数字、自分の言葉での結論 |
| 志望動機 | 応募先の求人票に合わせた言い換え、論理の整理 | 「なぜこの会社か」の本当の理由、自分の経験との接点 |
| 本人希望欄 | 丁寧な言い回し | 希望職種・勤務地・入社可能時期の事実 |
AIの文章は、整っている代わりに「誰にでも当てはまる」内容になりがちです。採用担当者が読みたいのは、整った文章ではなく、その人にしか書けない事実です。事実を自分で箇条書きにしてから、AIに文章化させるという順番を守ると、AIの弱点を避けながら速く仕上がります。
履歴書と職務経歴書でAIの使いどころが違う
履歴書は「事実を決まった欄に収める書類」、職務経歴書は「経験を自分の構成で語る書類」です。AIが力を発揮するのは後者です。履歴書でAIが関わるのは自己PR欄と志望動機欄のほぼ2か所で、しかも欄が小さいため、300字前後に収める字数調整と、応募先ごとの言い換えが主な仕事になります。
一方の職務経歴書は、職務要約・職務経歴・活かせる経験・自己PRと構成が長く、応募先ごとに並べ替えや強調点の変更が必要です。AIに「この求人票に向けて、私の職務経歴のどこを冒頭に持ってくるべきか」と聞く使い方が向いています。この記事は履歴書に絞りますが、ステップ1で作る材料のメモは、そのまま職務経歴書の下書きにも使い回せます。
履歴書のAI下書き手順|ChatGPTで自己PR・志望動機を作る5ステップ
AIで履歴書を下書きする手順は、材料の棚卸し → 求人票の読み込み → 自己PRの下書き → 志望動機の下書き → 推敲と字数調整、の5ステップです。ChatGPTを例にしますが、他の生成AI(Gemini・Claude・Copilotなど)でも同じプロンプトが使えます。
ステップ1|材料を箇条書きで棚卸しする
AIに投げる前に、自分の経歴・実績・得意なことをメモに書き出します。ここは自分で書く工程です。会社名や氏名は書かず、「食品卸の営業(5年)」のように業種と職種で表します。
- 経験した仕事と期間(例: 食品卸のルート営業を5年、担当店舗40件)
- 数字で言える実績(例: 担当エリアの売上を前年比で伸ばした、欠品率を下げた)
- 得意なこと・褒められたこと(例: 段取り、顧客との関係づくり、後輩の指導)
- 持っている資格・免許
ステップ2|求人票を読み込ませて「求める人物像」を整理する
求人票の文章を貼り付けて、応募先が何を求めているかをAIに整理させます。会社名は伏せても構いません。
以下は、私が応募を考えている求人票の「仕事内容」と「求める人物像」の部分です。
この求人票から、採用側が重視していると読み取れる能力・経験・姿勢を、
重要度が高い順に5つ、箇条書きで挙げてください。
それぞれについて、求人票のどの表現から読み取ったかも添えてください。
【求人票】
(ここに求人票の本文を貼る。会社名・担当者名は削除する)
ステップ3|自己PRを下書きする
ステップ1の材料とステップ2の結果を渡して、自己PRの下書きを作らせます。字数と構成を指定するのがコツです。
あなたは転職支援の経験が長いキャリアアドバイザーです。
以下の【私の経歴と実績】と【応募先が求めていること】をもとに、
履歴書の自己PR欄に書く文章を、300字以内で下書きしてください。
条件:
- 「結論 → 根拠となる具体的なエピソード → 応募先でどう活かすか」の3段構成にする
- 【私の経歴と実績】に書かれていない事実や数字を作らない。足りない場合は「(ここに具体例を入れる)」と空欄にする
- 「絶対」「誰にでも」などの誇張表現を使わない
- 文体は「です・ます」調
【私の経歴と実績】
(ステップ1の箇条書きを貼る)
【応募先が求めていること】
(ステップ2の結果を貼る)
出てきた文章の「(ここに具体例を入れる)」を自分で埋めます。この空欄を残す指示が、AIに事実を作らせないための仕組みです。
ステップ4|志望動機を下書きする
志望動機は「なぜこの会社か」「なぜこの職種か」「自分の経験がどうつながるか」の3点で組みます。自分の本当の理由を先に1〜2行で書いてから渡してください。
以下の【志望する本当の理由】と【私の経歴】と【応募先の特徴】をもとに、
履歴書の志望動機欄に書く文章を250字以内で下書きしてください。
条件:
- 「なぜこの会社か → なぜこの職種か → 自分の経験がどう役立つか」の順に書く
- 【志望する本当の理由】に書いていない動機を付け足さない
- 応募先の特徴は、求人票や採用ページに書かれている事実だけを使う
- 給与や休日など待遇面を第一の理由にしない
- 文体は「です・ます」調
【志望する本当の理由】
(例: 前職で扱っていた商材の販売先だった業界に、扱う側として関わりたい)
【私の経歴】
(ステップ1の箇条書きを貼る)
【応募先の特徴】
(求人票・採用ページから読み取れる事実を箇条書きで貼る)
職種別の志望動機の組み立て方は転職の志望動機、職種別テンプレで解説しています。
ステップ5|推敲と字数調整をして、自分の言葉に戻す
下書きができたら、AIに推敲役をさせます。ここでは文章を書かせるのではなく、直すべき点を指摘させるのがポイントです。
以下は私が書いた履歴書の自己PRです。次の観点で問題点を指摘してください。
文章を書き直すのではなく、指摘だけを箇条書きで出してください。
1. 誰にでも当てはまる抽象的な表現になっている箇所
2. 根拠(エピソードや数字)がない主張
3. 誇張と受け取られる可能性がある表現
4. 一文が長すぎて読みにくい箇所
5. 誤字脱字、表記のゆれ
【自己PR】
(ここに自分の文章を貼る)
指摘をもとに自分で直し、最後に声に出して読んでください。面接で「ここに書いたことを詳しく」と聞かれて、自分の言葉で3分話せるかが、AIの文章を自分のものにできたかの判断基準です。
AI下書きの5ステップ
- ステップ1: 材料を箇条書きで棚卸しする(自分で書く。個人情報は書かない)
- ステップ2: 求人票を読み込ませ、求める人物像を整理する
- ステップ3: 自己PRを300字で下書き。足りない事実は空欄にさせる
- ステップ4: 志望動機を250字で下書き。本当の理由を先に自分で書く
- ステップ5: 推敲は「指摘だけ」させて、自分で直す
AIで作った履歴書をそのまま出さないための確認項目
AIの下書きをそのまま提出すると、事実の誤り・抽象的な表現・応募先とのずれの3つが残ります。提出前に、次の項目を自分の目で確認してください。
- 事実の照合 — 学歴・職歴の年月、会社名、資格名を、卒業証書・雇用契約書・合格証と突き合わせる
- 数字の裏付け — 自己PRの数字は、給与明細・評価シート・社内資料などで説明できるものだけ残す
- 固有名詞の正確さ — 資格の正式名称(例: 「普通自動車第一種運転免許」)、会社の正式名称
- 応募先ごとの差し替え — 志望動機の「なぜこの会社か」が別の会社にも当てはまる文章になっていないか
- 文体の統一 — 自己PRと志望動機で文体や一人称が揃っているか
- 手書き指定の有無 — 応募先が手書きを指定している場合は、AIの下書きを見ながら自分で書く
AI文章に残りやすい癖と直し方
AIの下書きには、読めば分かる癖があります。次の3つは、推敲のときに自分で見つけて直してください。
| AI文章の癖 | 例 | 直し方 |
|---|---|---|
| 抽象的な決まり文句 | 「柔軟に対応し、円滑なコミュニケーションを心がけてきました」 | 誰と、何を、どう調整したかを1つの場面で書く |
| 根拠のない自信表現 | 「貴社に貢献できると確信しております」 | 「〜の経験を〜に活かせます」と、経験と活かし方の対で書く |
| 求人票の言葉の反復 | 求人票の「主体性」「チームワーク」をそのまま並べる | 求人票の言葉を自分の経験の言葉に翻訳する(「主体性」→「担当店舗の陳列提案を自分から始めた」) |
| 三段落すべて同じ長さ | 結論・根拠・活かし方が均等に100字ずつ | 根拠のエピソードに一番多く字数を使う |
癖を直すコツは、AIの文章を「消す」のではなく「具体化する」ことです。「円滑なコミュニケーション」を消すのではなく、「開店前の納品時間を店長と週1回すり合わせ、遅配をゼロにした」のように、場面・相手・結果の3点を足します。この作業は自分にしかできないので、AIに書き直させても解決しません。
施工管理職の履歴書での項目の押さえ方は施工管理の履歴書をAIで作成する方法にまとめています。職種が違っても、確認の流れは同じです。
虚偽記載と個人情報のリスク|AIに入力してはいけないもの
AIで履歴書を作るときのリスクは2つあります。1つはAIが事実を作ってしまう「虚偽記載」、もう1つは自分の個人情報をAIサービスに渡してしまう「情報漏えい」です。どちらも、プロンプトの書き方で避けられます。
虚偽記載は内定取消・解雇の理由になる
生成AIは、指示が曖昧だと「それらしい実績」を補って文章を作ります。「売上を120%に伸ばした」「10人のチームを率いた」といった数字が、自分の材料にないのに下書きに現れたら、それは虚偽記載の入口です。履歴書の経歴や資格に事実と異なる記載があると、内定の取消や入社後の懲戒解雇の理由になり得ます。学歴・職歴・資格は、AIの出力を信用せず、必ず原本と照合してください。
AIの下書きに混ざりやすい「作られた事実」
- 材料に書いていない数字(売上・人数・期間・改善率)
- 持っていない資格や、受講していない研修
- 経験していない業務(「マネジメント経験」「新規開拓」など、求人票の言葉をそのまま反映したもの)
- 応募先の事業内容についての憶測(求人票に書かれていない事業や強み)
個人情報は伏せ字にして入力する
個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表し、個人情報を生成AIに入力する場合の留意点を示しました(個人情報保護委員会)。履歴書を作るときは、次の情報を入力しないでください。
- 氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日
- 現在の勤務先と過去の勤務先の正式名称(業種と職種に置き換える)
- 取引先や顧客の名称、社内の非公開情報
- 顔写真
企業向けではありますが、情報処理推進機構(IPA)が2024年7月に公表した「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」でも、入力した情報がサービス側に保存・学習される可能性を前提に、機密情報や個人情報の入力を制限することが挙げられています(IPA)。個人で使う場合も考え方は同じで、チャット履歴を学習に使わせない設定(オプトアウト・一時チャット)を有効にしたうえで、それでも個人情報は入力しないのが安全です。
面接で「詳しく聞かせてください」と言われたときの備え
履歴書の内容は、面接で必ず深掘りされます。AIで書いた自己PRのエピソードを自分の言葉で話せないと、その場で「本人が書いていない」と伝わります。提出前に、自己PRと志望動機のそれぞれについて、次の3つを口頭で言えるか確かめてください。
- そのエピソードは、いつ、どこで、誰と、何をしたことか(5W1Hで30秒)
- 結果の数字があるなら、どうやって測ったか、比較対象は何か
- うまくいかなかった点と、そこから何を変えたか
3つ目は、AIの下書きにはまず入りません。AIは成功したことしか書かないため、面接で「苦労した点は」と聞かれたときに詰まる原因になります。失敗と修正を1つ用意しておくと、AIで整えた文章に自分の実感が乗り、話に厚みが出ます。
厚労省の履歴書様式例と旧JIS規格|様式の選び方
履歴書の様式は、応募先の指定がなければ厚生労働省の履歴書様式例を使うのが無難です。厚生労働省は2021年4月に、公正な採用選考の観点から新たな履歴書の様式例を公表しました(厚生労働省・2021年4月16日)。それまで広く使われていた「JIS規格の履歴書」は、日本規格協会が2020年7月にJIS規格の解説から様式例を削除したため、現在は厚生労働省の様式例がその役割を引き継いでいます。
厚生労働省様式例の特徴
| 項目 | 旧JIS規格の様式例 | 厚生労働省の様式例(2021年〜) |
|---|---|---|
| 性別欄 | 男・女を選ぶ | 任意記載欄。未記載も可 |
| 通勤時間 | あり | なし |
| 扶養家族数(配偶者を除く) | あり | なし |
| 配偶者・配偶者の扶養義務 | あり | なし |
| 学歴・職歴・資格・志望動機・本人希望欄 | あり | あり |
| 入手先 | 市販の履歴書用紙 | ハローワークの窓口・厚生労働省サイトからPDF・Excelで無料入手 |
厚生労働省の様式例では、性別が任意記載になり、通勤時間・扶養家族・配偶者に関する4項目がなくなりました。これらは本人の適性・能力と関係のない事項として、公正な採用選考の観点から外されたものです(厚生労働省・公正採用選考特設サイト)。
AIで様式を扱うときの注意
AIに「履歴書のフォーマットを作って」と頼むと、旧JIS規格に近い項目(性別・扶養家族・配偶者など)を含んだ表を出してくることがあります。様式そのものはAIに作らせず、厚生労働省の様式例(PDF・Excel)をダウンロードして、AIで下書きした文章を各欄に転記する使い方にしてください。Excel版であれば、自己PR欄と志望動機欄に文章を貼り付けるだけで済みます。
応募先が独自の様式や転職サイトの入力フォームを指定している場合は、その指定に従います。職務経歴書は履歴書とは別の書類で、様式の指定が緩い分、AIの下書きを活かしやすい書類です。
データ提出と印刷提出で気をつけること
Excel版で作った履歴書をデータで送るときは、PDFに変換してから送ります。Excelのまま送ると、相手の環境で欄の幅が崩れたり、セルの数式や修正履歴が残ったりするためです。PDFのファイル名は「履歴書_氏名.pdf」のように、誰の何の書類かが分かる名前にします。印刷して提出する場合は、A4の2枚(見開きでA3の1枚)にし、写真は規定の寸法で貼ります。
日付欄は、提出日または投函日を書きます。AIで下書きした文章を使い回すときに、前回の日付や応募先名が残っていないかを、送る直前にもう一度見てください。志望動機の会社名の書き間違いは、AIで作ったかどうかに関係なく、書類選考で最も目立つ失点です。
様式で迷ったときの判断
- 応募先の指定があればそれに従う(手書き指定・独自様式・Webフォーム)
- 指定がなければ厚生労働省の様式例(PDF・Excel)を使う
- 様式をAIに作らせない。文章の下書きだけAIに任せ、様式に転記する
- 性別欄は任意記載。書かなくても不利に扱われない前提の様式になっている
まとめ
履歴書をAIで作るときの原則は、「事実とエピソードは自分で、構成と言い回しはAIで」です。材料の棚卸し → 求人票の読み込み → 自己PR → 志望動機 → 推敲、の5ステップで進め、AIには「書いていない事実を作らない」「足りない部分は空欄にする」と指示すると、虚偽記載を避けながら速く仕上がります。
- AIに任せるのは構成・言い回し・字数調整・推敲の指摘。事実と数字は自分で書き、原本と照合する
- 個人情報(氏名・住所・勤務先名など)は入力せず、業種と職種に置き換える。個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月)とIPAのガイドライン(2024年7月)が根拠
- 虚偽記載は内定取消・解雇の理由になり得る。AIが補った数字や経験に注意する
- 様式は厚生労働省の履歴書様式例(2021年4月公表)を使う。性別は任意記載、通勤時間・扶養家族・配偶者の欄はない
- 提出前に、面接で「詳しく」と聞かれて3分話せるかを自分で確かめる
シゴトのホント編集部
AIで書いた履歴書が通らないのは、AIが下手だからではなく、材料が足りないまま書かせているからです。ステップ1の箇条書きに30分かけると、あとの4ステップは合計で30分もかかりません。時間をかける場所を間違えないでください。
参照ソース
- 新たな履歴書の様式例の作成について(厚生労働省・2021年4月16日) — JIS規格の解説から履歴書様式例が削除された経緯と、厚生労働省が新たな様式例を公表したことの根拠
- 求職者の皆様へ(厚生労働省・公正採用選考特設サイト) — 厚生労働省履歴書様式例の入手先(PDF・Excel)と、性別欄が任意記載になり4項目が外された理由の根拠
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会・2023年6月2日) — 生成AIサービスに個人情報を入力する際の留意点の根拠
- テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(情報処理推進機構・2024年7月) — 生成AIへの入力情報が保存・学習される可能性と、機密情報・個人情報の入力制限の考え方の根拠


