「電気工事士はやめとけ」と検索するのは、資格取得や転職を考えたときに、周囲や口コミで否定的な声を目にしたからではないでしょうか。感電や高所作業のリスク、覚えることの多さは事実ですが、内容を確認せずに選択肢から外すのはもったいない判断です。
結論から言うと、「やめとけ」の背景には実態に近いリスクと、未経験・文系への誤解が混在しています。本記事では両者を切り分けたうえで、第二種電気工事士の合格率を公式データで検証し、AI時代における将来性と、目指すべき人の見分け方まで解説します。
電気工事士のキャリア全般の悩みは電気工事士のキャリア完全ガイドにまとめています。
「電気工事士はやめとけ」と言われる理由:実態に近いもの
電気工事士の仕事には、確かに「やめとけ」と言われても仕方のない実態があります。まず挙げられるのが、感電や墜落など身体に直結するリスクです。活線に近い場所での作業や、脚立・電柱を使う高所での配線作業は、決められた手順を守っても一定のリスクが残り、経験の浅いうちは特に緊張を強いられます。
次に、天候に左右される屋外作業の負荷です。新築やリフォームの現場では、夏場の炎天下や冬場の屋外での配線・配管作業が避けられず、空調の効いたオフィスワークと比べれば体力的な消耗は大きくなります。天井裏や床下など、姿勢を保ちにくい場所での作業が続くことも珍しくありません。
さらに、覚えることの多さも「やめとけ」と言われる一因です。電気工事士は資格を取れば終わりではなく、電気設備の技術基準や内線規程の改定、現場ごとに異なる図面の読み方、新しい建材・機器への対応など、実務を通じて知識を更新し続ける必要があります。資格取得後も先輩に同行しながら現場で経験を積む期間が、数年単位で必要になるのが一般的です。
加えて、入社してすぐに配線を任されるわけではない点も、想像とのギャップとして挙げられます。新人のうちは資材の運搬や清掃、道具の準備といった雑務が中心になりやすく、実際に電気工事の作業に深く関われるまで一定の下積み期間があります。この期間の給与は、経験を積んだあとと比べて低めに設定されている会社が多く、「思っていたより稼げない」という不満につながりやすい部分です。
現場の人間関係も、合う・合わないが分かれるポイントです。建設現場は職人気質の文化が根強く、指示は口頭かつ短く飛んでくることが多いため、丁寧な説明を前提とするオフィスワークに慣れている人ほど戸惑いを感じます。一方で、一度信頼関係ができれば技術を惜しみなく教えてもらえる、面倒見のよい現場が多いのも実情です。会社選びの段階で、若手育成の体制や離職率を確認できるかどうかが、入社後の印象を左右します。
体力面の負荷は、経験を積むにつれて感じ方が変わってくる部分でもあります。最初は道具の名前や現場の段取りを覚えるだけで精一杯だったものが、慣れてくると無駄な動きが減り、同じ作業でも体への負担が小さくなっていきます。もちろん夏場の炎天下作業がなくなるわけではありませんが、水分補給や休憩のタイミングを自分で判断できるようになる、防暑対策のある現場を選べるようになるなど、経験とともに対処の幅が広がっていく点は、入職前にはイメージしにくいポイントです。
なお、電気工事会社と一口に言っても、規模や仕事の内容には幅があります。ビルや工場、公共施設などの大規模案件を扱うゼネコン系・電力系の会社もあれば、住宅の新築・リフォームや設備の修繕を地域密着で請け負う会社もあり、後者のほうが件数・現場数は多いのが実態です。安全教育や保護具の支給、熱中症対策の徹底度合いは会社によって差があるため、「電気工事士だから危険」と一括りにするのではなく、応募先がどこまで安全対策に投資しているかを見極めることが、リスクを実際に減らす近道になります。
電気工事士で「きつい」と感じやすい3つの軸
- 安全面のリスク — 感電・墜落など身体に直結する労働災害の可能性
- 天候・体力の負荷 — 夏場の炎天下、冬場の屋外での作業が避けられない
- 知識の更新量 — 法令改正や新しい機器への対応を実務の中で学び続ける必要がある
「電気工事士はやめとけ」と言われる理由:誤解に近いもの
一方で、「電気工事士はやめとけ」という声の中には、実態というより誤解に基づくものも少なくありません。代表的なのが「未経験・文系では無理」「独学では受からない」という思い込みです。
第二種電気工事士の受験資格には、実務経験も学歴の制限もありません。試験を実施する一般財団法人電気技術者試験センターも、よくある質問で「電気系の仕事が未経験でも受験できますか」という問いに対し、受験資格に実務経験は不要で、誰でも受験可能ですと明言しています。文系出身者や異業種からの転職者が、独学で合格している例も珍しくありません。
また、「技能試験に実技があるから独学では無理」というイメージも根強くありますが、技能試験で出題される候補問題はあらかじめ公表されており、市販の練習キットと動画教材を使えば、独学でも十分に対策できる範囲です。合格率の実態は、次の章で具体的な数字とともに確認します。
「若くないと厳しい」という年齢に関する誤解も見直しておきたいところです。第二種電気工事士の受験に年齢の上限はなく、30代・40代になってから異業種から転職し、資格を取得する人も少なくありません。体力面の負荷はゼロではありませんが、若手のうちに培う体の使い方や道具の扱い方は、年齢を重ねてからでも訓練で身につけられます。「若いうちしかできない仕事」と決めつけて選択肢から外してしまうのは、もったいない判断です。
入職ルートについても誤解が多い分野です。電気工事士というと工業高校の電気科出身者のイメージが強いかもしれませんが、実際の入職ルートは大きく3つに分かれます。ひとつは工業高校や職業訓練校で専門知識を学んでから就職するルート、もうひとつは異業種から転職し、働きながら資格取得を目指すルート、そしてもうひとつが独学で資格を先に取ってから求人に応募するルートです。人手不足を背景に、求人票で「未経験歓迎」「資格取得支援あり」と明記する会社も増えており、資格取得と実務経験の両方を会社の制度でサポートしてもらえるケースは珍しくありません。
「第二種を取っても、その先のキャリアが見えにくい」という声も誤解を含みます。第二種電気工事士は一般住宅や小規模店舗など、比較的小規模な電気工作物の工事に対応する資格ですが、実務経験を積んだうえで第一種電気工事士を取得すれば、ビルや工場などより規模の大きい電気工事にも従事できるようになります。第二種で現場に入り、実務経験を重ねながら第一種へ進むのが一般的なキャリアパスであり、資格を取って終わりというより、資格を入り口にキャリアを積み上げていく職種だと捉えるほうが実態に近いといえます。
「体力に自信がないと続けられない」という誤解も見直しておきたいところです。確かに配線や設置の現場作業には体力が要りますが、電気工事士の資格を活かせる仕事は施工だけではありません。積算・見積もり、施工図の作成、竣工後の保守点検など、現場経験を土台にしながら体力面の負荷が比較的軽い業務に移っていくキャリアもあります。「電気工事士=一生現場の力仕事」と決めつけず、資格を軸にした働き方の選択肢を広く捉えることが、誤解を解く近道です。
| 誤解 | 実態 |
|---|---|
| 未経験・文系では受験できない | 実務経験・学歴不問。誰でも受験可能(電気技術者試験センター) |
| 独学では技能試験に対応できない | 候補問題が事前公表されており、独学者も多数合格している |
| 理系・工業高校出身者しか受からない | 学科試験合格率は例年6割前後で推移(次章で詳述) |
第二種電気工事士の難易度と合格率|データで検証
第二種電気工事士試験は、学科試験(四肢択一)と技能試験(配線などの実技)の2段階で構成されています。試験は上期・下期の年2回実施されており、学科試験は従来のマークシート方式に加えてCBT方式(パソコンで解答する方式)でも受けられるようになったため、以前より受験の機会は広がっています。試験を実施する一般財団法人電気技術者試験センターが公表している「第二種電気工事士試験の試験結果と推移」によると、直近4年間の合格率は次のとおりです。
| 年度 | 学科試験合格率 | 技能試験合格率 |
|---|---|---|
| 令和4年度 | 56.0% | 72.6% |
| 令和5年度 | 59.4% | 71.1% |
| 令和6年度 | 58.2% | 70.3% |
| 令和7年度 | 56.6% | 71.8% |
学科試験は例年6割前後、技能試験は7割前後で推移しており、大きな変動はありません。学科試験に合格した人だけを見れば技能試験の合格率は7割を超えており、計画的に対策すれば十分に届く水準といえます。4年分のデータを並べても、学科は56〜59%、技能は70〜73%のレンジに収まっており、特定の年度だけが極端に難しかった、あるいは易しかったという事実はありません。
難易度の目安としては、暗記中心の学科試験に対し、技能試験は制限時間内に配線を仕上げる作業速度と正確さが問われます。学科試験の対策には過去問演習、技能試験の対策には候補問題を使った実技練習が中心になり、独学の場合はどちらもおおむね2〜3か月の準備期間を見込むのが一般的です。工具や練習用の電線一式をそろえる初期費用はかかりますが、他の国家資格と比べて特別に高額というわけではありません。
合格率だけを見ると「簡単な資格」という印象を持つかもしれませんが、実際には最初から学科・技能の両方に合格できず、次回に再挑戦する受験者も一定数います。学科試験は一度合格すれば、その後2回の技能試験まで学科が免除される制度があるため、技能試験だけに集中して再挑戦できる点も、社会人が働きながら取得しやすい理由のひとつです。年度によって合格率が数ポイント上下することはあっても、極端に難化・易化する試験ではなく、他の建築・設備系の国家資格と比べても、独学者にとって挑戦しやすい部類に入ります。
学習の進め方としては、学科試験は「電気に関する基礎理論」「配電理論及び配線設計」「配線図」など出題範囲が明確に定められているため、過去問を繰り返し解いて出題パターンに慣れることが最短ルートになります。とくに配線図の読み取りや、電気工事用の材料・工具の名称を問う問題は、参考書の暗記だけでなく実物やイラストで確認しながら覚えると定着しやすい分野です。技能試験は、候補問題ごとに複線図を書く練習と、制限時間内に手を動かす練習を並行して積むことで、独学でも合格ラインに到達しやすくなります。
電気工事士に向いている人の見分け方とAIで仕事はなくなるのか
「やめとけ」の実態と誤解を踏まえたうえで、最後に向き不向きの見分け方と、AI時代における将来性を整理します。
電気工事士に向いている人の条件
- 手を動かす作業や、体を使う仕事に苦痛を感じない
- 資格取得後も現場で新しいことを学び続ける姿勢がある
- 安全確認や手順の徹底を面倒に感じないタイプ
逆に、高所や屋外作業に強い抵抗がある人、体を使う仕事より完全なデスクワークを希望する人にとっては、無理に目指す必要はありません。電気設計や施工管理など、電気の知識を活かせる隣接職種を検討する選択肢もあります。
働き方の柔軟さも、見分け方のひとつの軸になります。電気工事士は会社に所属して現場を回る働き方だけでなく、実務経験を積んだあとに一人親方として独立したり、電気主任技術者など上位の資格に挑戦してキャリアの幅を広げたりする道もあります。資格と経験年数がそのまま仕事の受けられる範囲・単価に反映されやすいため、「資格を取って終わり」ではなく「資格を起点に積み上げていく」働き方が向いている人には、長期的なキャリア形成のしやすさがメリットになります。
転職先を選ぶときに確認したい3点
- 資格取得支援制度があるか、受験費用や教材費を会社が負担してくれるか
- 若手が一人で任される作業の範囲と、その判断基準が明確か
- 安全教育・熱中症対策・保護具の支給が実際に行われているか
AIで仕事はなくなるのかという不安についても触れておきます。電気工事は配線・結線・設置といった現場での物理作業が中心で、建物ごとに配線ルートや条件が異なるため、AIやロボットによる完全な自動化は当面難しいとされています。加えて、経済産業省の産業構造審議会保安分科会が平成29年にまとめた推計では、第一種電気工事士は高齢層の大量退職により2020年頃から約4万人規模、第二種電気工事士も入職者の減少により2045年には約1万人規模の人材不足が生じる可能性が指摘されています。需要面では「なくなる仕事」どころか、むしろ担い手が求められる側に位置づけられる仕事です。
一方で、AIをうまく使えば学習効率は上げられます。学科試験の頻出分野を自分の弱点に合わせて復習プランに落とし込む、次のようなプロンプトを試してみてください。
あなたは第二種電気工事士試験の学習コーチです。
以下の条件で、私専用の学科試験・復習プランを作成してください。
【私の状況】
- 学科試験まで残り: ○週間
- これまでに解いた過去問で正答率が低い分野: (例)配線図の読み取り、電気工事の施工方法
- 平日に学習に使える時間: 1日○分
- 得意・すでに理解している分野: (例)電気に関する基礎理論
【依頼内容】
1. 苦手分野を優先しつつ、残り期間を週単位で区切った復習スケジュールを作る
2. 各週で解くべき過去問の年度・分野の目安を示す
3. 苦手分野については、つまずきやすいポイントを簡潔に解説する
4. 直前1週間は、総仕上げ用のスケジュールに切り替える
苦手分野の言語化と時間配分の整理は、AIが得意とする作業です。出力結果をそのまま信じ込まず、実際の過去問演習で答え合わせをしながら使うのが実践的です。
同じ「AIで仕事がなくなる」という不安は、施工管理や設備管理など、他の現場系職種でもよく語られます。共通しているのは、図面作成や記録の集計といった事務的な部分はAI・ソフトウェアに置き換わりやすい一方で、現場ごとに異なる条件を踏まえて手を動かす部分は人に残りやすいという構造です。電気工事士の場合、配線ルートの取り回しや、既存の建物・設備との取り合いといった判断は、現場を見た人にしか下せません。資格取得はゴールではなく、こうした「人にしかできない判断力」を身につけていくための出発点だと捉えると、長期的なキャリアの見通しが立てやすくなります。
男性の多い職種というイメージが強い分野でもありますが、女性の電気工事士も少しずつ増えています。工具や作業着が女性の体格に合わせて選べるようになってきたことや、資材の軽量化が進んだこともあり、「女性には向かない」という前提自体が変わりつつあります。性別に関わらず、上で挙げた「手を動かす作業に苦痛を感じないか」「安全確認を徹底できるか」という2点を、自分自身の判断基準にするのが実質的です。
シゴトのホント編集部
「やめとけ」という声は、リスクを事前に知らせてくれる情報として受け止めつつ、誤解の部分まで鵜呑みにする必要はありません。受験資格に制限がなく、合格率も突出して低いわけではない資格です。迷っているなら、まず学科試験の過去問を1年分解いてみることから始めてみてください。
参照ソース
- 第二種電気工事士試験の試験結果と推移|一般財団法人電気技術者試験センター — 学科試験・技能試験の受験者数・合格者数・合格率(令和4〜7年度)の根拠
- 電気工事士の資格概要(よくあるご質問)|一般財団法人電気技術者試験センター — 受験資格に実務経験・学歴の制限がなく誰でも受験できることの根拠
- 電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について|経済産業省 産業構造審議会保安分科会(平成29年3月) — 第一種・第二種電気工事士の人材不足見通し(人数規模)の根拠


