「第二種電気工事士は簡単に取れる」という声もあれば「思ったより時間がかかった」という声もあり、人によって言うことがバラバラで、実際の難易度がつかみにくい資格だ。独学でも間に合うのか、他の国家資格と比べてどのくらいの位置づけなのか、勉強時間はどれくらい見ておけばいいのか——数字の裏付けがないまま不安だけがどんどん膨らんでいないだろうか。
結論から先に言うと、第二種電気工事士の合格率は学科・技能とも直近5年間おおむね6〜7割で推移しており、国家資格のなかでは決して狭き門ではない。本記事では一般財団法人電気技術者試験センターの公式データをもとに、直近5年の合格率の推移、他の国家資格と比べた難易度の位置づけ、学科・技能それぞれに必要な勉強時間の目安、独学での効果的な対策方法を解説する。
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第二種電気工事士の合格率データ|一般財団法人電気技術者試験センター公式実測
第二種電気工事士試験は、学科試験と技能試験の2段階で構成される。学科に合格(または科目免除)した人だけが技能に進める仕組みだ。一般財団法人電気技術者試験センターが公表している直近5年間の結果は次のとおりである。
| 年度 | 学科試験合格率 | 技能試験合格率 |
|---|---|---|
| 令和3年度 | 59.2% | 72.8% |
| 令和4年度 | 55.9% | 72.6% |
| 令和5年度 | 59.4% | 71.1% |
| 令和6年度 | 58.2% | 70.3% |
| 令和7年度 | 56.5% | 71.7% |
学科は55〜59%台、技能は70〜73%台で推移しており、どちらの年度も大きな変動はない。学科だけで毎年13万人以上が受験する規模の大きい試験で、特定の年だけ極端に易化・難化するようなことは起きていない。技能の方が学科より合格率が高いのは、後述するとおり技能試験の出題パターンが試験前に公表されているためで、対策の的を絞りやすいことが理由の一つだ。
申込者と受験者の差も見ておく
「合格率」は受験者数を母数にした数字で、申込んだ人全員が母数ではない点にも注意しておきたい。令和7年度の学科試験は申込者156,549人に対し受験者139,087人で、申込みをしても当日受けなかった人が1割ほどいる計算になる。技能試験は申込者107,218人に対し受験者99,610人で、欠席率は学科よりやや低い。学科合格後に技能へ進む人の方が「せっかく合格したのだから受けよう」という動機が働きやすいことがうかがえる。
技能試験の合格率が学科より高い理由
学科より技能の合格率の方が高いままなのを意外に感じるかもしれないが、理由は出題の性質にある。学科は7科目から幅広く出題されるため、苦手分野を残したまま受験する人が一定数いる。一方の技能は、後述するとおり出題パターンが事前に絞り込まれているうえ、学科に合格した人(基礎知識がある人)だけが挑む試験なので、受験者全体の実力がそろっている。結果として、技能の方が合格率が安定して高く出る構造になっている。
他の国家資格と比べた難易度の位置づけ
合格率の数字だけを見ても、第二種電気工事士がどのくらいの位置づけにあるのか実感しにくい。同じ試験センターが実施する上位資格の第一種電気工事士、そして出題形式の異なる危険物取扱者乙種4類(一般財団法人消防試験研究センター実施)と並べてみる。
試験の規模も含めて並べると、次のようになる。
| 資格 | 実施団体 | 対象年度 | 受験者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第二種電気工事士(学科) | 電気技術者試験センター | 令和7年度 | 139,087人 | 56.5% |
| 第二種電気工事士(技能) | 電気技術者試験センター | 令和7年度 | 99,610人 | 71.7% |
| 第一種電気工事士(学科) | 電気技術者試験センター | 令和7年度 | 36,154人 | 57.3% |
| 危険物取扱者乙種4類 | 消防試験研究センター | 令和6年度 | 223,846人 | 31.7% |
危険物取扱者乙種4類は受験者数が22万人を超え、電気工事士の学科試験より母集団がひとまわり大きい。受験のハードルが低く、業務上の必要に迫られて対策時間を十分に取れないまま受ける人が紛れ込みやすいことも、合格率の低さにつながっていると考えられる。
第一種電気工事士は令和7年度で学科57.3%・技能58.1%と、第二種の学科(56.5%)とほぼ同水準だ。ただし第一種は出題範囲が第二種より広く、免状の交付には実務経験(または所定の講習)が必要になるなど、合格率が近いからといって難易度まで同じとは言えない制度上の違いがある。
一方、危険物取扱者乙種4類は令和6年度で受験者22万人超に対し合格率31.7%と、電気工事士の学科・技能のどちらよりも低い。乙4は暗記中心の筆記試験のみで技能試験がなく、工具を揃えて手を動かす実技対策は不要だが、受験者層の裾野が広く準備不足のまま受ける人が多いことも合格率を押し下げている一因とされる。単純な数字の比較だけで「電気工事士の方が簡単」と言い切れるものではなく、試験の性質そのものが違う点は押さえておきたい。
技能試験がある資格特有の難しさ
合格率の高さだけを見て「簡単」と判断するのは早計だ。電気工事士の技能試験は、欠陥が1つでもあれば不合格になる基準で運用されており、部分点の概念がない。暗記中心の資格であれば「7割解ければ合格」という積み上げ方式が多いが、電気工事士はどれだけ理解していても、時間内に手を動かして欠陥なく完成させられなければ不合格という一発勝負の性質が強い。工具一式をそろえる初期投資が必要な点も、筆記のみで完結する資格とは異なるハードルになる。
第一種電気工事士とのキャリアの連続性
第二種電気工事士は、一般住宅や小規模な店舗・事務所など、低圧(600V以下)で受電する場所の電気工作物の工事に従事できる資格だ。第一種はこれより対象となる電気工作物の範囲が広がり、必要な知識・技能の量も増える。第二種を取得したあと実務経験を積んで第一種に進むのが一般的なキャリアパスとされており、難易度が段階的に上がる設計になっている点も、位置づけを考えるうえで押さえておきたい。
合格率が比較的高く出る3つの背景
- 技能試験の候補問題が事前に公表されており、対策の対象を絞り込める
- 学科試験は7科目とも出題範囲が明示されており、過去問の類似出題が多い
- 受験者に電気工事店の従業員や工業高校・専門学校の在学者など、実務・学習の下地がある人が一定数含まれる
必要な勉強時間の目安|学科・技能それぞれ
勉強時間は暗記力や手先の器用さで個人差が大きく、「これだけやれば必ず受かる」という共通の数字はない。ただし試験の構成を踏まえると、学科と技能で対策の質がまったく違うことは意識しておきたい。
学科試験は四肢択一方式(CBTまたはマークシート)で、電気に関する基礎理論・配電理論及び配線設計・電気機器や工具・施工方法・検査方法・配線図・保安に関する法令の7科目、試験時間120分、60点以上で合格となる。計算問題と暗記問題が混在するため、過去問を繰り返し解いて出題パターンに慣れる学習が中心になる。
技能試験は40分で、持参した工具と支給される材料を使い、配線図どおりに回路を完成させる。合格基準は「作品に欠陥がないこと」で、点数の積み上げ方式ではない。試験センターは技能試験の候補問題をNo.1〜No.13まで事前に公表しており、当日はこの中から出題される。候補問題を1問ずつ、時間内に欠陥なく仕上げられるようになるまで反復するのが対策の基本だ。
| 区分 | 試験時間 | 合格基準 | 対策の中心 |
|---|---|---|---|
| 学科試験 | 120分 | 60点以上 | 過去問演習で7科目の頻出パターンを固める |
| 技能試験 | 40分 | 作品に欠陥がないこと | 候補問題13問を時間内・欠陥なしで反復練習 |
技能試験で問われる9つの作業
技能試験の出題範囲は、①電線の接続 ②配線工事 ③電気機器及び配線器具の設置 ④電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 ⑤コード及びキャブタイヤケーブルの取付け ⑥接地工事 ⑦電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定 ⑧一般用電気工作物等の検査 ⑨一般用電気工作物等の故障箇所の修理、の9項目と定められている。候補問題13問は、これらの作業を組み合わせて構成されており、13問を一通り練習すれば9項目すべてに触れられる設計になっている。
学習の進め方の目安
学科・技能をあわせて2〜3か月程度の準備期間を見ておくと、直前に慌てずに済む。学科は過去問演習の反復が中心なので、通勤時間などのすき間時間でも進めやすい。技能は候補問題13問を、複線図(配線図を実体配線に変換する下書き)を書く練習、器具の結線など単位作業の練習、時間を計った通し稽古の順で仕上げていくと、40分以内に完成させる感覚がつかみやすい。
独学でも合格できるか|効果的な対策方法
学科試験は市販テキストと過去問だけで独学合格を狙いやすい。出題範囲が7科目と決まっており、年度が変わっても出題傾向が大きく変わりにくいためだ。一方、技能試験は候補問題こそ公表されているものの、実際に工具を使って手を動かす練習をしなければ身につかない。独学で臨む場合は、工具一式と練習用材料を早めに揃え、候補問題を全パターン、複数回仕上げるところまで持っていく必要がある。
独学でつまずきやすい3つの落とし穴
- 工具や練習材料の準備が試験直前になり、練習回数が確保できない
- 複線図(配線図を実体配線に変換する作業)に時間がかかり、時間内に完成しない
- 欠陥の判断基準を自己流で解釈し、本番で失格ラインの施工に気づけない
試験センターは第一種・第二種共通の「欠陥の判断基準」を公式サイトで公表している。独学であっても、この基準に沿って自分の作品を客観的にチェックできれば、練習の精度は大きく上がる。
独学と講座、それぞれに向いている人
学科は独学で十分に対応できる人が多いが、過去問を解いても点数が伸び悩む人や、まとまった勉強時間を確保しにくく学習計画を自分で立てるのが苦手な人は、通信講座や動画教材を使うことも選択肢になる。技能は独学でも合格を目指せるが、複線図の書き方や工具の使い方の勘所は、動画や講座で一度手順を確認してから練習に入ると遠回りを防ぎやすい。逆に、日頃から手先の作業に慣れている人(製造業・建設業出身者など)であれば、候補問題を繰り返す独学練習だけで合格ラインに届きやすい。
独学の場合、テキスト・問題集の購入費に加え、技能試験用の工具一式と、候補問題13問分の練習材料(電線・器具など)を自分でそろえる必要がある。講座を使う場合はこれらがセットになっていることが多く、費用と引き換えに準備の手間を減らせる。どちらを選ぶにしても、技能は「見て覚える」だけでは身につかず、実際に手を動かした時間がそのまま結果に反映される試験だという点は変わらない。
学科と技能で必要な準備がまったく異なるため、「学科は独学、技能だけ講座で工具の使い方を学ぶ」というように、科目ごとに手段を分けて組み合わせる進め方も現実的な選択肢だ。全部を独学で完結させることにこだわらず、自分がつまずきやすい部分だけ外部の力を借りる、という発想で対策を組み立てると、無理なく合格ラインに近づける。
シゴトのホント編集部
合格率だけを見れば、第二種電気工事士は国家資格のなかで極端に狭き門というわけではない。ただし技能試験は「知っている」と「時間内に欠陥なく作れる」の間に距離がある試験だ。学科は独学で十分に狙えるが、技能は工具を使った実践練習の量が結果を左右すると考えておくとよい。資格取得後の働き方や将来性まで含めて判断材料を増やしたい人は、電気工事士はやめとけと言われる理由もあわせて確認しておきたい。
参照ソース
- 第二種電気工事士試験の試験結果と推移 - 一般財団法人電気技術者試験センター — 学科・技能試験の合格率(令和3〜7年度)の一次データ
- 第一種電気工事士試験の試験結果と推移 - 一般財団法人電気技術者試験センター — 第一種電気工事士との合格率比較に使用
- 令和8年度第二種電気工事士試験受験案内(下期) - 一般財団法人電気技術者試験センター — 試験時間・出題科目・合格基準・候補問題(No.1〜13)の一次情報
- 試験実施状況(令和6年4月〜令和7年3月) - 一般財団法人消防試験研究センター — 危険物取扱者乙種4類の合格率比較に使用


