「50代で警備員に応募して、未経験でも採用されるのか」「体力が持つのか、夜勤や立ちっぱなしはどこまでか」「収入はどのくらいで、家計が回るのか」。50代で警備員への転職を考えると、年齢の壁と体力面の不安が先に立ちます。
この記事では、警備員に50代で転職できるかを、警察庁「警備業の概況」の年齢構成と、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の収入データで確かめます。施設・交通誘導・機械警備の号種別に見た50代の向き不向き、体力面の実態、資格で有利になるルート、選ぶべき会社の見分け方まで順に整理します。
警備員のキャリア全般の悩みは警備員のキャリア完全ガイドにまとめています。
警備員に50代で転職できるかを年齢構成で確かめる
結論から言うと、50代で警備員に転職することはできます。警察庁の統計では、2024年12月末の警備員58万7,848人のうち60歳以上が47%、65歳以上が34.3%、70歳以上が20.9%を占めています(2024年・警察庁「令和6年における警備業の概況」)。ほぼ2人に1人が60歳以上の業界で、50代は平均より若い層にあたります。「年齢で落とされるのではないか」という不安は、この業界に関しては統計が否定しています。
業界の半分が60歳以上という構造
警備員の年齢構成が高齢に偏っているのは、定年後の再就職先として警備業が長く機能してきたからです。警備業法は警備員になれない欠格事由を定めていますが、その中に年齢の上限はありません(18歳未満は不可)。健康状態と法定の教育を受けることが条件で、年齢そのものは採用の要件になっていません。
| 年齢層 | 全警備員に占める割合 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 60歳以上 | 47% | ほぼ半数。定年後の再就職層が中心 |
| 65歳以上 | 34.3% | 3人に1人。年金と併用して働く層 |
| 70歳以上 | 20.9% | 5人に1人。短時間・日勤の施設警備が多い |
出典: 警察庁「令和6年における警備業の概況」(2024年12月末時点)
50代が「若手」として扱われる場面
年齢構成が高いことは、50代の応募者にとって2つの意味を持ちます。1つは採用されやすさです。60代・70代が多い現場では、50代は体力面で余裕のある人材として期待されます。夜勤を含むシフト、立哨の長い配置、巡回距離の長い施設など、高齢の警備員には負担が大きい持ち場を任せられる人として評価されます。
もう1つはキャリアの残り時間です。50代で入れば、60歳・65歳の区切りまでに10〜15年あります。この期間は、警備業務検定の資格を取り、隊長や指導教育責任者などの役職に進むのに十分な長さです。60代で入る人には短いこの時間が、50代には残っています。
未経験でも採用される仕組み
警備業法は、警備員として働く前に新任教育を受けることを義務付けています。教育時間は基本教育と業務別教育を合わせて20時間以上で(警視庁「警備員に対する教育時間」)、未経験者はこの教育を受けてから現場に出ます。警備業務の経験者や元警察官は時間が短縮されますが、未経験者向けの枠組みが法律に組み込まれているため、「経験がないから応募できない」という職種ではありません。
入社時の条件は健康状態と身元確認が中心です。警備業法の欠格事由(一定の犯罪歴・薬物やアルコールの中毒など)に該当しないことを確認する書類を提出します。50代で健康診断に大きな問題がなければ、この時点で落ちることは少ないと考えて差し支えありません。
号種別に見る50代の向き不向き
結論として、50代に向いているのは1号の施設警備で、次いで2号の交通誘導、機械警備は会社の体制次第です。警備業法は業務を1号〜4号に区分しており、同じ「警備員」でも仕事の中身と体力の使い方が大きく違います。50代の転職では、この号種の選び方が収入と続けやすさの両方を決めます。
号種ごとの仕事と50代への向き不向き
| 号種 | 主な仕事 | 50代の向き不向き | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1号 施設警備 | オフィス・商業施設・病院などの常駐、出入管理、巡回、モニター監視 | 向いている | 屋内が中心で天候の影響が少ない。座って行う受付・監視の時間がある。夜勤があるが仮眠室が整った現場が多い |
| 2号 交通誘導・雑踏警備 | 工事現場の車両誘導、イベントの人の流れの整理 | 条件付きで向いている | 屋外で立ち続ける。夏の暑さと冬の寒さが体力を奪う。日勤中心で日給制が多く、働く日数を自分で調整しやすい |
| 1号 機械警備 | 警報が鳴った先へ車で駆けつけ、状況を確認する | 会社の体制次第 | 車の運転と深夜の対応が必要。待機時間が長く、拘束時間に対して体を動かす時間は短い |
| 3号 貴重品運搬 | 現金・貴重品の輸送 | 経験と体力を問われる | 責任が重く、重量物を扱う。未経験の50代は採用枠が限られる |
| 4号 身辺警備 | 要人の護衛 | 未経験では困難 | 経験者採用が中心 |
施設警備が50代の主戦場になる理由
施設警備は、50代からの転職者が最も多く入る号種です。屋内が中心で、受付・出入管理・モニター監視・巡回を時間で区切って回すため、立ちっぱなしの時間と座る時間が交互に来ます。病院や大型商業施設では、来館者への案内や落とし物の対応など、前職の接客・事務の経験が活きる場面が多くあります。
夜勤は施設警備でも避けられませんが、24時間勤務(当直)の場合は仮眠時間が組み込まれ、勤務明けの翌日は休みになるのが一般的です。月の出勤日数は10〜12日程度になり、家庭の予定と両立しやすい働き方です。仮眠室の環境と休憩の取り方は会社と現場で差が大きいため、面接時に確認する項目です。
施設警備のきつさの中身(立哨・当直・巡回の負担)は、号種の中でも個別に確かめておく価値があります。
交通誘導を選ぶなら日数と季節で調整する
交通誘導は日給制が多く、働く日数を自分で決めやすい号種です。50代で体力に不安がある場合は、週3〜4日から始めて様子を見る働き方ができます。負担が大きいのは夏の炎天下と冬の早朝で、夏は熱中症の対策(会社の休憩と水分の支給体制)が整っているかが続けられるかどうかを分けます。
交通誘導警備業務検定2級を取ると、国道や高速道路など有資格者の配置が義務付けられた現場に入れるようになり、日給が上がります。50代で交通誘導を選ぶなら、1年以内に2級を取る前提で会社を選びます。
50代警備員の収入の実態
結論として、警備員の平均年収は施設警備で約376万円、交通誘導・雑踏警備で約350万円で、平均年齢はいずれも51歳台です(2023年・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)。平均年齢が50代であるため、50代の収入は「平均そのもの」か、経験を積んでややそれを上回る水準が目安になります。前職の収入からは下がる人が多い一方、年齢で減るという構造にはなっていません。
号種別の収入水準
| 号種 | 平均年収の目安 | 平均年齢 | 給与の形 |
|---|---|---|---|
| 施設警備員 | 約376万円 | 51.6歳 | 月給制が多い。夜勤手当・資格手当が上乗せ |
| 交通誘導・雑踏警備員 | 約350万円 | 51.9歳 | 日給制が多い。日数と有資格現場で変わる |
出典: 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」職種別集計(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額の概算)
収入を左右する3つの要素
警備員の収入は、年齢よりも次の3つで決まります。
1つ目は号種と現場です。同じ施設警備でも、24時間勤務の当直が多い現場は深夜割増と夜勤手当が乗り、日勤のみの現場より年収で数十万円の差が出ます。交通誘導は有資格者の配置が必要な現場の日給が高く設定されています。
2つ目は資格手当です。施設警備業務検定・交通誘導警備業務検定の2級で月数千円〜1万円程度、1級や警備員指導教育責任者でさらに上乗せする会社が多くあります。資格の数がそのまま月給に反映される仕組みは、50代からの転職者にとって数少ない「年齢に関係なく収入を上げる手段」です。
3つ目は役職です。現場の隊長・副隊長になると役職手当が付き、複数現場を管理する管制や営業所の管理職に進めば年収は400万円台後半以上が視野に入ります。50代で入って10年の期間があれば、隊長までは十分に届きます。警備員の年収の全体像は警備員の年収を統計で確かめた記事で扱っています。
前職の収入と比べるときの注意
50代の転職者が最も気にするのは、前職からの収入の落差です。製造業や営業から警備に移ると、年収で100万円以上下がることは珍しくありません。ただし警備の収入は、当直の回数・資格・役職で組み立てられるため、入社時の月給だけで判断すると低く見積もりすぎます。面接では「資格手当の額」「当直1回あたりの手当」「隊長になった場合の役職手当」の3点を数字で確認し、3年後の年収を試算します。
体力面の実態と資格で有利になるルート
結論として、体力面で50代に問われるのは筋力や瞬発力ではなく、長時間の立哨と夜勤に耐える持久力と生活リズムの管理です。そして資格は年齢の不利を消す最も確実な手段で、警備業務検定2級を1年以内に取ることが50代の標準ルートです。
体力面で実際に問われること
50代の警備員が体力面で直面する3つの負担
- 立哨の長さ — 施設の出入口や工事現場で1〜2時間立ち続ける。腰と膝への負担が蓄積する
- 夜勤・当直 — 24時間勤務の当直は仮眠があっても睡眠が浅く、明けの日の回復に時間がかかる
- 屋外の気温 — 交通誘導の夏の炎天下と冬の早朝。熱中症と低体温のリスクは年齢とともに上がる
これらは60代・70代の警備員も同じ条件で働いている負担です。50代は業界の中では体力に余裕がある側で、「50代だから体力的に無理」という状況は、少なくとも施設警備では起きにくいと言えます。負担を減らす鍵は、号種の選択(施設か交通か)と、当直の回数を会社と調整することの2つです。
体力面で先に整えておくこと
体力面の不安を減らすために、応募前に整えておけることが3つあります。1つ目は膝と腰の状態の確認です。立哨と巡回は歩数と立ち時間が多く、すでに膝や腰に痛みがある人は、施設警備でも受付・監視の比率が高い現場を選ぶ必要があります。健康診断や整形外科での確認を先に済ませておくと、面接で希望する持ち場を具体的に伝えられます。
2つ目は睡眠の管理です。当直のある施設警備では、仮眠を含めて24時間拘束されます。仮眠で眠れる体質かどうかは個人差が大きく、眠れない人は明けの日に回復しきれず、次の当直に疲れを持ち越します。日勤のみの現場から始めて、当直は体が慣れてから増やす順番が安全です。
3つ目は暑さと寒さへの備えです。交通誘導を選ぶ場合、夏の熱中症対策は会社の体制(休憩の間隔・水分と塩分の支給・空調服の貸与)と自分の準備の両方が必要です。会社の体制は面接で聞き、自分の準備は入社前の夏に屋外で過ごす時間を増やして体を慣らしておきます。
資格で有利になる3段階のルート
警備の資格は警備業法に基づく国家資格で、年齢制限がありません。50代から取り始めても、60歳までに指導教育責任者まで到達する人がいます。
50代からの資格ルート(3段階)
- 第1段階(入社〜1年): 施設警備業務検定2級 または 交通誘導警備業務検定2級 — 特別講習(2〜3日)を受けて修了考査に合格する。有資格者の配置が必要な現場に入れ、資格手当が付く
- 第2段階(1〜3年): 同じ種別の1級、または別種別の2級 — 1級は2級取得後1年以上の実務経験が必要。現場責任者の候補になる
- 第3段階(3〜5年): 警備員指導教育責任者 — 会社が営業所ごとに選任を義務付けられている資格。教育担当・管理職への道が開く
2級の特別講習は、警備員として働きながら会社の推薦で受けるのが一般的で、費用を会社が負担するところも多くあります。面接で「資格取得の費用補助と講習中の給与の扱い」を確認しておくと、入社後のルートが見えます。警備の資格の全体像は次の記事で整理しています。
READ ALSO — 警備員
警備員の資格は?資格なしで働ける仕組みと検定制度を解説
前職の経験が活きる場面
50代の転職者には、前職の経験があります。製造業の経験者は安全管理の感覚が巡回や設備点検で活き、営業や接客の経験者は施設の受付・来館者対応で評価されます。管理職の経験があれば、隊長や管制への登用が早まります。面接では「警備は未経験ですが、前職の○○の経験をこの場面で使えます」と具体的に言えるように準備します。
選ぶべき警備会社の見分け方
結論として、50代が選ぶべき会社は「施設警備の比率が高い」「資格取得を会社が支援する」「当直の回数と仮眠環境を面接で説明できる」の3点を満たす会社です。警備会社は全国に約1万社あり(警察庁)、規模も待遇も幅があります。求人票の時給や月給だけで選ぶと、体力面と収入面の両方で後悔しやすくなります。
面接で確認する5項目
50代が警備会社を選ぶときの確認項目
- 号種の比率 — 施設警備と交通誘導のどちらが主力か。50代は施設中心の会社が続けやすい
- 当直の回数と仮眠環境 — 月に何回の24時間勤務があるか。仮眠室はベッドか、休憩は何時間か
- 資格取得の支援 — 検定の特別講習費用を会社が負担するか。講習日は勤務扱いか
- 社会保険と月給制 — 施設警備で月給制・社会保険完備か。日給制なら日数の保証があるか
- 60歳以降の扱い — 定年の年齢、再雇用の条件、契約社員への切り替え時の給与
60歳以降の扱いを先に確認する理由
50代で入る場合、入社から数年で60歳の区切りが来ます。警備会社の多くは定年を60歳か65歳に置き、その後は再雇用や契約社員への切り替えで働き続ける形を取っています。切り替えの際に月給から日給や時給に変わる会社では、収入が2〜3割下がることがあります。50代の転職では、この切り替えの条件を面接の時点で確認しておかないと、資格と役職で積み上げた収入が60歳で一度リセットされる形になります。
確認する項目は「定年の年齢」「再雇用後の給与の形(月給のままか日給・時給か)」「役職手当と資格手当が再雇用後も続くか」の3つです。警備員の年齢構成を見れば分かるとおり、60歳以降も働き続けることが前提の業界なので、この質問を嫌がる会社は少なく、答えの具体性で会社の体制が分かります。
会社の規模による違い
大手の警備会社は施設警備の契約が多く、月給制・社会保険・資格取得支援が整っている一方、配属先の希望が通りにくい面があります。地域の中小の警備会社は交通誘導の比率が高く、日給制が中心ですが、現場と勤務日数の融通が利きやすく、隊長への登用も早い傾向があります。50代で施設警備を軸に安定して働きたいなら大手か施設に強い中堅、日数を調整しながら働きたいなら地域の会社、という選び方が目安です。どちらの場合も、法定の新任教育と資格取得支援の体制は共通して確認します。
「即日勤務可」「面接なし」を強調する求人は、新任教育を十分に行わない会社である可能性があります。法定の20時間以上の教育が組まれているか、教育中の給与が出るかは、応募前に確認します。
求人票の読み方をAIで補う
複数の求人票を比べるとき、AIに条件を整理させると見落としが減ります。次のプロンプトは実際に使えます。
私は52歳、警備員は未経験です。以下の求人票の情報をもとに、
「50代が長く続けやすい会社かどうか」の観点で比較表を作ってください。
評価軸は、号種(施設か交通か)、当直の回数と仮眠環境、資格取得支援、
社会保険と給与の形、60歳以降の扱い、の5つです。
求人票に書かれていない項目は「面接で確認」と記載してください。
求人A: 施設警備・月給22万円・当直月8回・資格手当あり・社保完備
求人B: 交通誘導・日給1万1,000円・日勤のみ・2級取得で日給1,000円増
求人C: 施設警備・月給20万円・日勤のみ・定年60歳(再雇用制度あり)
出力は判断の材料であって結論ではありません。「面接で確認」と出た項目を実際に面接で聞き、その答えで会社を選びます。
まとめ
- 警備員の47%が60歳以上で(2024年末・警察庁)、50代は業界の中で若い層です。警備業法に年齢の上限はなく、未経験者は新任教育20時間以上を受けてから現場に出ます
- 50代に向いているのは施設警備、次いで日数を調整できる交通誘導です。機械警備は会社の体制次第で、3号・4号は未経験の50代には枠が限られます
- 平均年収は施設警備約376万円・交通誘導約350万円で、平均年齢は51歳台です(2023年・厚生労働省)。収入は年齢ではなく当直・資格・役職で決まります
- 体力面で問われるのは持久力と生活リズムの管理です。警備業務検定2級を1年以内に取ることが、50代の標準ルートです
- 会社は「施設中心」「資格支援あり」「当直と仮眠環境を説明できる」の3点で選びます
シゴトのホント編集部
警備は「50代で入れるか」を心配する職種ではなく、「50代で入って何を積み上げるか」を考える職種です。資格と役職で収入を組み立てられる期間が10年以上残っている点が、60代で入る人との最大の違いです。
参照ソース
- 令和6年における警備業の概況 — 警察庁 — 警備員数58万7,848人と年齢構成(60歳以上47%・65歳以上34.3%・70歳以上20.9%)、警備業者数の根拠
- 令和6年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別 きまって支給する現金給与額・年間賞与 — e-Stat(厚生労働省) — 施設警備員・交通誘導・雑踏警備員の平均年収と平均年齢の根拠(本文は令和5年集計の値を使用)
- 警備員に対する教育時間 — 警視庁 — 新任教育20時間以上と経験者の短縮の根拠
- 警備員検定にはどのような資格がありますか? — 東京都警備業協会 — 警備業務検定の種別と1級・2級の位置づけの根拠


