経理は女性が多い仕事というイメージがあり、男性が転職しても採用されるのか、年収やキャリアがどうなるのか気になる方もいるでしょう。本記事では、男性が経理へ転職する際の採用実態や年収の男女差、キャリアの広げ方を公的統計をもとに解説します。
経理職全般の仕事内容や転職市場の全体像は経理の転職ガイドでも確認できます。
経理は男性でも転職できる?採用の実態と「女性の仕事」という誤解
この記事の結論
- 経理職に限定した男女別の採用比率を示す公的統計は確認できませんが、選考では性別より簿記や決算実務の経験が重視されると考えられます。
- 全産業の男女別所定内給与は令和7年の賃金構造基本統計調査で男性37万3,400円、女性28万5,900円です。
- 経理でのキャリアアップは、経理課長・管理部門の責任者・経営企画など管理系のポストにつながりやすい分野です。
- 未経験から経理を目指す場合は、年代が上がるほど簿記の資格や周辺実務の経験が採用の判断材料になります。
経理職は女性の比率が高い職種としてイメージされがちですが、これは特定の統計に基づくというよりも、一般事務や経理補助のパート求人に女性の応募が多い傾向から広まった印象だと考えられます。実際の採用選考では、応募者の性別そのものよりも、簿記の知識や決算業務の経験、Excelなどの実務スキルが重視される場面が多いといえます。書類選考や面接でも、これまで担当してきた業務範囲や決算の関与度合いが確認されることが一般的です。
経理職種に限定した男女別の採用人数や比率を示す公的統計は、本記事執筆時点で確認できていません。そのため「経理は男性が不利」と断定できる根拠はなく、実務経験や資格の有無のほうが選考結果を左右しやすいという見方が妥当です。応募先が中小企業か大企業かによっても、求められる経験の中身は変わってきます。また、面接官が実際に注目するのは、これまでの仕訳や決算業務でどこまで一人称で担当してきたかという点であり、性別に関する質問がそもそも選考基準に含まれること自体が少ないと考えられます。
企業の規模によって経理体制や求められる役割は異なるため、転職先を検討する際は自社の状況と照らし合わせておくとよいでしょう。中小企業では一人または少人数で経理全般を担うため、経営者との距離が近く、資金繰りや税務まで任されることがあります。大企業では決算・税務・連結・管理会計などが分業されており、特定分野を深める働き方になりやすい傾向があります。男性が転職先を選ぶ際も、この違いを理解しておくと、面接で「なぜ自社を志望するのか」を具体的に語りやすくなります。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 仕訳から資金繰りまで経理全般を一人で担うことが多い | 決算・税務・連結など業務が分業されやすい |
| 裁量 | 経営者と近く裁量が大きい | 部署内での役割分担が明確 |
| 必要スキル | 幅広い実務知識、簿記2級以上が目安 | 特定分野の専門性、簿記1級や税理士科目合格が評価されやすい |
| 昇進スピード | ポストが少なく人によって差が出やすい | 管理部門のポストが多く段階的に昇進しやすい |
どちらの環境にも一長一短があるため、幅広い経験を積みたいのか、専門分野を深めたいのかによって、選ぶべき転職先の規模は変わってきます。中小企業で経理全般を経験してから大企業の特定分野へ転職する、あるいはその逆のキャリアを歩む男性も少なくありません。どちらのルートを選ぶにしても、応募時点で「自分がどこまでの業務を一人で回せるか」を棚卸ししておくことが、書類選考や面接での説得力につながります。
面接では、これまでの経理業務でどの範囲まで自分の判断で処理してきたかを具体的に説明できるかどうかが評価を分けやすい点です。例えば「仕訳入力のみ」ではなく「月次の締め作業を担当し、上長の確認を経て報告書を作成していた」といった説明ができると、実務レベルの把握がしやすくなります。男性・女性を問わず、こうした業務範囲の具体性は書類選考の通過率にも影響しやすいと考えられます。加えて、応募先が求めている経理体制(一人経理か分業体制か)を事前に調べておくと、面接で語る経験の切り出し方も的確になります。
男性の経理の年収はいくら?男女別の統計とキャリアで差が出る理由
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和7年)によると、全産業の所定内給与額は男性が37万3,400円、女性が28万5,900円となっています。これは経理職に限定した数値ではなく全産業の平均であるため、そのまま経理職の男女差として扱うことはできません。ただし、勤続年数や役職者比率が男女で異なることが、全産業でみた給与差の一因になっていると考えられます。
経理職種に絞った男女別の公的統計は、本記事執筆時点でe-Statから最新の内訳を確認できませんでした。そのため経理職における男女の年収差を具体的な数値で断定することは避けておきたいところです。実際には性別よりも、主任・課長といった役職の有無、勤続年数、そして勤務先の企業規模のほうが、経理の年収を左右する主な要因になっていると理解しておくとよいでしょう。
同じ経理職であっても、決算業務の範囲が広い会社や上場企業では、専門性の高さに応じて給与水準が上がりやすい傾向があります。逆に、経理業務の一部だけを担当する立場であれば、年収の伸びは緩やかになりがちです。男性が経理で年収を伸ばしたい場合、まずは決算業務にどこまで関与できるかを転職先選びの基準にすると、結果的に給与水準の高いポジションにたどり着きやすくなります。加えて、単体決算だけでなく連結決算や税務申告書の作成に関与した経験は、転職市場でも評価されやすい実務経験のひとつです。
全産業の所定内給与(月額)
男女差は全産業で月8.8万円。経理職だけの差ではない
年収を左右する要素を整理すると、次のようになります。
| 要素 | 年収への影響 |
|---|---|
| 役職(主任・課長など) | 役職が上がるほど基本給・手当が増えやすい |
| 勤続年数 | 長いほど昇給の積み重ねで年収が上がりやすい |
| 企業規模 | 大企業ほど給与水準・賞与の幅が大きい傾向 |
| 担当業務の範囲 | 決算・連結・税務など専門性が高いほど評価されやすい |
ボーナスや各種手当も年収に影響する要素です。決算期に合わせた決算手当を設けている企業や、簿記1級・税理士資格の保有者に資格手当を支給する企業もあります。転職先を検討する際は、基本給だけでなく、こうした手当の有無や賞与の実績も確認しておくと、年収の見通しを立てやすくなります。また、同じ役職・勤続年数であっても、業種によって年収水準に差が出ることがあるため、志望業界の給与相場もあわせて調べておくとよいでしょう。
経理の年収相場や年代・企業規模別の詳しい目安については、経理の年収相場で統計をもとに解説していますので、あわせて確認してみてください。
男性が経理でキャリアを広げるには?経理課長・管理部・経営企画への道
男性が経理でキャリアを広げる代表的な方向性として、経理課長やマネージャーへの昇進、管理部門(人事・総務・法務を含む管理系部門)の責任者へのステップアップ、そして経営企画への異動が挙げられます。特に上場準備中の企業や成長企業では、管理体制の強化にともなって経理経験者が管理部長や経営企画のポジションに登用されるケースがあります。経理課長のポジションは、実務の正確さだけでなく部下の育成やスケジュール管理も求められる役割です。
資格面では、日商簿記2級以上に加えて、税理士試験の科目合格やUSCPA(米国公認会計士)、社会保険労務士などの周辺資格を持っていると、経理から管理部門全体を統括するキャリアへの転換がしやすくなると考えられます。特に連結決算や税効果会計、IFRS対応の経験は、企業規模の大きい会社への転職で評価されやすい実務経験です。こうした専門知識は、決算早期化やグループ会社管理が課題になっている企業ほど需要が高まります。
経理担当者としての専門性を深めて経理部長やCFO候補を目指す道と、経理経験を土台に経営企画や事業企画へ横展開する道の両方があり、どちらを選ぶかは本人の志向によって変わります。数字の裏付けをもとに経営判断に関わりたい人であれば経営企画、専門性を追求したい人であれば経理・財務の専門職を深める道が向いているといえるでしょう。
キャリアを広げる段階で意識しておきたいのは、担当業務の「範囲」を意図的に広げていくことです。仕訳入力だけを担当している状態から、月次決算の一部を任される、年次決算に関与する、税務申告書の作成に携わるというように、段階を踏んで業務範囲を広げていくことで、経理課長や管理部門の責任者に必要な経験を計画的に積み上げることができます。転職のタイミングで、現職では経験できない業務範囲を担当できる会社を選ぶことも、キャリアを広げる有効な手段のひとつです。
また、管理会計や予算管理、内部統制(J-SOX対応)といった分野の経験も、管理部門の責任者を目指すうえで評価されやすい実務です。特に上場企業やIPOを目指す企業では、内部統制の整備・運用に関わった経験があると、経理課長やそれ以上のポジションへの転職で有利に働きやすいと考えられます。こうした経験は転職後すぐに求められることも多いため、現職のうちに関与できる機会があれば積極的に手を挙げておくと、将来の選択肢を広げやすくなります。
男性が未経験から経理に転職するなら?年代別の進め方と先に取る資格
厚生労働省の「雇用動向調査」(令和6年)の年齢階級別の転職入職の動きを見ると、20代・30代の転職入職者数が40代・50代と比べて多い傾向がある一方、40代以降も一定数の転職入職が発生していることが確認できます。年代が上がるほど、未経験分野への転職においては即戦力性がより重視される傾向があると考えられます。
20代であれば、簿記の資格取得を進めながらポテンシャル採用の枠で経理職を目指しやすい年代といえます。30代になると、簿記2級程度の知識に加えて、前職での数字を扱う業務経験(請求書処理・予実管理・在庫管理など)があると評価されやすくなります。40代以降では、マネジメント経験や特定分野(資金繰り、原価計算、税務対応など)の実務経験の有無が、採用の分かれ目になりやすいと考えられます。
未経験から経理を目指すときに整理しておきたい点
- これまでの職務で数字やお金を扱った経験があるか
- 簿記の学習をいつまでにどの級まで進めるか
- 応募する企業の規模で求められる業務範囲がどこまで広いか
年代によって評価されるポイントは異なりますが、共通していえるのは「経理未経験でも、数字を扱ってきた経験をどう言語化するか」が選考の鍵になるという点です。営業事務での請求書発行、店舗運営での売上管理、製造業での原価集計といった業務も、経理への転職では実務経験としてアピールできる材料になります。男性の場合、前職が営業や技術職など経理と離れた分野であっても、数字の管理に関わった実績があれば、面接で具体的に説明できるよう整理しておくとよいでしょう。
転職エージェントを利用する場合は、経理・管理部門に特化したエージェントであれば、未経験からの転職でも書類の書き方や面接で強調すべき経験を具体的にアドバイスしてもらえることがあります。年代や経験に応じてどの求人が現実的かを客観的に判断してもらう手段として活用するとよいでしょう。複数のエージェントに登録し、紹介される求人の傾向を比較してみるのも、自分の市場価値を把握するうえで参考になります。
未経験から経理へ転職する具体的なルートや、年代別に有利になりやすい資格の組み合わせについては、経理への未経験転職ガイドで詳しく解説しています。年代ごとの現実的な進め方を知っておくと、応募先の選び方も具体的にイメージしやすくなるはずです。
経理に向いている男性の特徴は?後悔しやすいパターンも確認
経理に向いている人の特徴として、数字のミスを見逃さない正確性、毎月・毎年繰り返される定型業務を淡々とこなせる継続力、そして決算などの締め切りを守る責任感が挙げられます。これらは性別によって差が出るものではなく、経理という業務内容そのものに求められる資質だといえます。日々の伝票処理を丁寧に積み重ねられる人ほど、月次・年次の決算業務でも安定した成果を出しやすい傾向があります。
一方で、日々変化のある仕事や、社外の相手と積極的に交渉する仕事を求めている人にとっては、経理の定型的な業務内容が物足りなく感じられ、後悔につながる場合があります。経理は社内の他部門とのやり取りが中心になりやすく、営業のように外部との折衝を主な業務にしたい人には向かない可能性があります。また、細部への配慮を怠ると、伝票や仕訳のミスが後の決算作業全体に影響することもあるため、慎重さに欠ける働き方をしてきた人は、経理の業務スタイルに適応するまで時間がかかることもあります。
経理への転職で後悔しやすい人の傾向
- 日々変化のある業務や裁量の大きさを求めている
- 社外との交渉・折衝を仕事の中心にしたい
- 細部の正確さより全体のスピード感を優先したい
男性の場合、前職で営業や企画職のように成果が数字で可視化されやすい仕事をしてきた人ほど、経理の「地道な積み重ねが評価につながる」働き方にギャップを感じることがあります。反対に、製造業の生産管理や品質管理など、正確性やルーティン業務に慣れている人は、経理の業務スタイルに比較的なじみやすいといえるでしょう。転職を検討する段階で、自分がどちらのタイプに近いかを振り返っておくと、入社後のミスマッチを減らしやすくなります。
経理の仕事は一件ごとの成果がすぐに評価されにくく、月次・年次の締め作業を通じて長期的に信頼を積み上げていく側面があります。短期間で成果を出したいと考える人にはもどかしさを感じる場面もあるかもしれませんが、逆に言えば、地道な積み重ねを評価してもらいたい人にとっては相性の良い仕事だといえます。転職を考える際は、これまでの働き方でどちらのスタイルに満足感を得てきたかを振り返っておくと、入社後の適応もスムーズになりやすいでしょう。
シゴトのホント編集部
経理職の採用では、性別よりも簿記の知識や実務経験の積み重ねが評価されやすい傾向があります。焦って転職活動を進めるより、まずは自分の実務経験を棚卸しし、不足している知識を資格取得などで補ってから選考に臨むことをおすすめします。
まとめ|経理は男性でも実務経験と資格次第で転職・キャリアアップができる
経理職の採用において、性別そのものが合否を分けるという公的な裏付けは確認できませんでした。むしろ、簿記の知識や決算業務の経験、担当してきた業務範囲のほうが、選考結果や年収に大きく影響すると考えられます。年収についても、全産業でみた男女差の統計はあるものの、経理職に限定した数値ではないため、性別よりも役職や勤続年数、企業規模の違いとして理解しておくのが妥当です。
キャリアを広げたい場合は、経理課長や管理部門の責任者、経営企画といった方向性があり、簿記2級以上や税理士試験の科目合格などの資格が後押しになります。未経験から経理を目指す場合は、年代が上がるほど即戦力性が重視されやすいため、これまでの数字を扱った経験を整理し、必要な資格取得の計画を立てておくことが転職活動をスムーズに進める鍵になるでしょう。


