電気工事士は底辺と言われることがありますが、評価は職場や資格の段階によって大きく分かれます。言われる理由、賃金統計から見える実態、資格による評価の違い、避けたい職場の見分け方を整理します。
電気工事士の仕事全体については、電気工事士の転職情報まとめも参考にしてください。
電気工事士は「底辺」と言われるのはなぜ?理由を4つに分けて確かめる
この記事の結論
- 電気工事士が「底辺」と言われるのは、見習い期間の待遇や体力面の負荷、現場の上下関係といった印象によるもので、資格そのものの評価ではありません。
- 電気工事士法により、一般用電気工作物の工事は無資格者には認められていない資格独占業務です。
- 賃金構造基本統計調査では、電気工事従事者の賃金は全産業平均と大きく変わらない水準で推移しているとされています。
- 評価が分かれるのは、第二種のみか、第一種や電験三種まで資格を伸ばしているかという段階の違いです。
- 底辺と感じやすい職場には、社会保険や資格取得支援の有無など、求人票で確認できる共通の特徴があります。
「電気工事士は底辺」という言葉がインターネット上で見られる背景には、主に4つの要因が重なっていると考えられます。ひとつは見習い期間の待遇です。資格を持たないうちは補助作業が中心になりやすく、賃金や任される仕事の範囲が限られるため、入ったばかりの時期ほど低く見られやすい構造があります。もうひとつは体力を使う現場仕事であることへの印象です。高所作業や配管・配線の重い材料を扱う場面があることが、デスクワーク中心の職種と比較して低く見られがちな一因になっていると考えられます。
さらに、建設業特有の職人文化や現場の上下関係が、外部から見ると厳しい、あるいは古い体質と映ることも影響していると考えられます。長年の経験がものを言う世界であるため、新人や未経験者が意見を言いにくい雰囲気を感じる場面があるかもしれません。最後に、無資格のうちは単独で行える工事が法律上限られているため、入口の時点では補助的な位置づけになりやすく、「雑用係」に近い印象を持たれやすいという事情もあります。ただし、これらはいずれも見習い期間や特定の職場に強く結びついた印象であり、資格を取得し経験を積んだ電気工事士全体の評価とは分けて考える必要があります。
こうした「底辺」という印象は、電気工事士に限らず、配管工や内装工など体力を使う現場系の職種全般に向けられやすい傾向でもあります。見習いの期間がある仕事に共通する構造であって、電気工事士という資格そのものの評価を直接表しているわけではないという点は意識しておきたいところです。
こうしたイメージを理由に転職や就職を迷っている場合は、底辺かどうかという評価そのものより、自分がどの段階の電気工事士を目指すのかを先に考えておくと、職場選びの基準が明確になりやすくなります。
電気工事士が「底辺」と言われやすい4つの要因
- 見習い期間は補助作業が中心で、賃金や任される仕事の範囲が限られること
- 高所作業や重い材料を扱う場面があり、体力的な負荷への印象が強いこと
- 建設業特有の職人文化や現場の上下関係が、外部から厳しく見えること
- 無資格のうちは単独でできる工事が法律上限られ、入口の印象が低くなりやすいこと
体力面の負荷や現場のきつさについて、より詳しい実態は電気工事士はやめとけと言われる理由で整理していますので、気になる場合はあわせて確認してみてください。
電気工事士の仕事は本当に低く見られるべきものなのか?資格独占の実態
一方で、電気工事士の仕事を一律に低く見るのは、実態と合っていない面があります。電気工事士法では、一般住宅やビルなどの一般用電気工作物の工事について、第二種電気工事士以上の資格を持たない人が行うことを原則として認めていません。これは医師や弁護士と同様に、法律によって業務の範囲が守られている「資格独占業務」のひとつであり、誰でもすぐに代わりが務まる仕事ではないことを示しています。
実際、配線を誤ると火災や感電といった重大な事故につながるおそれがあるため、工事の品質を担保する仕組みとして資格制度が設けられています。資格がなければ従事できない工事があるという点は、電気工事士という仕事の専門性を考える上で欠かせない視点です。経済産業省や電気技術者試験センターが試験制度を運用しているのも、この業務の専門性と安全上の重要性を反映したものと考えられます。
資格独占業務という位置づけは、学科試験と技能試験の両方に合格しなければ免状を得られない仕組みとも結びついています。知識だけでなく実際に配線作業を行う技能も問われるため、試験に合格した時点で一定水準の技術が備わっていることが制度的に確認されているとも言えます。この仕組み自体が、見習い期間の印象だけで仕事全体を評価することの一面性を示しているとも考えられます。実際、無資格者が一般用電気工作物の工事を行うことは電気工事士法で禁止されており、違反した場合は罰則の対象となる場合もあります。
つまり、見習い期間の待遇や現場のイメージだけで職業全体を「底辺」と括るのは、資格制度が担っている役割を踏まえると一面的な見方だと言えるでしょう。無資格では担えない工事が存在するという事実そのものが、電気工事士という資格が一定の専門性を社会的に認められていることの裏づけになっていると考えられます。評価が分かれるとすれば、それは資格や経験の段階による違いであって、職業そのものの価値ではないという見方が成り立ちます。
電気工事士の給料は低い?賃金統計で見る資格・経験別の位置
給料の面で底辺かどうかを判断する手がかりとして、厚生労働省の賃金構造基本統計調査が参考になります。この調査では電気工事従事者の所定内給与が職種別に公表されており、全産業の平均と比較しても大きく見劣りする水準ではないという見方があります。もっとも、賃金は勤務先の規模や公共工事の比率、資格の段階によって差が出やすく、同じ「電気工事士」という肩書きであっても、置かれている状況によって実際の収入は大きく異なります。
この調査は企業規模や経験年数、学歴といった区分でもデータを公表しているため、電気工事士という職種名だけで賃金水準を一括りに判断するのではなく、どの区分に自分が当てはまるかを意識して読むことが実態に近い理解につながります。企業規模が大きく公共工事の受注比率が高い会社ほど、賃金や待遇が安定しやすい傾向があるとされており、同じ資格を持っていても勤務先によって評価のされ方が変わってくる理由のひとつになっています。また、同じ所定内給与であっても、残業の有無や休日出勤の手当、資格手当の支給基準によって実際の手取りは変わってきます。求人票を比較する際は、基本給だけでなく、こうした諸手当の条件も合わせて確認しておくと、入社後の収入イメージがつかみやすくなります。
見習い期間と資格取得後では任される工事の範囲も変わってくるため、収入の比較をする際には、どの段階の電気工事士を前提にしているかを意識する必要があります。例えば第二種のみを持つ人と、第一種まで取得して自家用電気工作物の工事まで対応できる人とでは、任される仕事の難易度も評価のされ方も変わってくると考えられます。資格別・経験別の具体的な年収の違いについては、第一種電気工事士の年収で詳しく解説していますので、自分の状況に近いケースを確認してみてください。
ここで押さえておきたいのは、電気工事士の賃金が統計上「底辺」と言えるほど低い水準で固定されているわけではなく、資格と経験によって位置づけが変わる点です。賃金だけを切り出して底辺かどうかを判断するのではなく、どの段階にいるかという視点を持つことが、実態に近い理解につながります。
底辺と感じやすい職場の特徴は?求人票で見分けるポイント
求人票の確認
避けたい職場は求人票の記載で見分ける
-
1.社会保険の加入が明記されているか
記載が無ければ面接で確認する
-
2.資格取得支援の制度があるか
受験料や講習の補助、勉強時間の配慮
-
3.見習い期間と昇給の基準が明確か
期間・待遇が曖昧な場合は具体的に質問する
電気工事士という仕事そのものより、特定の職場の労働環境が「底辺」という印象を強めているケースも少なくないと考えられます。例えば、社会保険への加入状況が求人票に明記されていない、資格取得の支援制度がない、見習い期間の待遇や昇給の基準がはっきりしない、といった職場では、スキルを身につけても評価や収入につながりにくい傾向があります。また、公共工事よりも小規模な改修工事や住宅リフォームが中心で、受注が不安定な会社では、繁忙期と閑散期の差が大きく、収入や働き方の見通しを立てにくいこともあります。
こうした職場かどうかは、入社前の求人票や面接でいくつかの項目を確認することで、ある程度見分けられます。下の表は、避けたい職場の傾向と、選びたい職場の傾向を確認項目ごとに整理したものです。
| 確認項目 | 避けたい職場の傾向 | 選びたい職場の傾向 |
|---|---|---|
| 社会保険 | 記載がない、一人親方扱いが多い | 雇用保険・社会保険の加入が明記されている |
| 資格取得支援 | 支援制度の記載がない | 受験費用の補助や資格手当の制度がある |
| 工事の種類 | 小規模な改修中心で受注が不安定 | 公共工事や法人向け工事の比率が一定ある |
| 見習い期間 | 期間や待遇の基準が不明確 | 期間の目安と昇給の条件が明示されている |
| 残業・休日 | 残業時間や休日の規定が記載されていない | 残業の目安や休日数が具体的に示されている |
求人票にこれらの情報が十分に書かれていない場合は、面接の場で具体的に質問してみることをおすすめします。回答が曖昧なまま採用を進めようとする職場であれば、資格を取得しても評価されにくい環境である可能性を一度考えておいたほうがよいでしょう。逆に、これらの項目がきちんと説明できる職場は、長く働くほど資格と経験が評価につながりやすい環境だと見てよいと考えられます。表の項目を一度に全て確認できなくても、求人票と面接の両方で少しずつ情報を集めていくことで、職場の傾向はある程度つかめるはずです。こうした確認は、入社後に「思っていた働き方と違う」というミスマッチを防ぐためにも役立ちます。特に見習い期間を底辺だと感じやすい人ほど、事前に基準を確認しておく価値があります。
資格と経験でどう評価が変わる?第二種・第一種・電験三種のキャリアの道
資格と評価の段階
評価は資格を積むごとに変わっていく
-
第二種
一般用電気工作物の工事
住宅や小規模店舗。未経験からの入口
-
第一種
自家用電気工作物(500kW未満)の工事
ビルや工場まで任される範囲が広がる
-
電験三種
保安管理の立場へ進む道
現場作業中心の評価から変わる
電気工事士としての評価は、取得している資格の段階によって明確に変わっていきます。まず第二種電気工事士は、600V以下で受電する一般住宅や小規模な店舗など一般用電気工作物の工事を行える資格で、未経験から電気工事の世界に入る際の最初のステップになります。学科試験と技能試験の両方に合格する必要があり、試験の区分や実施状況は電気技術者試験センターが公表している最新の情報で確認できます。
次に第一種電気工事士を取得すると、ビルや工場など最大電力500kW未満の自家用電気工作物の工事まで対応できるようになり、任される工事の規模や難易度が上がる分、評価や賃金面での位置づけも変わってくるとされています。さらに経験を積んで電験三種(第三種電気主任技術者)まで取得すると、電気工事そのものに加えて電気設備の保安管理を担う立場に進む道も開けてきます。この段階になると、現場作業の比重が下がり、管理・監督の役割を担うことが増えるため、「底辺」という印象からはかけ離れた評価を受けやすくなると考えられます。
資格段階と評価の変化の目安
- 第二種電気工事士:一般用電気工作物の工事が中心。未経験からの入口となる資格
- 第一種電気工事士:自家用電気工作物まで対応可能になり、任される工事の規模が広がる
- 電験三種(第三種電気主任技術者):保安管理の立場に進む道が開け、現場作業中心の評価から変わっていく
第二種から第一種、電験三種へと段階的に資格を積み重ねていくことが、評価そのものを変えていくための現実的な道筋だと考えられます。資格を取得するたびに任される仕事の範囲と責任が広がっていくため、見習い期間の印象だけで将来の評価まで決まるわけではありません。資格ごとに試験の実施団体や制度の根拠法令は共通しているため、どの段階を目指すにしても、まずは自分が今どの資格を持っているかを整理した上で、次に必要な試験や勉強の計画を立てることが近道になります。
資格を取得してから次の段階に挑戦するまでの期間は人によって差がありますが、学科試験と技能試験、あるいは電験三種の試験範囲を見据えて早めに学習を始めておくと、段階を上げるタイミングを逃しにくくなります。
電気工事士に向いている人・転職を考え直したほうがいい人の線引き
ここまで見てきた内容を踏まえると、電気工事士という仕事に向いているかどうかは、底辺かどうかという評価軸よりも、資格取得や経験の積み重ねに前向きになれるかどうかで考えた方が実態に近いと言えます。体を動かす作業に抵抗がなく、第二種から第一種、さらに上位の資格へと段階的にステップアップしていくことに意欲を持てる人であれば、評価や待遇は時間とともに変わっていく可能性が高いでしょう。資格を取るたびに任される工事の範囲が広がっていくため、努力が評価に反映されやすい仕事だと捉えることもできます。
一方で、資格取得そのものに興味がなく、見習い期間の待遇や職場の労働環境にも改善が見られないまま働き続けている場合は、今の職場や仕事の進め方自体を見直した方がよいかもしれません。社会保険や資格取得支援がない、昇給の基準が不明確といった職場で何年も同じ待遇が続いているなら、底辺だと感じる原因は仕事そのものではなく、その職場の構造にある可能性を一度検討してみることをおすすめします。資格を取っても評価されない職場に留まり続けるよりは、転職によって環境を変えるという選択肢も検討の余地があると考えられます。
どちらに当てはまるか判断に迷う場合は、今の職場で資格取得支援や昇給の仕組みがどの程度明確になっているかを一度棚卸ししてみるとよいでしょう。制度が整っているのに自分が活用していないだけなのか、制度そのものが整っていないのかを区別できれば、転職すべきか今の職場で資格取得を進めるべきかの判断がしやすくなります。厚生労働省の雇用動向調査では、建設業を含む各産業の離職率や転職後の賃金変動が公表されています。転職を検討する際は、電気工事士という仕事そのものだけでなく、業界全体の転職動向も参考にしながら判断するとよいでしょう。
まとめ|電気工事士は底辺ではなく「資格で評価が変わる」仕事
電気工事士が底辺と言われる背景には、見習い期間の待遇や体力的な負荷、現場文化への印象があります。しかし電気工事士法に基づく資格独占業務であることや、賃金統計上も全産業平均と大きく変わらない水準にあるという見方を踏まえると、仕事そのものを一律に底辺と評価するのは一面的だと考えられます。評価が実際に分かれるのは、第二種のみで止まっているか、第一種や電験三種まで資格を伸ばしているかという段階の違いです。
底辺だと感じている場合は、仕事そのものより、社会保険や資格取得支援が整っているかなど、今の職場の条件を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。資格と経験を積み重ねる道筋が見えてくれば、底辺という印象は実態と合わなくなっていくはずです。底辺かどうかという評価だけにとらわれず、資格取得支援や昇給の仕組みが整っているかという具体的な基準で職場を見極めることが、後悔のない選択につながります。
シゴトのホント編集部
電気工事士の評価は、見習い期間だけで決まるものではありません。資格と経験を積み重ねた先の働き方まで含めて、職場選びを考えてみてください。
参照ソース
- 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 — 電気工事従事者の所定内給与データ(職種別、令和6年調査)
- 一般財団法人 電気技術者試験センター — 第一種・第二種電気工事士試験の区分と実施状況
- 厚生労働省 雇用動向調査 — 産業別の離職率・転職者の賃金変動(令和6年)
- 経済産業省 — 電気工事士法に基づく資格制度の所管省庁


