「事務職に転職したいけれど、男性は少ないと聞く」「応募しても書類で落とされるのでは」。求人票に「女性活躍中」と書かれているのを見て、応募をためらっている男性は少なくないはずです。実際に男性の事務職はどれくらいいるのか、どの事務なら採用されやすいのか、入ったあとにキャリアは広がるのか。
この記事では、国勢調査と労働力調査で確認できる事務従事者の男女比を起点に、男性が採用されやすい事務の種類の比較、面接で聞かれること、事務からのキャリアの広げ方までを整理します。
事務職全般の悩みは事務職完全ガイドにまとめています。
男性の事務職は本当に少ないのか、統計で確かめる
結論から言うと、事務職は「女性が多い」職種ではありますが、「男性がほとんどいない」職種ではありません。2020年の国勢調査(総務省統計局)では、事務従事者は男性就業者の15.0%、女性就業者の28.3%を占めており、男性にとっても就業者の7人に1人が事務職という、ごく一般的な職業です。就業者全体に占める事務従事者の割合は21.0%で、職業大分類のなかで最大のグループです。
事務従事者のおよそ4割は男性という概算
国勢調査の男女別就業者数に上の構成比を掛けて概算すると、事務従事者のうち男性はおよそ4割、女性はおよそ6割という比率になります。「事務職は女性の職場」というイメージは、一般事務や受付など職場で目に入りやすい担当が女性に偏っていることから来ています。一方で総務・購買・物流事務・営業事務のように、社外や現場との折衝を伴う事務には男性も多く、統計上の男女比はイメージほど極端ではありません。
労働市場の全体像も押さえておく
労働力調査(2025年平均・総務省統計局)では、就業者数は6,828万人と前年から47万人増え、完全失業率は2.5%で前年と同率でした。女性の就業者が44万人増えたのに対し男性は3万人増にとどまっており、女性の就業が伸びる局面が続いています。事務職の求人はこの女性の就業拡大の受け皿になってきた面があり、男性が事務職の求人で「少数派」になるのはこの構造によるものです。ただし採用側が男性を避けているわけではなく、応募者の母数に女性が多い結果として現れています。
統計で分かる男性事務職の位置づけ
- 事務従事者は男性就業者の15.0%(2020年・国勢調査)で、男性にとっても一般的な職業
- 事務従事者に占める男性は概算でおよそ4割。女性偏重ではあるが少数派とまでは言えない
- 女性の就業者が増える局面が続き、事務職の応募者の母数は女性に多い(2025年・労働力調査)
男性が採用されやすい事務の種類を比較する
男性が事務職を狙うなら、一般事務ではなく「折衝や調整が多い事務」を選ぶのが現実的です。一般事務は応募が集まりやすく、未経験の男性が書類選考で差をつけにくい一方、営業事務・総務・購買・物流事務は、社外の取引先や現場との調整が日常的にあり、前職の営業・製造・物流の経験を評価に変えやすい領域です。
事務の種類別の比較表
| 事務の種類 | 主な業務 | 男性の採用実績 | 活きる前職 | 求められる適性 |
|---|---|---|---|---|
| 一般事務 | 書類作成・電話対応・データ入力 | 少なめ。応募者が多く競争率が高い | 特に問わない | 正確さ・マルチタスク |
| 営業事務 | 見積・受発注・納期調整・営業の後方支援 | 多い。営業経験者の受け皿になりやすい | 営業・販売・接客 | 顧客対応・数字への強さ |
| 総務 | 備品・施設管理・社内規程・株主総会準備 | 多い。管理部門の中核として男女問わず採用 | 現場管理・営業・警備 | 調整力・幅広い業務理解 |
| 購買・調達 | 資材の発注・価格交渉・仕入先管理 | 多い。製造業では男性比率が高め | 製造・営業・技術 | 交渉力・原価意識 |
| 物流事務 | 配車手配・入出荷管理・在庫管理 | 多い。倉庫やドライバー経験者を歓迎 | 倉庫・ドライバー・製造 | 現場理解・段取り力 |
| 人事労務 | 給与計算・社会保険手続き・採用事務 | 中程度。専門性が高く年齢・性別を問わない | 総務・営業・店舗管理 | 法令知識・守秘意識 |
営業事務と総務は「営業経験者の受け皿」になりやすい
比較表のなかで男性の採用実績が特に集まりやすいのは営業事務と総務です。営業事務は見積・受発注・納期調整を通じて営業担当と取引先の間に立つため、営業を経験した人が「相手が何を急いでいるか」を先読みできる強みを発揮しやすい仕事です。総務は備品・施設・車両の管理から社内行事の運営、官公庁への届出まで幅広く、社外との折衝や物理的な作業が日常的にあります。どちらも「事務職は座り仕事」というイメージより動きが多く、前職で外回りをしていた人ほどなじみやすい領域です。
業界で見ると製造業・物流業・建設業が狙い目
同じ「総務」「営業事務」でも、業界によって男性比率は変わります。製造業・物流業・建設業は現場の従業員に男性が多く、現場との調整役を担う事務職にも男性が配置されやすい傾向があります。逆に医療・美容・アパレルなど利用者や従業員に女性が多い業界では、事務職も女性中心になりがちです。前職の業界の事務職に応募するのは、業界知識と男女比の両面で有利に働きます。
「男性歓迎」の求人票の読み方
求人票に「男性活躍中」「力仕事あり」と書いてある事務職は、備品搬入・倉庫内作業・車での外出などが含まれる場合が多く、男性の採用実績があるサインです。反対に「女性活躍中」とだけ書かれた一般事務は、応募者に女性が多く競争が厳しい傾向にあります。ただし求人票の文言だけで判断せず、面接で「事務職の男女比」と「配属予定の部署の人数構成」を聞くのが確実です。
未経験の男性が最初に狙う求人の条件
未経験の男性が事務職の内定を取りやすいのは、次の条件が重なる求人です。第一に、従業員数が数十〜数百人規模で、総務・営業事務を兼任する「管理部門の人手が足りない」会社。第二に、現場との調整や外出(銀行・官公庁・取引先への訪問)が業務に含まれている求人。第三に、前職と同じ業界の求人です。この3つが揃うと、応募者のなかで「現場を知っていて、外回りも嫌がらない事務」という立ち位置が作れ、女性応募者の多い一般事務とは別の土俵で評価されます。
反対に、大企業の一般事務・受付・秘書のように応募者が集中し、業務が定型で経験差が出にくい求人は、未経験の男性にとって最も通過しにくい枠です。最初の1社目は「通りやすい枠で実績を作る」と割り切り、2〜3年後に条件のよい事務職へ移るほうが、結果として早く希望の職場に着きます。
事務職に向いている男性の特徴と、向いていない人の傾向
事務職に向いている男性は、正確さと期限を守る作業を苦にせず、部門間の調整役を引き受けられる人です。逆に、成果が数字で見えないと物足りない人や、単独で完結する仕事を好む人は、事務の評価軸と合いにくい傾向があります。
向いている人の4つの特徴
- 書類や数字のミスを減らす「仕組み」を作るのが好き。ダブルチェックの手順やExcelの関数化を自分から進められる
- 営業・製造・物流など前職の現場を知っていて、現場が何に困るかを事務の側から先回りできる
- 電話や来客の対応で、相手の用件を短く整理して担当者につなげる
- 評価が「トラブルが起きなかったこと」で決まる仕事を、地味だと感じずに続けられる
向き不向きを確かめるセルフチェック
応募前に、次の項目に自分が当てはまるかを確認してみてください。当てはまる数が多いほど、事務職の評価軸と相性がよいと言えます。
- 前職で、書類や数字のミスを見つけて直した経験を具体的に語れる
- 同じ手順を毎日繰り返す業務でも、効率化の余地を探しながら続けられる
- 電話や来客の対応を面倒だと感じず、相手の用件を短く整理して伝えられる
- 締め切りが重なったとき、優先順位を自分で決めて周囲に共有できる
- 「自分の成果が数字で見えない」状態でも、役に立っている実感を持てる
向いていない人の傾向
事務職は成果が減点方式で見られやすく、営業のように数字で評価が跳ねることはあまりありません。「頑張った分だけ給与に反映されたい」「自分の裁量で動きたい」という志向が強い人は、事務そのものよりも営業企画や購買など、事務のスキルを使いながら成果が見える職種のほうが合います。向き不向きの詳しい診断は、次の記事で扱っています。
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年収の見通しは職種と業界で決まる
賃金構造基本統計調査(2024年・厚生労働省)では、正社員・正職員の所定内給与は男女計で月34万8,600円、男性を100としたときの女性の賃金は75.8でした。事務職の給与水準は業界と担当業務で大きく変わり、一般事務よりも総務・人事労務・購買のような専門性の高い事務のほうが賃金テーブルは上に伸びやすい構造です。男性だから事務職の給与が下がる、という統計上の根拠はなく、担当業務の専門性と会社の賃金テーブルで決まります。
男性が事務職の面接で聞かれることと、AIでの準備の仕方
男性が事務職の面接で聞かれるのは、「なぜ事務なのか」「なぜ営業や現場ではないのか」「長く続けられるか」の3点に集約されます。採用側は「稼げないと分かって辞めるのでは」「女性の多い職場になじめるか」を確かめたいので、事務を選ぶ理由を「楽そうだから」ではなく、前職の経験と事務の仕事内容を結びつけて答える必要があります。
志望動機は「事務でしかできないこと」で組み立てる
志望動機の骨格は「前職で困ったこと→事務側の段取りで解決できると気づいた→この会社の事務でそれを担いたい」という3段構成にすると、消去法ではなく能動的な選択として伝わります。「営業がきつかったから」「土日休みがほしいから」が本音でも、それだけを話すと「事務も合わなければ辞める」と受け取られます。前職の経験が事務の業務内容にどうつながるかを1つの具体例で示せれば、未経験でも説得力が出ます。
よく聞かれる質問と答え方の型
| 質問 | 採用側の意図 | 答え方の型 |
|---|---|---|
| なぜ事務職を志望するのですか | 消去法で選んでいないか | 前職で「事務側の段取りで現場が助かった経験」を根拠にする |
| 営業(現場)に戻りたくなりませんか | 定着するか | 事務の評価軸(ミスの少なさ・段取り)に自分の強みがあると具体例で示す |
| 女性の多い職場ですが問題ありませんか | 人間関係のリスク | 前職での男女混成チームの経験を事実として述べる |
| PCスキルはどの程度ですか | 即戦力度 | Excelの関数・ピボット、使ったシステム名を具体的に挙げる |
| 給与は下がりますが大丈夫ですか | 待遇不満で辞めないか | 事前に相場を調べたうえで、家計と照らして納得している旨を伝える |
想定質問をAIで練習するプロンプト
面接練習は生成AIに面接官役をさせると、自分の答えの弱点を客観視できます。以下は事務職の面接練習用のプロンプトです。前職の情報を自分の経歴に置き換えて使ってください。
あなたは製造業の総務・営業事務職の採用面接官です。
応募者は32歳男性、前職は法人営業5年、事務職は未経験です。
以下の順で面接を進めてください。
1. 「なぜ営業ではなく事務なのか」を深掘りする質問を3つ、1つずつ順番に出す
2. 私の回答ごとに「採用側が不安に感じる点」と「改善した回答例」を120字以内で返す
3. 最後に「定着しそうか」を5段階で評価し、理由を述べる
私の最初の回答: 「営業で見積や納期調整を自分で行ううちに、
現場と営業をつなぐ事務の段取りに面白さを感じたためです」
AIの回答は面接官の一例にすぎず、実際の面接官の関心とはずれる場合があります。返ってきた改善例をそのまま暗記するのではなく、自分の経験で語れる部分だけを残して使ってください。未経験からの応募書類の作り方は次の記事で詳しく解説しています。
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事務からキャリアを広げる3つのルート
男性が事務職から先のキャリアを考えるとき、「事務の中で担当を広げる」「事務の経験を専門職に移す」「管理部門の責任者を目指す」の3つのルートがあります。どれも入口は同じ事務職ですが、2〜3年目にどの資格と実績を積むかで分かれます。
ルート1: 事務の中で担当を広げる
総務から人事労務・経理へ、営業事務から営業企画・販売管理へと、隣接する事務に担当を広げていく道です。社会保険や給与計算、簿記2級のような資格を取ると担当を任されやすくなり、給与テーブルも専門事務の水準に上がります。中小企業では総務・人事・経理を1人で見る「管理部門のなんでも屋」が重宝され、男性が管理部門の責任者として長く働く例が多い領域です。
ルート2: 事務の経験を専門職に移す
物流事務から配車・倉庫管理、購買事務から調達バイヤー、営業事務から営業企画やインサイドセールスへ移る道です。事務で身につけた業務理解と数字の扱いを、成果が見えやすい職種に持ち込むため、「事務は評価が地味」と感じる人に向いています。前職が営業・製造・物流であれば、事務経験を挟むことで現場と管理の両方を知る人材になり、市場価値は上がります。
派遣・契約から正社員に切り替える道もある
未経験の男性が最初から正社員の事務職に入るのが難しい場合、派遣や契約社員で事務の実務経験を1〜2年積んでから正社員に切り替える方法があります。労働力調査(詳細集計・2025年平均・総務省統計局)では非正規の職員・従業員は2,128万人で、男性はそのうち678万人と、男性の非正規雇用も珍しくはありません。派遣で総務や営業事務の実務を経験しておくと、正社員の求人に応募するときに「事務未経験」の壁がなくなり、通過率が上がります。ただし派遣期間が長引くと年齢との兼ね合いで正社員転換が難しくなるため、2年以内に正社員求人へ応募すると期限を決めておくのが現実的です。
ルート3: 管理部門の責任者を目指す
総務・人事・経理をまとめる管理部門の課長や部長を目指す道です。人数の少ない中小企業では30代後半で管理部門の責任者になる例もあり、株主総会の運営・労務トラブル対応・決算の取りまとめなど、経営に近い業務を担います。労務管理やコンプライアンスの知識が求められ、社会保険労務士や衛生管理者の資格が評価されます。
事務職からキャリアを広げるために2〜3年目までに揃えたいもの
- 資格: 簿記2級・社会保険の実務知識・衛生管理者・貿易実務検定(物流・購買なら)
- 実績: 業務改善の具体例(処理時間を何割減らしたか、ミスをどう減らしたか)
- 経験: 社外との折衝(取引先・官公庁・社労士や税理士とのやりとり)
男性事務職の将来性はAIとの分業で決まる
事務職の定型業務は、生成AIやRPAによる自動化の対象になりやすい領域です。データ入力・書類の転記・定型メールの作成は今後さらに自動化が進み、残るのは「例外処理の判断」「部門間の調整」「社外との折衝」といった、人と人の間に立つ仕事です。男性が事務職で長く働くうえでは、AIツールを自分の業務に組み込んで処理時間を減らし、空いた時間を調整・折衝・改善に振り向けられるかが、5年後の評価を分けます。
自分の業務のどこをAIに任せられるかは、次のプロンプトで棚卸しできます。
私は製造業の営業事務です。1日の業務は次のとおりです。
・受注データの基幹システムへの入力(約2時間)
・納期の問い合わせへのメール返信(約1時間)
・見積書の作成と営業への確認(約1.5時間)
・電話対応と来客対応(約1時間)
それぞれについて「生成AIやRPAで自動化しやすい度合い」を3段階で評価し、
自動化できる業務については具体的な手順の案を、
人が残すべき業務については「なぜ人が必要か」を1行で書いてください。
まとめ
男性の事務職は「少数派」ではあるものの、統計で見れば事務従事者は男性就業者の15.0%を占める一般的な職業であり、事務従事者に占める男性はおよそ4割と概算できます(2020年・国勢調査)。採用されやすいのは一般事務よりも、営業事務・総務・購買・物流事務のように折衝と調整が多い事務で、製造業・物流業・建設業では特に男性の採用実績が集まりやすい傾向があります。
面接では「なぜ事務なのか」「定着するか」を前職の経験と結びつけて答えること、入社後は資格と業務改善の実績を2〜3年目までに揃えることが、事務の中で担当を広げる道にも、専門職に移る道にもつながります。
シゴトのホント編集部
「男性は事務に向かない」という言説は、統計を見るかぎり根拠がありません。ただし一般事務の書類選考が厳しいのは事実なので、自分の前職と地続きの事務職から入るのが遠回りに見えて近道です。営業事務や物流事務で実績を作ってから、総務・人事へ広げるルートを検討してみてください。
参照ソース
- 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計 結果の概要(総務省統計局) — 事務従事者が男性就業者の15.0%、女性就業者の28.3%、就業者全体の21.0%を占めるという構成比の根拠
- 労働力調査(基本集計)2025年平均結果の要約(総務省統計局) — 就業者数6,828万人、男女別の増減、完全失業率2.5%の根拠
- 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況(厚生労働省) — 正社員・正職員の所定内給与34万8,600円、男女間賃金格差75.8の根拠


