「事務職はなくなるのでは」と感じている方へ。本記事は、一般事務・営業事務・経理事務など種類ごとに、減っている業務と残りやすい業務を切り分け、自分の担当がどちら側かを見分ける視点を紹介します。総論は事務職ハブにあります。
この記事の結論
- 事務職という職種全体が一括で消えるのではなく、事務の種類・担当業務ごとに入れ替わりが進むと考えられます。
- 減りやすいのは、データ入力・書類の転記・単純な集計・電話の取り次ぎなど、手順が決まっている定型業務です。
- 残りやすいのは、社内外の調整、例外対応、判断を含む確認作業など、状況ごとに対応が変わる業務です。
- 厚生労働省の一般職業紹介状況では、事務的職業の求人・求職の動きを確認できます(出典は記事末尾)。
- 今から身につけておきたいのは、定型処理の自動化後にも残る調整力と、複数業務を横断して進める力です。
事務職はなくなるのか?結論は「消える」より「業務の中身が入れ替わる」
「事務職はなくなるのか」という問いに対しては、職種そのものが一括で消えるというより、担当する業務の中身が入れ替わっていくと考えるのが実態に近いといえます。企業が業務システムやクラウドサービスを導入する目的は、人を減らすことそのものではなく、手順が決まった作業をソフトウェアに任せ、人には判断や調整が必要な部分を残すことにあります。そのため、事務職という大きな括りで「ある」か「ない」かを考えるよりも、自分が普段担当している業務の一つひとつが、定型的な手順の繰り返しなのか、状況に応じた判断を含むのかを分けて見ていく方が、将来の見通しを立てやすくなります。
たとえば、紙の書類をシステムに転記する作業や、決まった項目を集計して表にまとめる作業は、手順さえ決まっていれば自動化の対象になりやすい業務です。一方で、取引先や社内の他部署から来る問い合わせに応じて条件を調整したり、例外的なケースの処理方針を決めたりする業務は、状況ごとに判断が変わるため、自動化の対象になりにくいと考えられます。事務職がなくなるかどうかを考えるときは、この「定型か、非定型か」という軸で自分の業務を分けてみることが出発点になります。
この見分け方を自分の仕事に当てはめるときは、今担当している業務を一つずつ書き出し、それぞれに「マニュアル通りに進められるか」「過去の判断を参考に例外対応をしているか」という問いを当ててみると分かりやすくなります。マニュアル通りに進む業務の割合が高いほど、将来的にシステムへ置き換わる可能性が高く、例外対応や調整の割合が高いほど、担当として残り続ける可能性が高いと考えられます。この区別は、次の章で見る事務の種類別の傾向よりも、個人の担当範囲によって差が出やすい点に注意してください。
また、同じ業務でも、会社の規模によってシステム化の進み方は異なります。大企業では専用システムの導入が進みやすく定型業務がまとまって自動化されやすい一方、中小企業では人手による対応が残りやすい傾向があると考えられます。この考え方は、転職先を選ぶときにも役立ちます。同じ「事務職」という募集であっても、企業によって定型業務と非定型業務の配分は大きく異なるため、求人票の文面だけでなく、入社後に任される業務の広がり方まで含めて確認することが欠かせません。どのような視点で求人票を読めばよいかは、本記事の後半でも取り上げます。
事務の種類別に見る、減りやすい業務と残りやすい業務
事務職には、一般事務・営業事務・経理事務・医療事務・人事総務事務など、担当する業務の範囲によっていくつかの種類があります。どの種類の事務であっても、入力や転記のような定型業務の比重が高い担当は減りやすく、調整や確認、例外対応の比重が高い担当は残りやすいという傾向があると考えられます。種類ごとの違いを大まかに整理すると、次のようになります。
| 事務の種類 | 減りやすい業務の例 | 残りやすい業務の例 |
|---|---|---|
| 一般事務 | 書類のファイリング・データ入力・郵便物の仕分け | 来客対応、部署間の連絡調整 |
| 営業事務 | 見積書・請求書の定型作成、受発注データの入力 | 顧客ごとの条件調整、トラブル時の対応 |
| 経理事務 | 仕訳の入力、請求書の照合、定型的な集計 | 決算時の判断業務、税務・監査対応 |
| 医療事務 | レセプトの定型入力、会計の計算 | 患者対応、保険請求の例外処理 |
| 人事総務事務 | 勤怠データの集計、定型的な書類作成 | 社員からの相談対応、労務トラブルの調整 |
事務の仕事の見分け方
なくなるかは職種名ではなく、業務の定型度で決まる
-
減りやすい
データ入力・書類の転記・単純な集計
手順が決まっていてシステムに移しやすい
-
入れ替わる
見積書・請求書の作成、勤怠の集計
ツールが下ごしらえし、人が確認する形へ
-
残りやすい
社内外の調整・例外対応・判断を含む確認
状況ごとに対応が変わる業務
この表はあくまで大まかな傾向であり、同じ「経理事務」でも、担当する会社の規模や使っているシステムによって、実際の業務の内訳は変わります。自分の担当がどちら側に近いかを見るには、次の章で触れる求人統計よりも、まず今の業務を棚卸しして定型業務と非定型業務の比率を確認することが近道になります。
たとえば営業事務では、受発注データの入力や見積書の定型作成はシステム化が進みやすい一方、顧客ごとに異なる納期調整や、クレーム発生時の社内外への連絡は、個別の状況判断が必要なため残りやすい業務です。経理事務でも、仕訳の入力や請求書の照合といった繰り返し作業はシステムに移管されやすいものの、決算期の判断業務や税務調査への対応は、経験に基づく判断が求められるため、簡単には置き換えにくいと考えられます。自分の担当がどちらの性質に近いかを把握することが、種類名だけで将来を判断するよりも確実な方法です。
医療事務では、レセプトの入力や会計計算のように定型化しやすい業務が多い一方、患者からの問い合わせ対応や、保険適用の判断が難しいケースの確認は、担当者の経験に頼る部分が大きく残ります。人事総務事務でも、勤怠データの集計は自動化が進みやすいものの、社員からの個別相談や、労務トラブルが起きたときの調整は、人による対応が欠かせない業務として残りやすいと考えられます。
事務職の求人は実際に減っているのか(公的統計で確かめる)
事務職がなくなるかどうかを印象だけで判断せず、公的な統計で裏付けを確認しておくことも大切です。厚生労働省が公表している一般職業紹介状況では、ハローワークを通じた職業別の新規求人数や有効求人倍率を確認できます。事務的職業は、他の職業分類と比べて求職者数に対する求人数の比率が低めで推移してきたという見方があり、これは事務の仕事を希望する人が多い一方で、企業側が新たに増やす求人の数が相対的に少ないことを示していると考えられます。
一方で、求人数が少ないことと、既存の事務職の仕事そのものがすぐになくなることは、同じ意味ではありません。企業が新規採用を絞っていても、既存の社員が担当している業務がそのまま社内に残っているケースは多くあります。雇用動向調査などで入職・離職の動きを合わせて見ると、事務的職業でも一定数の入職と離職が続いていることが分かり、事務職という職種そのものが急に消えているわけではないことがうかがえます。最新の数値は厚生労働省の公表ページで確認することをおすすめします。
なお、求人サイトやハローワークで『事務』と検索したときに表示される件数だけを見て判断すると、実態を見誤ることがあります。求人数は景気や企業の採用方針によって年ごとに変動するため、単年の数字だけでなく、厚生労働省が公表する複数年分のデータを見比べ、長期的な傾向として求人が増えているか減っているかを確認することが大切です。あわせて、同じ『事務』という分類の中でも、経理や医療事務のように専門性が加わる種類は、一般事務と異なる動きを示すことがある点も踏まえておくとよいでしょう。
なお、AIの普及によって事務職がどの程度の割合で代替されるかといった推計を見かけることがありますが、算出方法や前提条件によって数値の幅が大きく、確定した統計として扱うのは難しいのが実情です。本記事では、確認できる公的統計の範囲にとどめ、不確かな代替確率の数値は取り上げないようにしています。
自分の事務の仕事は大丈夫?なくなりにくい人の見分け方
自分が担当している事務の仕事が今後も残りやすいかどうかを見分けるには、業務内容を思い出しながら、次のような視点でチェックしてみることが参考になります。
担当業務の見直しで注意したいサイン
- 一日の作業のほとんどが、決まった項目をシステムに入力するだけで完了している
- マニュアルを見れば誰でも同じ結果になる作業が中心で、判断を求められる場面がほとんどない
- 社内外の人とやり取りする機会が少なく、確認や調整の電話・メールがほとんど発生しない
反対に、取引先や他部署との調整が業務の中心にある、イレギュラーな問い合わせへの対応を任されている、複数の業務を横断して進行管理をしているといった担当は、定型化しにくい部分を多く含むため、なくなりにくい側に近いと考えられます。自分の業務がどちらに近いかは、1週間分の作業内容を書き出してみると見えやすくなります。
たとえば、見積書の内容をそのままシステムに入力するだけの業務が中心であれば、将来的に担当の範囲が縮小する可能性があります。一方で、入力後の数字をチェックして取引先に確認の連絡を入れる、イレギュラーな注文に対応する手順を考えるといった業務まで任されている場合は、調整力が求められる担当として残りやすいといえます。
このチェックは、転職を考えるタイミングだけでなく、年に一度程度、自分の業務内容を振り返るときにも役立ちます。担当業務が徐々にシステム対応や自動化の範囲に入ってきている場合は、早いうちに他部署との調整業務や、プロジェクト単位の進行管理など、非定型の業務を増やす交渉をしておくと、担当の幅を広げやすくなります。見分けた結果、定型業務の比重が高いと感じた場合は、現在の職場で非定型の業務を増やしてもらえるよう相談する方法と、転職によって担当範囲が広い求人を探す方法の両方が考えられます。どちらが現実的かは、今の会社の方針や自分のキャリアの方向性によって変わります。
なくなる前提で、事務職が今から身につけておくと強いことは何か
事務の定型業務が徐々にシステムに置き換わっていく前提で考えると、今から身につけておくと役立つのは、特定のソフトの操作そのものよりも、業務全体を見渡して調整する力だといえます。たとえば、複数の部署から来る依頼の優先順位を自分で判断して整理する力や、システムが出した結果が正しいかどうかを確認し、おかしい場合に原因を追える力は、定型業務が減った後も必要とされ続けると考えられます。
また、紙や個別のExcelファイルで管理していた情報を、社内の共有システムに合わせてまとめ直すような、既存業務のやり方を見直す役割を担えると、評価されやすくなります。具体的な操作スキルの到達目安については、事務職に必要なパソコンスキルの記事で詳しく整理しているので、合わせて確認してみてください。資格の有無よりも、こうした業務の組み合わせをどこまで任されているかが、事務職としての強みになっていくと考えられます。
具体的には、紙の請求書を電子化するプロジェクトで入力ルールの整備を担当したり、複数システム間でデータが食い違ったときの原因調査を任されたりした経験は、定型処理の自動化が進んだ後でも評価されやすい実績になります。日々の業務の中で、単純作業だけでなく、こうした改善や調整に関わる機会があれば、積極的に手を挙げておくとよいでしょう。こうした力は、資格講座よりも、日々の業務の中で一つ上の工程に関わる機会を増やすことで身についていきます。上司や先輩に、イレギュラー対応や他部署との調整が発生した業務に同席させてもらえないか相談してみるのも、具体的な一歩になります。
事務職の転職先を選ぶとき、求人票のどこを見れば将来が分かるか
転職先を選ぶ際には、求人票に書かれている業務内容の記載から、その会社が事務の仕事をどう位置づけているかを読み取ることができます。業務内容が「データ入力」「書類作成」としか書かれていない求人は、定型業務の比重が高い可能性があり、一方で「部署間の調整」「取引先対応」「業務改善の提案」などの表現が含まれる求人は、非定型な業務を期待されている可能性が高いと考えられます。
また、求人票に社内システムの名称や、デジタル化の取り組みに関する記載があるかどうかも、確認しておきたい点です。システムの導入が進んでいる会社ほど、入力や集計の作業は効率化され、人には調整や判断の業務が残りやすくなる傾向があると考えられます。事務職全体の需要や将来性についてさらに詳しく知りたい方は、事務職の将来性の記事も参考にしてください。
求人票を読むときは、次のような点を具体的に確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。
- 業務内容の欄に、調整・交渉・進行管理といった言葉が含まれているか
- 使用システムやツールの名称が具体的に記載されているか
- 「将来的に業務範囲を広げる」など、担当の変化に関する記載があるか
反対に、業務内容が抽象的すぎて具体的な作業がイメージできない求人や、「誰でもできる簡単な作業です」とだけ強調されている求人は、定型業務中心の配置になっている可能性があるため、面接の場で担当業務の詳細を質問して確認しておくことをおすすめします。求人票だけでは分かりにくい場合は、面接や企業研究の段階で、どの業務にどの程度システムを使っているか、今後の導入予定があるかを質問してみるのも有効です。大企業ほど基幹システムの整備が進んでいる傾向がありますが、中小企業でもクラウドサービスを導入して定型業務を効率化している会社は増えており、規模だけで判断しきれない点には注意が必要です。
まとめ|事務職がなくなるかは、業務を定型・非定型で切り分けて判断する
事務職がなくなるかどうかは、職種全体で一括に判断するのではなく、一般事務・営業事務・経理事務などの種類ごと、さらには担当している業務ごとに分けて考える必要があります。データ入力や転記、単純な集計のような定型業務は今後も減っていく可能性がありますが、調整や例外対応、判断を含む確認業務は残りやすいと考えられます。公的統計でも、事務的職業の求人動向や入職・離職の状況を確認でき、職種が急になくなっているわけではないことがうかがえます。今の担当業務を棚卸しし、求人票の記載内容を見極めながら、非定型業務の比重を増やしていく視点を持つことが、今後の事務職としてのキャリアを考えるうえで役立つはずです。
シゴトのホント編集部
事務職が「なくなる」かどうかは、職種名だけでは判断できません。今の担当業務が定型か非定型かを棚卸ししてから、次の一歩を考えてみてください。


