「整備士 給料安い」と検索してこのページにたどり着いた方は、資格を持ち専門知識を活かして働いているのに給料がなかなか上がらないことに疑問を感じているのではないでしょうか。本記事では、整備士の給料が安いと言われる工賃や利益構造の背景を解説したうえで、資格取得・転職・独立という給料を上げるための具体的な方法を紹介します。
整備士としてのキャリア全般は整備士のキャリア完全ガイドにまとめています。
整備士の給料が安いと言われる理由|工賃の仕組みを理解する
自動車整備士の給料についてインターネット上で調べると、「整備士 給料安い」というキーワードとともに、仕事の専門性や体力的な負担に見合わない待遇だという声を目にすることが少なくありません。この背景には、整備工場が顧客からいただく整備費用の内訳と、その一部が整備士本人の給与にどのように反映されるかという工賃の仕組みが関係していると考えられます。まずはこの工賃の仕組みから見ていきます。
工賃表と指数制度の仕組み
整備工場やディーラーが車検や修理の際に顧客へ請求する金額の多くは、「指数」と呼ばれる標準作業時間の目安と、工場ごとに定める時間当たりの単価(いわゆるレバーレート)を掛け合わせて算出される工賃という考え方に基づいています。指数は作業の種類ごとに定められた標準時間を数値化したもので、整備士がどれだけ手早く作業を終えても、顧客に請求される金額の基準は変わらない仕組みになっています。このためベテランの整備士が効率よく作業をこなしても、その効率化分がそのまま整備士自身の給与に上乗せされるとは限らないという特徴があります。
工賃収入のうち整備士本人に還元される割合は限られる
顧客が支払う工賃には、整備士の人件費だけでなく、店舗の家賃や光熱費、診断機器やリフトなどの設備投資、部品の在庫管理にかかる費用、フロント業務を担う事務スタッフの人件費など、さまざまな固定費が含まれています。工賃収入全体のうち、実際に作業を担当した整備士個人の給与として還元される割合は、工場の経営方針や固定費の水準によって差があり、必ずしも高い割合が確保されているとは限りません。整備士が受け取る工賃と、整備士本人の給与とは、直接イコールで結びついているわけではないという点が、給料が安いと言われる背景の一つだと考えられます。
工賃の仕組みを知ることが待遇を見極める第一歩になる
工賃の仕組みを理解しておくことは、単に給料が安い理由を知るだけでなく、就職や転職の際に工場の給与体系を見極める手がかりにもなります。求人票に記載された給与や手当の内訳が、工賃収入のうちどの程度を整備士本人に還元する方針なのかを示していることもあるため、数字だけでなく仕組みまで含めて確認する視点を持つことが大切です。
工賃の仕組みは整備士個人の力だけでは変えにくい
工賃の仕組みや、そこから整備士本人への還元がどう決まるかは、個々の整備士が現場で努力するだけでは大きく変えにくい構造だといえます。だからこそ次の章で解説する工場全体の利益構造や、給料を上げるための具体的な行動を合わせて理解しておくことが重要になります。
なぜ整備工場の利益は上がっても給料は安いままなのか|工場の利益構造
整備工場が一定の利益を確保できていたとしても、その利益がそのまま整備士の給料の引き上げにつながるとは限りません。工賃の仕組みに加えて、整備業界全体を取り巻く需要の変化や、事業者の規模といった構造的な要因が、給料が安いと言われる状況を後押ししていると考えられます。まずは業界の需要動向と事業者の規模という2つの角度から見ていきます。
車検・整備需要と工賃競争の関係
自動車の性能や耐久性が向上したことで、車検や定期点検以外の突発的な修理需要は以前より落ち着いてきているという見方があります。加えて、車検を短時間・低価格で行うことをうたう事業者も増えており、価格競争によって工賃単価そのものが上がりにくい状況が生まれやすくなっています。工賃単価が抑えられれば、そこから支払われる整備士の人件費にも当然上限が生まれるため、業界全体として給与水準が上がりにくい構造につながっていると考えられます。
小規模事業者が多い業界構造
自動車整備業は、家族経営に近い小規模な整備工場から大手ディーラー系列まで、事業規模の幅が非常に広い業界だとされています。小規模な整備工場では、経営体力に限りがあるため、設備投資や研修費用を優先せざるを得ず、昇給の原資を十分に確保しにくい場合があります。一方で、規模の大きいディーラーや大手グループであっても、全社的な価格競争の影響を受けるため、必ずしも給与水準が高いとは限らない点には注意が必要です。
利益が再投資や固定費に回りやすい事情
整備工場が利益を確保できた場合でも、その利益は新しい診断機器や特殊工具の導入、店舗の設備更新といった再投資に回されることが少なくありません。EVやハイブリッド車の整備に対応するための設備投資は今後さらに重要性を増すと考えられ、こうした投資が優先される結果、給与への還元が後回しになりやすいという側面もあると考えられます。
工賃を適正化しようとする業界の動き
業界団体や関連事業者のなかには、適正な工賃水準を確保するための情報発信や、整備士の技能を客観的に示す資格制度の周知に取り組む動きもあります。整備士一人ひとりが工賃の仕組みや業界の動向について理解を深めておくことは、勤務先を選ぶ際や、将来的に給与交渉を行う際の判断材料にもなると考えられます。
整備士の給料が安いかどうかは働き方によっても変わる|相場感を掴む
整備士の給料が安いと感じるかどうかは、実は働く場所や雇用形態によっても差があります。同じ整備士という資格を持っていても、ディーラー・民間の整備工場・独立(自営)という働き方の違いによって、給与の決まり方や昇給の仕組みには特徴があると考えられます。以下の表で大まかな傾向を整理しました。
| 働き方 | 給与の決まり方の傾向 | 昇給の仕組み | 働き方の特徴 |
|---|---|---|---|
| ディーラー整備士 | 基本給+資格手当など、給与体系が整っている傾向 | 等級や勤続年数に応じた昇給制度がある場合が多い | 研修制度が整っている一方、メーカー独自の技術習得が求められる |
| 民間整備工場 | 工場ごとの経営方針や工賃単価の影響を受けやすい | 工場の規模や経営者の方針によって差が大きい | 幅広い車種・作業を経験できる工場もある |
| 独立(自営) | 自分で工賃を設定できるため収入の上限が変わる | 昇給という概念ではなく、売上・利益に直接連動する | 経営・集客の知識も必要になり、収入は安定しにくい |
この表はあくまで一般的な傾向を整理したものであり、実際の給与水準は個々の事業者や地域、担当する業務内容によって大きく異なります。就職や転職を考える際は、求人票に記載された給与体系や昇給の仕組みを個別に確認することが欠かせません。
等級による違いも給与に影響する
3級・2級・1級という整備士の等級は、任される整備作業の範囲に直結するため、間接的に給与にも影響してくると考えられます。上位等級を取得することで、車検整備や電子制御装置の診断など、より専門性の高い業務を単独で任されるようになり、それに応じた資格手当や役職手当を用意している職場もあります。ただし、等級と給与の連動のしかたは職場によって差があるため、資格を取得すれば給与が上がると単純には言い切れない点は理解しておく必要があります。
求人情報で給与体系を確認するときのポイント
求人情報を確認する際は、基本給の金額だけでなく、資格手当や残業代の計算方法、昇給・賞与の実績といった項目まであわせて確認することが大切です。給与体系が具体的に示されている求人ほど、入社後の給与の見通しを立てやすく、給料が安いと感じるミスマッチを避けやすくなると考えられます。
整備士の給料が安い状況を変える方法①|上位資格を取得して等級を上げる
ここまで見てきたように、整備士の給料が安いと言われる背景には工賃の仕組みや業界構造といった要因が関係しています。とはいえ、個人の工夫や行動によって状況を変えられる部分もあります。まず検討したいのが、上位資格を取得して任される業務の範囲を広げるという方向性です。
2級・1級整備士を取得するメリット
2級整備士は一般的な整備工場で行われる業務のほとんどを単独で担当できる資格であり、1級整備士はさらに電子制御装置を含む高度な故障診断にも対応できる資格です。上位等級を取得することで任される業務の幅が広がるだけでなく、資格手当や役職といった形で処遇に反映されることもあります。資格の種類や取得ルートについては整備士の資格は3級・2級・1級?種類と取得ルートを解説で詳しく整理しています。
特殊整備士や検査員資格でさらに専門性を高める
タイヤ整備士や車体整備士、電気装置整備士といった特殊整備士の資格を組み合わせて取得したり、一定の実務経験を経て自動車検査員の資格を得たりすることで、整備工場内での役割や専門性をさらに広げられる場合があります。専門性の高い分野に対応できる整備士は、EVやハイブリッド車の普及が進むなかで需要が高まっていく可能性があると考えられます。こうした専門性は、他の整備士との差別化にもつながる要素だと考えられます。
検査員や整備管理者としてキャリアを広げる
一定の実務経験を積んだ整備士は、保安基準への適合を確認する自動車検査員や、事業用自動車を保有する事業者に選任が義務づけられている整備管理者といった役割を担う道も開けてきます。こうした役割は整備作業そのものとは異なる責任を伴いますが、資格や経験を活かしてキャリアの幅を広げる選択肢の一つになると考えられます。
資格取得にかかる時間と費用も踏まえて計画する
上位資格や特殊整備士の資格を取得するには、実務経験を積む期間に加えて、試験対策のための学習時間や講習費用がかかる場合があります。働きながら資格取得を目指す場合は、職場の研修制度や資格取得支援の有無も確認したうえで、無理のない計画を立てることが大切です。
整備士の給料が安い状況を変える方法②|転職や独立という選択肢
資格取得によって任される業務の幅を広げる方法に加えて、勤務先そのものを見直す転職や、将来的な独立という選択肢も、給料が安いと感じる状況を変える手段になり得ます。それぞれの考え方を見ていきます。
給与水準や待遇を比較して転職を検討する
整備士としての実務経験や保有資格は、転職市場において評価される要素の一つです。同じ整備士という資格でも、勤務先によって給与体系や昇給の仕組み、資格手当の有無には差があるため、複数の求人情報を比較しながら、給与体系が明確な職場を選ぶことが給料の改善につながる可能性があります。EVやハイブリッド車の整備に力を入れている工場、あるいは特定のメーカーに特化したディーラーなど、専門性を評価してくれる職場を探すという視点も有効だと考えられます。
独立という選択肢とそのリスク
実務経験と一定の資格を積んだ整備士のなかには、自ら整備工場を開業し独立するという道を選ぶ人もいます。独立すれば自分で工賃を設定できるようになるため、収入の上限が雇用されている場合よりも広がる可能性がありますが、その一方で顧客の獲得や経営管理、設備投資の負担も自分自身で担う必要があり、収入が安定するまでには時間がかかることも珍しくありません。独立は給料が安いという状況を変える有力な選択肢の一つですが、経営者としての知識や準備が欠かせない点には注意が必要です。
転職活動で自分の強みを整理する
転職を検討する際は、これまで担当してきた作業の種類や車種、保有資格を整理し、自分がどの分野で強みを発揮できるかを明確にしておくことが大切です。EVやハイブリッド車の整備経験、特殊整備士の資格、検査員としての実務経験などは、転職市場で評価されやすい要素になり得ると考えられます。
独立に向けて準備しておきたいこと
独立を視野に入れる場合は、整備の技術だけでなく、開業資金の準備や店舗となる物件の確保、顧客を集めるための情報発信など、経営者としての準備を並行して進めていく必要があります。先輩整備士や独立した整備士の話を聞く機会を持ち、実際の収支のイメージを具体的に掴んでおくことも欠かせません。
給料を上げる方法を検討するときに整理しておきたい3点
- 上位資格や特殊整備士の取得で任される業務の幅を広げられるか
- 転職先の給与体系・資格手当・昇給の仕組みが明確になっているか
- 独立を選ぶ場合、経営や集客に関する知識をどう補うか
まとめ|整備士の給料が安い理由を理解し、行動につなげる
整備士の給料が安いと言われる背景には、工賃の仕組みのなかで整備士本人に還元される割合が限られていることや、価格競争・小規模事業者が多い業界構造といった、個人の努力だけでは変えにくい要因が関係しています。まずはこうした構造を理解したうえで、自分の置かれている状況を客観的に捉えることが大切です。
そのうえで、上位資格や特殊整備士の取得によって任される業務の幅を広げる、給与体系が明確な職場へ転職する、あるいは独立して自分で工賃を設定するという3つの方向性を、自分の経験やライフプランに合わせて検討してみてください。整備士という資格そのものは、自動車社会を支える専門職として重要な役割を担っています。給料が安いと感じる状況を放置せず、できることから少しずつ行動に移していくことが、納得できる働き方につながっていくのではないでしょうか。
シゴトのホント編集部
整備士の給料が安いと感じる背景には業界全体の構造が関係している部分も大きいため、一人で抱え込まず、資格取得や転職といった選択肢を含めて情報を集めることをおすすめします。
参照ソース
- 国土交通省 — 自動車整備士制度や車検・整備に関する制度を所管する省庁のトップページ
- 一般社団法人日本自動車整備振興会連合会 — 自動車整備士技能検定や整備業界の情報を発信する業界団体
- 厚生労働省 — 賃金構造基本統計調査など、職業別の賃金に関する統計を公表している省庁のトップページ


