「電気工事士は男性ばかりの仕事で、女性は珍しいのでは」と気になっている方へ。結論から言うと、電気工事士に占める女性の割合は今も少数派ですが、業界の人手不足を背景に受け入れ環境は変わりつつあります。この記事では、公的データで見る女性比率の実態、増えている背景、体力面の不安に対する工具の進化、資格取得のポイントを順に確認します。電気工事士のキャリア全般の情報は電気工事士のキャリア完全ガイドにまとめています。
電気工事士に占める女性の割合|実在する統計データで確認
まず押さえておきたいのは、電気工事士の国家試験を実施する一般財団法人電気技術者試験センターは、合格者数は公表しているものの、性別ごとの内訳は公表していないという点です。そのため「電気工事士全体に占める女性の割合が今何%か」を示す一次統計は、2026年9月時点では見当たりません。検索すると「女性比率◯%」といった具体的な数字を掲げる記事もありますが、出典をたどれない数字は本記事では扱いません。
そこで参考になるのが、経済産業省が2017年(平成29年)にまとめた「電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について」です。この資料は、電気主任技術者・電気工事士の有資格者が将来不足するのではないかという業界団体の懸念を受けて、経済産業省が需給の実態を包括的に調査したもので、業界団体・企業・学校への網羅的なヒアリングをもとに作成されています。この資料では、一般社団法人日本電設工業協会が提供したデータをもとに、電気工事業界の技術職員に占める女性の割合を推定2%としています。同じ資料には、電気関係の学科に在籍する女性の割合として、文部科学省「学校基本統計」による高校(電気関係学科)3%、大学(電気通信工学系)8%という数字も引用されています。
念のため補足すると、電気工事士には工事の範囲によって第一種と第二種があり、第二種は一般住宅などの一般用電気工作物、第一種はそれに加えてビルや工場などの自家用電気工作物の一部まで扱えます。今回引用した2%という数字は、この資格区分を問わず電気工事業界全体の技術職員を対象にした推定値である点も押さえておくとよいでしょう。
この数字が示すのは、働き手に占める女性の割合よりも、学ぶ段階にいる女性の割合の方がわずかに高いという構図です。学校で電気を学ぶ女性の比率が業界の就業者比率を上回っているということは、今後の入職者に占める女性の割合が徐々に底上げされていく可能性を示唆していると読めます。ただし出典はいずれも2017年時点のデータであり、直近の全国統計として更新されたものではない点には注意してください。
参考までに、国土交通省が建設業全体を対象に実施した調査(平成27年)では、建設業の就業者全体に占める女性の割合は13.0%、技能者では4.2%、技術者では4.5%とされています。全体の13.0%には事務系職員も含まれるため高めに出ていますが、現場を持つ技能者・技術者に限れば4%台まで下がります。電気工事業界の2%という数字は、この建設業全体の技能者・技術者平均と比べても低く、電気工事士は建設業の中でもとりわけ女性が少ない職種であることがうかがえます。
女性の電気工事士が増えている背景|業界の人手不足と受け入れ環境の変化
女性の入職が増えている背景として、業界の人手不足と、それに対応する形で進んだ制度・環境の変化の2つが挙げられます。
1つ目は、電気工事士そのものの人材不足見通しです。 前述の経済産業省の2017年資料では、電気工事需要が年率0.6〜1.2%減少する保守的なシナリオでも、第二種電気工事士は2020年頃から入職者不足が顕在化し、2045年には約1万人規模の人材不足が生じる可能性があると推計されています。第一種電気工事士についても、高齢層の大量退職により2020年前後から不足が始まり、2045年時点で約3.3万人の不足になり得るとされました。担い手の絶対数が足りなくなる見通しがある以上、これまで少数派だった女性の入職を後押しする動きが強まるのは自然な流れといえます。
2つ目は、国の制度整備です。 経済産業省が2021年(令和3年)にまとめた「電気保安人材の現状分析と取組の方向性について」によると、電気主任技術者・電気工事士の国家資格の免状について、2022年(令和4年)1月から旧姓の使用が可能になりました。同資料はこの見直しの目的を「電気保安業界における女性活躍を推進するため」と明記しており、背景には2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画で、婚姻による改姓者が不便を感じないよう旧姓の通称使用の拡大に取り組むとされたことがあります。あわせて、外部委託従事者の6割以上が60代以上という高齢化の実態も同資料で示されており、若手・女性を問わない担い手確保が業界共通の課題であることがうかがえます。
3つ目は、業界団体レベルの動きです。 全日本電気工事業工業組合連合会(全日電工連)が運営する情報サイトによると、都道府県の電気工事工業組合における「女性部」の設立は2007年の茨城県を皮切りに始まり、2019年以降に設立が相次ぎ、2026年時点で少なくとも18の都道府県に広がっています。女性部では技術者同士の交流や技術力の向上、働き方の改善に向けた取り組みが行われており、2年に一度開催される電気工事技能競技全国大会には「女性の部」も設けられ、技術力を示す場も整いつつあります。地域の組合単位でこうした受け皿が広がっていることは、個々の企業の取り組みだけでは見えにくい、業界全体としての姿勢の変化といえます。同連合会のサイトでは、小中学校を対象にしたキャリア教育の場に女性技術者が講師役として立つ取り組みも紹介されており、入職を増やす活動は現役世代だけでなく次世代に向けても広がりつつあります。
女性の入職を後押ししている3つの変化
- 人材不足の見通し — 経産省推計で第一種・第二種とも2020年代以降の不足が見込まれる
- 制度整備 — 免状での旧姓使用が2022年1月から可能に(経産省・電気保安業界の女性活躍推進が目的)
- 業界団体の動き — 都道府県組合の「女性部」設立が2019年以降加速、2026年時点で18都道府県以上
なお同じ経済産業省の2017年資料は、女性の入職を進めるうえでの課題として、①電気関係学科への入学者を増やすこと、②業界への入職者を増やすこと、③入職後の定着率を高めること、④現場から離れたあとも続けられるキャリアパスを示すこと、の4点を挙げています。業界へのヒアリングでは、電気工事業の3年後離職率は男女とも20〜40%程度との回答もあり、入職を増やすだけでなく定着させる工夫が同時に必要だという課題感は、今も業界団体の女性部の活動などに引き継がれていると考えられます。
体力面の不安への実態|軽量化された工具・機材の普及等
電気工事士を目指すうえで多くの人が気にするのが体力面です。実際、電気工事の現場には力を使う場面があります。
電気工事の現場で体力を使う場面の例
- 部材の運搬や圧着作業など、力が必要な工程がある
- 高所や狭小スペースでの施工が発生する
- 現場によってはエレベーターの使用が暗黙のルールで禁止されている場合もある
こうした負荷に対して、工具メーカー側の対応も進んでいます。パナソニックが公式に発信するインタビュー記事では、同社公認アンバサダーを務める女性電気工事士が、電動マルチツール「EXENA」を紹介しています。直径19mmまでのケーブルをすばやく切断できるケーブルカッター機能は油圧式より高速で、記事内では「キュウリを切るように」刃が入ると表現されるほど手応えが軽いとされています。そのほかにも壁際での穴あけ・ネジ止めに使うスミ打ちアタッチメントや、複数の工程を1台でこなせる圧着アタッチメント、片手でビットを交換できるワンタッチビットロックなど、非力な作業者でも扱いやすい工夫が特徴として挙げられています。ヘッドが小さくコンパクトな本体形状は、狭小スペースでの施工にも向いているといいます。
同記事では、電気工事業界で高齢化が進み70代以上の職人も現役で活動している実態や、部材運搬・圧着作業のように力が必要な業務が多いこと、現場によってはエレベーターの使用が暗黙のルールで禁止されていることにも触れられています。つまり体力面の不安がまったく無くなったわけではないものの、力任せの作業を前提としない工具・機材が普及し始めていることは、メーカー公式の情報からも確認できます。業界全体の高齢化が進むなかで、こうした工具の進化は女性に限らず担い手全体にとっての負担軽減につながる動きだといえます。
工具メーカー各社が電動化・軽量化に力を入れているのは、電気工事士に限った話ではありません。前述のとおり業界全体で高齢化が進み、力に頼らない作業環境の整備が世代を問わず求められているためです。体力面の不安を理由に検討をためらっている場合は、志望先の企業が最新の電動工具をどの程度導入しているか、現場見学や採用面接の場で確認してみるのも一つの方法です。
女性が電気工事士を目指す際のポイント
電気工事士の資格そのものに、受験資格としての性別・年齢・学歴の条件はありません。一般財団法人電気技術者試験センターの公式サイトでも「実務経験は不要で、誰でも受験可能」と案内されています。第二種電気工事士は誰でも受験でき、免状取得後すぐに一般用電気工作物の工事に従事できます。第一種電気工事士は試験自体に受験資格の制限はないものの、免状の交付には一定期間の実務経験が必要です。ただし試験に合格していれば、電圧600V以下の自家用電気工作物に関する「簡易電気工事」については、産業保安監督部長への申請により認定電気工事従事者として先に従事できる仕組みもあります。学科・技能のいずれの試験も、性別によって出題内容や合格基準が変わることはありません。
| 資格 | 受験資格 | 扱える工事の範囲の目安 |
|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 年齢・学歴不問、誰でも受験可 | 一般住宅や小規模店舗など一般用電気工作物 |
| 第一種電気工事士 | 試験の受験資格に制限なし(免状取得には実務経験3〜5年が必要) | 第二種の範囲に加え、自家用電気工作物(500kW未満)の一部 |
試験制度そのものに男女差はありませんが、実際に目指す際は次の点を確認しておくと判断しやすくなります。
目指す前に確認しておきたい3点
- 一般財団法人電気技術者試験センターの公式サイトには、専業主婦からの転身や他業種からの転職、未経験スタートなど、女性技術者の実例を紹介するページが継続的に掲載されている
- 就職・転職先を選ぶ際は、都道府県の電気工事工業組合に加盟し女性部がある企業かどうかも判断材料になる
- 工具・機材の軽量化は進んでいるが、部材運搬など体力を使う工程が残ることは前提として知っておく
電気技術者試験センターが紹介している実例が専業主婦からの転身・他業種からの転職・未経験スタートと幅広いことからもわかるとおり、電気工事士は年齢やそれまでの経歴を問わず挑戦しやすい資格です。第二種電気工事士は独学で合格を目指す人も多く、まずは学科試験の出題範囲を確認し、自分の生活リズムで学習を続けられそうか、実技(技能試験)の練習環境を用意できそうかを見極めるところから始めるとよいでしょう。
学科試験は電気に関する基礎的な知識を問う内容で、技能試験は実際に工具を使って配線を組み立てる実技試験です。技能試験では、時間内に決められた課題を仕上げる作業スピードも問われるため、体力面が不安な場合は早い段階から工具に慣れておくと安心材料になります。就職先を探す段階では、求人票の記載だけでなく、実際の現場見学や職場体験の機会があるかどうかも確認しておくと、入職後のギャップを減らしやすくなります。
電気工事士としてのキャリア全般に不安がある場合は、こちらの記事もあわせて参考にしてください。
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シゴトのホント編集部
電気工事士に占める女性の割合は、公的データで確認できる範囲では今も数%程度にとどまっています。一方で、免状の旧姓使用が可能になった時期や、都道府県組合の女性部設立が相次いでいる時期を見ると、ここ数年で制度・環境の両面が動き始めているのも事実です。まずは第二種電気工事士の試験内容を確認したうえで、電気技術者試験センターが紹介している実例にも目を通し、自分に合うキャリアかどうかを判断してみてください。
参照ソース
- 電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について(経済産業省、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会 資料9、2017年3月) — 電気工事業界の女性比率(推定2%)、電気関係学科の女性比率(高校3%・大学8%)、第一種・第二種電気工事士の人材不足見通しの根拠
- 電気保安人材の現状分析と取組の方向性について(経済産業省、産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会 資料2、2021年11月) — 電気主任技術者・電気工事士の免状における旧姓使用可能化(2022年1月〜)、外部委託従事者の高齢化の根拠
- 建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査(国土交通省、平成27年12月) — 建設業全体の技能者・技術者に占める女性比率(比較対象データ)の根拠
- 電気工事士の資格概要(一般財団法人電気技術者試験センター) — 受験資格に実務経験が不要な点、第一種・第二種の工事範囲の違い、認定電気工事従事者の仕組みの根拠
- 活躍する女性電気技術者(一般財団法人電気技術者試験センター) — 女性の電気工事士・電気主任技術者の実例紹介が継続的に掲載されている事実の根拠
- 女性活躍を盛り上げる(全日本電気工事業工業組合連合会) — 都道府県組合における女性部設立の広がりの根拠
- パナソニック公認アンバサダーの女性電気工事士が語る電動工具EXENA(パナソニック公式 URAGAWA Knowledge) — 工具の軽量化・コンパクト化の実例の根拠

