電気主任技術者への転職やキャリアアップを考えるとき、電験三種と二種で年収がどれくらい変わるのか、ビル管理・工場・独立系といった勤務先の違いが待遇にどう影響するのか分からず、判断に迷う人は多いのではないでしょうか。本記事では電気主任技術者の年収を電験の種類や勤務先別に整理し、電気工事士との比較にも触れながら、キャリアを考えるための材料を紹介します。
電気主任技術者としてのキャリア全般は電験三種のキャリアガイドにまとめています。
電気主任技術者の年収を電験の種類から確認する|三種・二種の違い
電気主任技術者の年収を考えるうえで、まず影響してくるのが保有する電験(電気主任技術者免状)の種類です。三種・二種・一種はそれぞれ監督できる事業用電気工作物の範囲が異なり、二種・一種の方が三種よりも広い範囲の設備を扱えるとされています。監督できる設備の規模が大きくなるほど、その資格を必要とする施設側の選択肢は限られるため、需要と供給のバランスから待遇面で評価されやすくなる、という見方があります。ただし、これはあくまで傾向としての見方であり、個々の求人条件や施設の事情によって差が出る点は押さえておきたいところです。
また、二種・一種を取得するには三種よりも出題範囲が広く、二次試験(二種・一種)では記述式の技術力も問われるため、取得までに数年単位の学習期間を要することが一般的です。等級を上げるプロセス自体が実務経験の蓄積とも重なりやすく、結果として上位資格の保有者は現場経験も豊富になりやすいという相関が、待遇面での評価につながっているとも考えられます。
年収の裏付けとなる公的統計についても触れておく必要があります。厚生労働省が実施する賃金構造基本統計調査などの公的統計は、職種別の賃金傾向を示すものですが、電気主任技術者を電験の種類(三種・二種・一種)別に区分したデータまでは公開されていないと考えられます。実務上は転職サイトや求人媒体が公開する募集条件から年収の傾向を推測するケースが多いものの、これは公的統計とは性質の異なる情報です。求人媒体の掲載内容は施設の個別事情や募集時期の需要に左右されやすいため、複数の情報源を照らし合わせながら参考程度に捉える姿勢が実態に近いと言えます。
仮に転職エージェントや求人サイトが提示する年収レンジを参考にする場合も、掲載されている数値が募集時点の条件であって、入社後の昇給や手当を含めた実質的な年収と一致するとは限りません。提示条件の内訳(基本給・資格手当・残業代の扱いなど)を確認したうえで、複数の求人を比較する姿勢が欠かせません。
電気主任技術者の年収を電験の種類から見るときに押さえておきたい3点
- 二種・一種は三種より監督できる設備の範囲が広く、需要面で評価されやすい傾向があるという見方がある
- 公的統計には電験の種類別の年収データが存在せず、求人媒体の情報とは性質が異なる
- 求人媒体の募集条件は施設の個別事情に左右されやすく、複数の情報源を照らし合わせる姿勢が実態に近い
三種から二種へのステップアップが待遇に与える影響
三種を取得したあとに二種へステップアップする人は少なくありません。二種の保有者は三種の保有者に比べて数が限られると考えられており、大規模な工場やビルを含む幅広い施設で選任の候補になりやすいという特徴があります。この「選任できる施設の幅が広い」という性質が、二種保有者の待遇面での評価につながりやすいという見方につながっていると考えられます。もっとも、資格を取得しただけで即座に待遇が変わるわけではなく、実際にどの規模の施設を担当し、どれだけの実務経験を積んでいるかが評価の土台になる点は変わりません。
実務の現場では、三種を保有しながら二種の学習を並行して進める人も多く、日々の点検や保安業務で得た知識が二次試験の記述対策に活きるという声もあります。学習期間中に転職市場での評価がどう変化するかは施設ごとに異なるため、二種取得を目指す段階から、将来的にどのような施設で経験を積みたいかを意識しておくとキャリア設計がしやすくなるでしょう。
| 資格 | 監督範囲の傾向 | 主な勤務先の例 | 保有者数の傾向 |
|---|---|---|---|
| 電験三種(第三種電気主任技術者) | 中小規模の事業用電気工作物が中心 | ビル管理、中小規模の工場 | 電験のなかでは保有者数が多いとされる |
| 電験二種(第二種電気主任技術者) | 三種より広い範囲の事業用電気工作物 | 大規模工場、大型ビル、複数施設の受託 | 三種より保有者数が少ないとされる |
| 電験一種(第一種電気主任技術者) | 電圧の制限が原則ないとされる範囲 | 大規模発電所、大規模プラント | 電験のなかで最も保有者数が少ないとされる |
勤務先別に見る電気主任技術者の年収|ビル管理・工場・独立系
電気主任技術者の年収は、勤務先の業態によっても傾向が異なります。代表的な勤務先として、ビル管理会社に所属して商業ビルやオフィスビルの電気設備を担当するケース、工場に所属して生産設備を含む電気工作物を担当するケース、そして特定の企業に所属せず複数の施設から電気主任技術者の選任を受託する独立系のケースが挙げられます。それぞれ業務内容や責任範囲、稼働時間の性質が異なるため、待遇の組み立て方にも違いが出やすいと考えられます。
ビル管理の現場では、電気主任技術者としての業務に加えて、空調・給排水といった設備管理業務全般を兼務することが多く見られます。業務範囲が広がる分、待遇は電気主任技術者としての専門性だけでなく、設備管理全般の経験値も含めて評価される傾向があると考えられます。一方、工場では生産設備を止められない事情から、高圧受電設備など規模の大きい電気工作物を扱う場面が多く、稼働状況に応じた手当が加算される求人も見られます。生産活動と直結する設備を扱う責任の重さが、待遇面での評価につながっているという見方もできるでしょう。
独立系の働き方は、企業に雇用されるのではなく、電気事業法に基づく外部委託制度を活用して複数の施設から電気主任技術者としての選任を受託し、個人事業主や小規模な事業者として稼働する形態を指します。この制度は、常時電気主任技術者を選任するほどの規模ではない施設が、外部の技術者に保安管理を委託できる仕組みとして設けられているものです。独立系の場合は契約件数に応じて収入が変動するため、稼働状況によって年収の幅が大きくなりやすい一方、契約先を増やせれば会社員として働くよりも高い収入を得られる可能性もあるという見方があります。ただし収入が保証されているわけではなく、契約の獲得や継続には営業力や信頼関係の構築も必要になる点は理解しておく必要があります。
勤務先を選ぶ際には、基本給に加えて資格手当や当直手当、大規模施設特有の緊急対応手当など、給与の内訳がどのように構成されているかを確認することも欠かせません。同じ「電気主任技術者」という肩書きであっても、手当の有無や金額は企業ごとに差があるため、求人票の総支給額だけでなく手当の内訳まで目を通す姿勢が実態把握につながります。
勤務先を選ぶときに確認したい3点
- ビル管理は電気主任技術者の業務に加え、設備管理全般を兼務することが多い
- 工場は高圧設備の規模が大きく、稼働状況に応じた手当が加算される求人も見られる
- 独立系は外部委託制度を活用した働き方で、収入の変動が大きい反面、契約を増やせば収入を伸ばせる可能性もある
外部委託制度という選択肢について
外部委託制度は、電気事業法に基づいて一定規模以下の事業用電気工作物について、常時選任する電気主任技術者に代わり、外部の技術者や法人に保安管理を委託できる仕組みです。この制度を活用して独立系として複数の施設を受託する電気主任技術者も一定数存在すると考えられます。独立系として働く場合は、会社員のような固定給という発想ではなく、受託件数と業務量に応じて収入が積み上がっていく構造になるため、キャリアの初期段階からいきなり独立するよりも、企業に所属して実務経験を積んだうえで選択肢として検討する人が多いのではないかと考えられます。
また、外部委託制度を活用する電気主任技術者のなかには、個人事業主として活動する人だけでなく、保安管理業務を専門に請け負う法人に所属して複数の受託先を担当する働き方を選ぶ人もいます。法人に所属する形であれば、営業活動や契約管理を法人側が担うため、独立直後の負担を抑えながら経験を積みたい人にとって選択肢のひとつになり得ます。
電気主任技術者の年収を電気工事士と比較する
電気主任技術者と電気工事士は、いずれも電気に関わる国家資格ですが、担う役割は大きく異なります。電気工事士は配線工事など電気工作物の施工そのものを担う資格であるのに対し、電気主任技術者は工場やビルなど事業用電気工作物の保安を監督する立場の資格です。この役割の違いが、キャリアの位置づけや年収の考え方にも影響してくると考えられます。
多くの現場では、電気工事士として実務経験を積んだ人が、次のキャリアとして電気主任技術者(電験)を目指す流れが見られます。これは、施工の現場で電気工作物に触れてきた経験が、保安監督の業務で扱う設備の理解に役立つと考えられているためです。電気主任技術者は保安管理・監督という、施工よりも一段上流の立場に位置づけられることが多く、電気工事士としての実務経験を土台にキャリアアップを図る人にとって、電験は選択肢のひとつになり得ます。ただし、年収は資格の上下関係だけで単純に決まるものではなく、勤務先の規模や業務内容、独立系として稼働しているかどうかによっても差が生じる点には注意が必要です。
実際には、電気工事士としての実務経験が長いほど、電験取得後に任される設備の規模や難易度も上がりやすいという声も聞かれます。配線や設備の構造を体感的に理解していることが、保安監督の立場で設備の異常や劣化の兆候に気づく力につながると考えられているためです。こうした経験の積み重ねが、電気主任技術者としての評価や任される業務の幅に影響を与える一因になっているといえるでしょう。
両者の年収を数字で直接比較できる公的な一次統計は限られているため、本記事では「役割の違いがキャリアと待遇の考え方にどう影響するか」という観点から整理しました。電気工事士としての実務を経て電験にステップアップする道と、電気工事士としての専門性を深めていく道のどちらが自分に合っているかは、担いたい業務の性質や将来的に目指す立場によって変わってくるのではないでしょうか。
電気主任技術者が年収を上げていくための考え方
電気主任技術者として年収を伸ばしていくうえでは、いくつかの方向性が考えられます。ひとつは、三種から二種、さらに一種へと資格の等級を上げていくことです。等級が上がるほど監督できる設備の範囲が広がり、大規模な施設からの需要に応えられるようになるため、キャリアの選択肢が広がりやすくなると考えられます。もうひとつは、勤務先を変えながら扱う設備の規模や業種の幅を広げ、実務経験の厚みを増していく方向性です。
近年は、電気主任技術者を含む電気設備の保安人材について、業界内で高齢化や人材不足が課題として指摘されることがあります。こうした状況を踏まえると、実務経験を積んだ電気主任技術者に対する需要は今後も一定程度続くという見方もできますが、これは業界内での指摘に基づく傾向であり、確定的な将来予測として受け取るべきものではありません。資格の等級を上げることや実務経験を広げることに加えて、エネルギー管理士など関連資格を組み合わせて専門性を高めていく人もいます。
独立系として複数の施設から選任を受託する働き方も、年収を伸ばす方向性のひとつとして挙げられます。ただし独立系は収入が契約件数に依存するため、企業に所属して安定した給与を得る働き方と比べて、収入の変動リスクを引き受ける覚悟が必要になります。自分がどの程度のリスクを受け入れられるか、どのような業務内容にやりがいを感じるかを踏まえて、資格の等級アップ・勤務先の変更・独立という3つの方向性のなかから、自分に合った進み方を選ぶことが遠回りを防ぐ近道になると考えられます。
資格の等級アップや勤務先の変更に加えて、日頃のコミュニケーション能力や報告・連絡・相談の丁寧さといった基本的な業務姿勢も、長期的な評価に影響すると考えられます。電気主任技術者は設備トラブルの際に施設の関係者と迅速に連携する場面が多いため、技術力だけでなく調整力を磨いておくことも、結果的にキャリアの選択肢を広げることにつながるのではないでしょうか。
キャリアの方向性を決める前に確認したいこと
キャリアの方向性を決める前に、現在の勤務先でどこまで実務経験を積めるか、上位資格の取得に会社の支援制度があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。また独立系を検討する場合は、外部委託制度の仕組みや、受託先を確保するための人脈・営業の必要性についても事前に理解しておくことが欠かせません。焦って独立を選ぶよりも、企業に所属しながら実務経験と人脈を築いたうえで選択肢を検討する方が、結果的に安定したキャリア形成につながりやすいのではないでしょうか。
上位資格の取得を目指す場合は、勤務先に資格手当や合格お祝い金、受験費用の補助といった支援制度があるかどうかも確認しておくとよいでしょう。支援制度の有無は企業によって差があるため、転職を検討する際には給与水準だけでなく、こうした制度面も含めて比較検討することが後悔のないキャリア選択につながります。
まとめ|電気主任技術者の年収を踏まえたキャリアの選び方
電気主任技術者の年収は、保有する電験の種類(三種・二種・一種)、勤務先の業態(ビル管理・工場・独立系)、そして実務経験の積み方によって傾向が変わってきます。公的統計に電験の種類別・勤務先別の年収データが存在しない以上、求人媒体の情報だけに依存せず、複数の情報源を照らし合わせながら傾向を捉える姿勢が欠かせません。
電気工事士との比較では、担う役割の違いがキャリアの位置づけに影響していることが見えてきました。施工を担う電気工事士としての経験を土台に、保安監督の立場である電験へステップアップする道は一般的な流れのひとつですが、年収は資格の上下関係だけで決まるものではなく、勤務先や独立系としての稼働状況によっても差が生じます。資格の等級アップ、勤務先の選択、独立という3つの方向性を理解したうえで、自分に合ったキャリアの進め方を検討することが、電気主任技術者としての年収とキャリアの両方を見据えるための第一歩になると考えられます。
資格取得や勤務先選びに一足飛びの近道はなく、実務経験を積み重ねながら自分に合ったペースでキャリアを形成していく姿勢が、結果的に年収の向上にもつながっていくと考えられます。
参照ソース
- 一般財団法人電気技術者試験センター — 電験(電気主任技術者試験)の資格制度・試験結果に関する公式情報源
- 経済産業省 — 電気事業法に基づく電気主任技術者制度・外部委託制度を所管する行政機関の公式サイト
- 厚生労働省 — 賃金構造基本統計調査など、職種別の賃金傾向に関する公的統計を公表する行政機関の公式サイト


