「営業 年収」で検索する人の多くは、いま自分がもらっている額が相場と比べて高いのか低いのか、そして業界や会社を変えれば本当に上がるのかを知りたいはずです。求人サイトの「年収600万円可」のような表示は、固定給なのか歩合込みなのかが分からず、比べようがありません。
この記事では、国税庁と厚生労働省の統計を軸に、営業の年収の相場、業界と年代による差、固定給と歩合の構造、そして転職で年収を上げる考え方を整理します。
営業のキャリア全般の悩みは営業のキャリア完全ガイドにまとめています。
営業の年収の相場は「全体の平均」と「営業だけの統計」を分けて見る
結論から言うと、営業の年収は「固定給の水準は平均的だが、賞与と歩合で個人差が大きい」職種です。給与所得者全体の平均給与は478万円(2024年分・国税庁「民間給与実態統計調査」)で、営業の固定給部分はこの水準に近い会社が多い一方、成果連動分が上乗せされるため、同じ会社の同じ年次でも100万円以上の差がつくことがあります。相場を知るときは、全体平均と営業職だけの統計、さらに月給と年収を分けて読む必要があります。
まず全体の平均給与を押さえる
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2024年分)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円で、4年連続の増加です。男女別では男性587万円、女性333万円、雇用形態別では正社員545万円、正社員以外206万円でした。営業職の求人で「年収500万円」と書かれていたら、正社員の平均とほぼ同じ水準だと読めます。
もう1つの軸が厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。2024年調査では、一般労働者(短時間労働者を除く常用労働者)の賃金(6月分の所定内給与額)は男女計で33万400円、男性36万3,100円、女性27万5,300円でした。こちらは月給ベースで、賞与や歩合を含まない点に注意が必要です。
営業職だけの数字はどこで見られるか
「営業職業従事者」だけの賃金は、賃金構造基本統計調査の職種別の表(e-Statで公開)で確認できます。所定内給与額と年間賞与その他特別給与額が別の欄に載っているので、営業の年収を推計するときは「所定内給与額×12+年間賞与」で計算するのが基本です。厚労省の職業情報提供サイト(job tag)でも、営業系の職業ごとに年齢別の年収グラフが見られます。
営業の年収で見落としやすいのは、統計に載る「年間賞与その他特別給与額」に歩合や報奨金が含まれることです。歩合の比率が高い業界では、この欄の数字が同じ職種の中で大きくばらつきます。平均値だけで「営業の年収は◯◯万円」と決めつけると、自分の会社の給与体系と噛み合わないことがあります。
業界で営業の年収はどれだけ変わるか
営業の年収を最も大きく左右するのは、個人の能力より先に「どの業界の、どんな単価の商材を売るか」です。国税庁の2024年分調査では、業種別の平均給与は金融業・保険業が702万円、情報通信業が659万円で、全体平均の478万円を200万円前後上回っています。営業職だけを取り出した数字ではありませんが、業界の給与水準がそのまま営業の固定給の水準に反映されるため、業界選びは年収に直結します。
不動産・金融・メーカー・ITで給与の「作り」が違う
同じ営業でも、業界によって固定給と歩合の比率、そして年収の上限と下限がまったく違います。金融(証券・保険)と不動産は歩合や報奨金の比率が高く、成果を出せば20代でも全体平均を大きく超える一方、成果が出ない年は固定給だけになります。メーカーは固定給と年2回の賞与が中心で、年収のぶれは小さいものの、上限も業界の給与水準に収まります。IT(SaaSやシステム)は基本給に四半期ごとのインセンティブを組み合わせる会社が多く、両者の中間に位置します。
| 業界 | 給与の作り | 年収のぶれ | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 不動産(売買仲介・投資用) | 固定給+歩合。歩合比率が高い | 大きい(成果次第で上下) | 短期で成果を出して稼ぎたい |
| 金融(証券・保険・銀行) | 固定給+業績連動賞与。会社により歩合型も | 中〜大 | 数字と資格取得に抵抗がない |
| メーカー(法人向け) | 固定給+年2回賞与。歩合は少ない | 小さい(安定) | 長期の関係構築が得意 |
| IT・SaaS | 基本給+四半期インセンティブ | 中 | 仕組み化・データで動ける |
| 人材・広告 | 固定給+インセンティブ。若手の裁量が大きい | 中 | 行動量で勝負したい |
表の「向く人」は業界の給与構造から見た傾向で、個々の会社の制度は求人票と面接で必ず確かめる必要があります。
商材の単価と契約サイクルが歩合の額を決める
業界差の正体は、突き詰めると「1件の単価」と「契約までの期間」です。不動産の売買仲介や投資用物件は1件あたりの売上が数百万円から数千万円になるため、歩合率が数%でも1件で月給を超える報酬になります。一方で契約に至るまでの期間が長く、月によって成果がゼロになる不安定さがあります。メーカーの法人営業は、既存の取引先への継続受注が売上の中心で、1件の単価は業界によって差があるものの、個人の成果が売上に直結しにくいため固定給中心の設計になります。
ITやSaaSは、月額課金の商材が多く、受注時の一時金ではなく契約の継続で売上が積み上がる構造です。そのため、新規受注の件数と契約金額の両方をインセンティブの基準にする会社が多く、四半期ごとの目標達成率で支給額が決まります。自分が転職先を選ぶときは、業界名で判断する前に「1件の単価」「契約までの期間」「継続か一時金か」の3つを求人票から読み取ると、歩合の現実的な期待値が見えてきます。
業界を変えると固定給の「土台」が変わる
年収を上げたい営業がまず考えるべきなのは、頑張って歩合を増やすことより、固定給の土台を高い業界に移すことです。全体平均478万円の業界から、平均700万円前後の金融や、650万円前後の情報通信に移れば、同じ成果でも土台が違います。ただし、給与水準の高い業界は求められる専門知識(金融商品、システムの理解)も高く、未経験で入る場合は最初の1〜2年は年収が下がることもあります。営業経験を活かして業界を変える具体的な考え方は、営業から転職するなら|経験を活かせる異職種マップにまとめています。
年代別に見る営業の年収カーブ
営業の年収は、一般的な職種の年功カーブより「前倒し」で上がりやすく、その代わり50代の伸びが鈍い傾向があります。賃金構造基本統計調査(2024年・厚労省)では、一般労働者の賃金は男性が55〜59歳の44万4,100円、女性が45〜49歳の29万8,000円でピークを迎えます。営業は歩合や業績連動賞与の比率が高い分、20代後半から30代で成果が出れば全体のカーブより早く年収が上がり、管理職に進まない場合は40代以降で頭打ちになりやすい構造です。
20代:固定給の差より「どの業界に入ったか」で決まる
20代の営業の年収差は、個人の成果より入った業界と会社の規模で決まる部分が大きいです。賃金構造基本統計調査(2024年・厚労省)では、企業規模別の賃金は大企業36万4,500円、中企業32万3,100円、小企業29万9,300円で、規模だけで月6万5,000円前後の差があります。年収に直すと賞与を含めて100万円近い差になるため、20代のうちは「大手か中小か」「歩合型か固定型か」の2軸で自分の位置を確かめておくと、30代の転職判断がしやすくなります。
30代:成果が年収に直結し、差が最も開く時期
30代は営業の年収差が最も開く時期です。歩合型の会社では成果を出した人が全体平均を大きく超え、固定型の会社ではリーダーや主任への昇格で固定給が上がります。逆に、この時期に成果も昇格もない場合、40代で年収が伸びにくくなります。転職市場でも、30代の営業は「実績を数字で語れるか」が年収提示の前提になるため、受注額・達成率・新規開拓件数を年度ごとに記録しておくことが、そのまま年収交渉の材料になります。
40代以降:マネジメントか専門営業かで分かれる
40代以降の営業の年収は、営業部長や支店長といったマネジメントに進むか、大口顧客や専門商材を担当するプレイヤーとして残るかで分かれます。マネジメントは固定給が上がる代わりに歩合が減る会社が多く、プレイヤーは歩合が残る代わりに体力面と新規開拓の負荷が続きます。どちらが有利かは一概に言えませんが、40代で転職するなら、マネジメント経験か特定業界の深い顧客基盤のどちらかを持っていることが年収維持の条件になりやすいです。
固定給と歩合(インセンティブ)の構造を読み解く
営業の年収を比べるときに最も大切なのは、求人票の「年収◯◯万円」が固定給なのか、歩合込みなのか、その歩合は達成した人の何割がもらえているのかを分けて読むことです。給与の作りは大きく4つに分かれ、同じ「年収600万円」でも実際の手取りの見通しがまったく違います。
営業の給与体系は4パターン
1つ目は「完全固定給型」で、成果に関係なく月給と年2回の賞与が決まっている形です。公共向けやルート営業に多く、年収のぶれは最も小さい代わりに上限も決まっています。2つ目は「固定給+業績連動賞与型」で、賞与の一部が個人や部門の業績で変わります。メーカーやITの法人営業はこの形が多く、達成度によって賞与が数十万円単位で動きます。
3つ目は「固定給+歩合型」で、月給に加えて受注額や粗利の一定割合が毎月または四半期ごとに支払われます。不動産、保険、人材などに多く、固定給は全体平均より低めに設定されていることが珍しくありません。4つ目は「フルコミッション(完全歩合)型」で、固定給がなく、売れなければ収入がゼロに近づきます。雇用契約ではなく業務委託の形を取ることも多く、労働時間の保護や社会保険の扱いが会社員と違うため、契約形態を必ず確認する必要があります。
求人票の年収表示で注意したい3点
- 「年収600万円可」の「可」は上位の達成者の数字であることが多い。達成者の割合と平均の歩合額を面接で聞く
- 「月給30万円(固定残業代◯時間分を含む)」は、基本給と残業代を分けて計算する。歩合の計算基礎が基本給だけの会社もある
- 歩合の締めが「受注時」か「入金時」かで、キャンセルや未回収のリスクを誰が負うかが変わる
「モデル年収」と「平均年収」は別物
求人票のモデル年収は「入社3年目・月給30万円+歩合+賞与で年収650万円」のように書かれますが、これは会社が見せたい典型例で、社員の平均ではありません。確かめたいのは、同じ年次の社員の年収の中央値、歩合を受け取っている人の割合、そして直近3年の離職率です。面接の場で聞きにくい場合は、転職エージェントを通じて確認するか、オファー面談で「配属予定の部署の平均達成率」を質問すると、歩合の現実的な期待値が見えてきます。
固定残業代と歩合の「計算基礎」を見落とさない
営業の求人票で特に読み違えやすいのが、固定残業代(みなし残業代)と歩合の計算基礎です。「月給32万円」と書かれていても、その内訳が「基本給24万円+固定残業代8万円(40時間分)」であれば、賞与や歩合の計算基礎になるのは24万円のほうです。賞与が「基本給の2か月分」と決まっている会社では、固定残業代の比率が高いほど賞与の額が小さくなります。
歩合についても、「粗利の10%」なのか「売上の1%」なのか、目標未達の月は歩合がゼロになるのか、目標の一部達成でも段階的に支払われるのかで、年収の見通しは大きく変わります。このあたりは求人票に書かれていないことが多いので、内定後のオファー面談で労働条件通知書の記載を確認し、口頭の説明と食い違う点があれば書面で残しておくと安心です。
営業の年収を上げる転職の考え方
転職で営業の年収は「上がる人が多いが、全員ではない」というのが統計の答えです。厚生労働省の「雇用動向調査」(2024年)では、転職入職者のうち前職より賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%、変わらない人は28.4%でした。増えた人のうち「1割以上の増加」は29.4%で、10人に3人は年収が1割以上上がっています。営業は実績を数字で示せるため、この「増えた側」に入りやすい職種ですが、そのためには何を変える転職かを設計する必要があります。
年収を上げる転職の3つのルート
年収を上げる転職には、大きく3つのルートがあります。1つ目は同じ業界で商材の単価か会社の規模を上げるルートで、営業スキルはそのまま使え、固定給の土台が上がります。2つ目は業界を変えるルートで、全体平均の業界から金融や情報通信のように給与水準の高い業界へ移ると、同じ成果でも年収の上限が変わります。3つ目は営業経験を活かして異職種(カスタマーサクセス、営業企画、人材紹介など)に移るルートで、歩合は減りますが固定給と労働時間の安定を得られます。
最も再現性が高いのは1つ目のルートです。同じ業界であれば顧客理解と商談の型がそのまま評価され、入社直後から実績を出しやすく、歩合の立ち上がりも早くなります。逆に、同じ業界・同じ規模・同じ給与体系で会社だけを変える転職は、転職理由が待遇不満に見えやすく、年収提示も現職と同じ水準に落ち着きがちです。
AIに求人票の年収構造を読み解かせる
求人票の年収表示を1件ずつ読み解くのは手間がかかるので、生成AIに整理させると比較が速くなります。次のプロンプトは、求人票の文面を貼り付けて固定給・歩合・賞与の構造を表にし、面接で確かめるべき質問を出させるものです。会社名や個人情報は貼らず、給与に関する記述だけを貼ってください。
あなたは営業職の転職に詳しいキャリアアドバイザーです。
以下は営業職の求人票の給与に関する記述です。次の形式で整理してください。
1. 給与体系の分類(完全固定給 / 固定給+業績連動賞与 / 固定給+歩合 / フルコミッション)
2. 表に整理: 基本給 / 固定残業代(時間数)/ 歩合の計算方法 / 賞与の回数と基準 / 最低保証の有無
3. 記載から読み取れない項目を「面接で確認する質問」として3つ提案
4. 「年収◯◯万円」の表示が、平均・モデル・上位者のどれに当たると考えられるか、その根拠
【求人票の給与記述】
(ここに貼り付ける)
出力はそのまま信じず、面接で確かめる質問のリストとして使います。AIは記述にない数字を推測で埋めることがあるため、「記載なし」と出た項目こそ、応募先に直接聞く価値がある項目です。
年収交渉は「実績の数字」と「相場の数字」の2枚で臨む
転職時の年収交渉で効くのは、自分の実績を数字で示すことと、相場の統計を根拠にすることの2つです。実績は「年間受注額◯◯万円・目標達成率◯%・新規開拓◯件・担当顧客数◯社」のように、規模と達成度と行動量の3つを揃えて伝えると、業界が違う採用担当者にも再現性が伝わります。相場は、国税庁の業種別平均給与や賃金構造基本統計調査の職種別・年齢別の数字を引用すると、「希望年収が相場から外れていない」ことを客観的に示せます。
注意したいのは、現職の年収を伝えるときに歩合や残業代を含めた総額だけを言わないことです。採用側は固定給を基準に提示額を組み立てるため、「基本給◯万円・賞与◯か月・歩合の実績◯万円」と分けて伝えるほうが、固定給の土台を上げる交渉につながります。
年収を上げる転職で確認したい4点
- 固定給の土台(基本給)が現職より上がるか。歩合込みの数字で比べない
- 配属部署の平均達成率と、歩合を受け取っている人の割合
- 業界の給与水準(国税庁の業種別平均給与)が現職の業界より高いか
- 3年後に固定給が上がる昇格の仕組みがあるか(等級制度・評価基準)
まとめ
営業の年収は、固定給の水準は全体平均(478万円・2024年分・国税庁)に近く、賞与と歩合で個人差が大きい構造です。業界の給与水準(金融業・保険業702万円、情報通信業659万円)が固定給の土台を決め、年代では30代で差が最も開き、40代以降はマネジメントか専門営業かで分かれます。
年収を上げるには、歩合を増やす努力より先に、固定給の土台が高い業界・商材・会社の規模に移ることが再現性の高い方法です。転職で賃金が増えた人は40.5%(2024年・厚労省)で、増えた側に入るには、実績を数字で記録しておくこと、求人票の年収表示を固定給・歩合・賞与に分けて読むこと、そして面接で達成率と最低保証を確かめることが欠かせません。
営業の「きつさ」と年収の関係を先に整理したい人は、営業はきついと言われる理由もあわせて読んでみてください。
シゴトのホント編集部
営業の年収の話で一番もったいないのは、「年収600万円可」の求人を見て、固定給が現職より下がることに入社後に気づくケースです。歩合は環境で変わりますが、固定給は契約で決まります。 まず固定給の土台で比べ、歩合は上振れ分として見る順番を守れば、転職で年収が下がる確率はかなり減らせます。
参照ソース
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」 — 給与所得者の平均給与478万円、男女別・雇用形態別・業種別(金融業・保険業、情報通信業)の平均給与
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 — 一般労働者の賃金33万400円、男女別・年齢階級別のピーク、企業規模別の賃金
- e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」 — 職種(営業職業従事者を含む)別の所定内給与額と年間賞与その他特別給与額
- 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」 — 転職入職者の賃金変動(増加40.5%・減少29.4%・変わらない28.4%)


